護衛艦「もがみ」(海上自衛隊のサイトより)

 現在、日本では防衛装備移転三原則の下、民間企業による輸出契約に基づく防衛装備品の輸出、政府安全保障能力強化支援(OSA)による防衛装備品の無償での供与、国際法に違反する侵略や武力の行使または武力による威嚇を受けている国に対する防衛装備品の無償供与(軍事支援)などの様々な形での防衛装備品の海外移転が行われている。

 近い将来は、日本・英国・イタリアにより共同開発された戦闘機の輸出も行われる。

 ちなみに、「防衛装備」とは、武器および武器技術をいう。

「武器」とは、輸出貿易管理令(昭和24年政令第378号)別表第1の1の項に掲げるもののうち、軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるものをいう。

「武器技術」とは、武器の設計、製造又は使用に係る技術をいう。

(出典:防衛装備輸出三原則)

 このように日本の防衛装備品の海外移転が増加している。

 その背景には、ロシアのウクライナ侵攻を受けて注目された日本の継戦能力の問題と、その継戦能力を支える防衛産業の能力の維持の問題が、喫緊の課題として浮上したことがある。

 その解決策が、防衛力の抜本的強化のための防衛産業強化であり、防衛産業強化のための防衛装備品の海外移転の拡大であった。

 さて、オーストラリア政府(以下、豪州政府という)は100億豪ドル(約9700億円)規模の投資でフリゲート艦11隻を2030年までに導入する次期汎用フリゲートプログラムを推進している。

 2024年11月、豪州政府は、次期汎用フリゲートプログラムの候補艦艇として、ドイツの「MEKO A-200型」と日本の「もがみ型」護衛艦の能力向上型である令和6年度型護衛艦(4800トン型)を選定したと発表した。

 防衛省は2024年12月13日、豪州海軍が導入を計画する次期フリゲート艦を巡り、共同開発相手として指名を獲得するための官民合同推進委員会の初会合を開いた。

 ちなみに、日本の造船業界はかつて世界シェア50%を誇る造船大国だったが、現在のシェアは韓国・中国に次ぐ第3位である。

 受注は回復傾向にあるが、再編などで体力を回復した韓国・中国企業が受注攻勢に出て競争が激化したため、国内外の造船業界は再編の動きがさらに加速している(日経COMPASS 2024/12/04)。

 このようななか、商船部門の採算が悪化する造船業界内には政府主導による護衛艦や潜水艦の輸出待望論があるとの報道もある。

 また、日本には、2016年に豪州の新型潜水艦の共同開発を巡り、実現目前でフランスに受注を奪われた苦い経験がある。

 従って、造船業界をはじめ産業界では、今回はドイツとの受注競争に勝利することを願っていることであろう。

 ところで、本稿では、防衛装備品の海外移転の現状について述べてみたい。

 防衛装備品の海外移転に関連する大きな案件としては、日・英・伊が共同開発する次期戦闘機があるが、次期戦闘機については既に3本の記事を投稿しているので本稿では割愛し、前述した豪州政府が計画する新型艦艇の共同開発について述べてみたい。

 以下、初めに、防衛装備品の海外移転に関連する主要事象について述べ、次に豪州政府が計画する新型艦艇の共同開発について述べ、最後に、防衛装備移転三原則制定後の防衛装備品の海外移転の事例を述べる。