かつて最先端の半導体技術を誇っていた日本。だが、今や半導体市場の勢力図は大きく塗り替えられ、日本企業は外国企業に大きく水をあけられている。AI(人工知能)の「頭脳」であり、経済安全保障の「重要物資」とされる半導体製造において、日本は再び輝きを取り戻すことができるのか? 本連載では『半導体ニッポン』(津田建二著/フォレスト出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。日本と世界の半導体産業の「今」を概観しながら、世界市場の今後を展望する。
今回は、日本の半導体市場の現状と各半導体企業の実力、政府の半導体産業支援について解説する。
日本の半導体産業の現状
■ 浮き沈みのある日本市場の現状
2023年1~12月における、日本の半導体産業で最も売上額の多いのは、ソニーセミコンダクタソリューションズの1兆5530億円、ルネサスエレクトロニクスの1兆4697億円、そしてキオクシア(旧東芝メモリ)の9997億円となっている。
前年比では、ソニーが18.7%増、ルネサスは2.2%減だったが、キオクシアは30%減と大きく凹んだ。ソニーはアップル向けのイメージセンサで大成功を収めており、3~4眼カメラがハイエンドからローエンドまで拡大し、カメラの数量とともにセンサの数量も増えたことで売り上げ増につながった。
ルネサスもそれほど大きく凹むことなくわずかな減少で済んだ。ルネサスは、もはやかつてのルネサスではなくなった。海外の売り上げが80%弱と増え、国内向けのICメーカーから大きく脱却したことで成長を遂げている。
買収したIDTのマネージャーをルネサスのマネージャーに引き上げ、シリコンバレーの最新情報を常に取り入れているだけではなく、これまでカバーの低かったインドやアジアの受注(デザインイン)を増やしてきている。日本人社員は過半数を割り、グローバル競争できる体制を整えている。現在(2024年8月時点)の柴田英利CEOに代わってから海外売り上げを増やすことでルネサスの成長につなげている。
キオクシアは、スマホとパソコンの市場に大きく左右されるNAND型フラッシュメモリを手掛けているが、ここも海外売上比率が上がってきている。ただし、スマホとパソコンの市場が飽和してきている世界的な影響を受け、大きく凹んだ。