(英エコノミスト誌 2025年2月15日号)

中国の南寧市で開催された第21回中国ASEAN博覧会でのタイブース(2014年9月25日、写真:VCG/アフロ)

中国との深いつながりが保護主義的な対応の妨げになっている。

 タイの首都バンコクでベトナムやバングラデシュで作られたトレンディーな洋服を販売する店の店員が、売れ行きがすっかり鈍くなったと愚痴をこぼしている。

 インドネシアでは、東部の港に誘導する貨物船を増やす計画が検討されている。

 マレーシアでは、ある政治家が「重荷になる」新税が貧しい国民を痛めつけると手厳しく批判している。

 一見無関係なこれらの出来事の背景にあるのは、世界に押し寄せている中国製品の洪水だ。

 中国の隣人に当たる東南アジア諸国は、まさにその最前線に立たされている。

発端は成長エンジンを製造業に求める中国

 この現象の発端は中国にある。

 不動産市場の不振、元気をなくした消費者、そして大規模な景気刺激策に抵抗する国家のせいで、この国の需要は弱い。

 そこで新しい成長エンジンを探そうと、製造業にさらに力を入れている。

 作られるモノの大部分は輸出市場に持ち出されている。

 おかげで2024年の純輸出は、国内総生産(GDP)の成長幅のほぼ3分の1を占めた。1997年以来の高いシェアだ。

 中国の弱々しい経済成長と旺盛な生産の影響は、あらゆる外国に等しく及んでいるわけではない。

 西側諸国は中国製品の流入を妨げる壁を設けているため、製品は新興国に流れていく。

 中国から東南アジア諸国連合(ASEAN)への輸出額はこの3年間で24%増加した。逆にASEANから中国へ向かう輸出は伸びていない。

 その結果、ASEANに対する中国の貿易黒字は2倍に拡大している。

 中国からASEANへの輸出の増加は、企業が米中貿易摩擦に対応してきたことの反映でもある。

 多くの企業が中国国外で、とりわけ東南アジアで生産拠点を増やしてきたからだ。

 だが、話はそこで終わらない。東南アジアの低付加価値セクターが、中国からの輸入品との競争を余儀なくされている。

 この点を分かりやすく説明すべく、本誌エコノミストは今回、ASEAN主要5カ国の輸入に占める中国製品の割合が2022年1~9月期から2024年1~9月期にかけてどう変化したかを調べてみた。