
(立花 志音:在韓ライター)
韓国中部・大田市の小学校で2月10日、小1の女の子が校舎内で、女性教師に刃物で刺され死亡するという事件が起こった。
女性教師は犯行後に自身の首と腕を刺して自殺を図ったが、病院に搬送されて命に別条はなかった。警察の取り調べに対しては「自分がやった」ということを認め、「誰でもよかった」と供述しているとのことだ。
この女性教師はうつ病で昨年12月に6カ月の長期休職に入ったが、急に症状が好転したとの診断書を持参して、1月20日後に復職したと報道されている。復職後もヒステリーを起こしてパソコンの一部を破損したり、同僚に手をあげたりと問題行動を起こしていたという。
事件の詳細は捜査によって明らかになるだろう。
韓国でこのように痛ましい事件が起こると、ニュース番組がドラマのようになる。悲しいBGMが流れ、被害者遺族にはカメラとマイクが常に向けられ、遺族は感情をダイレクトに表現する。
ドラマの主人公のような扱いになる。そして国民の皆さん、あなたも同じ立場になったと思って一緒に悲しんでくださいね、と共感を求めるのである。
その共感が膨れ上がると、遺族に共感できない人は人として問題があるかのような雰囲気になってくる。
被害者の父親は事件の翌日、自ら「質問を受けます」とカメラの前に立ちインタビューに答えている。
二度とこのようなことが起きないように法改正をしてほしいとか、新聞記事に「大人たちのせいでごめんね、愛しているよ」とタイトルを付けてほしいとか、すべての人に10秒でいいから娘のために祈ってほしいなど、心のうちを話していた。
そして、娘のあこがれのアイドルを名指しし、忙しくても弔問に来てくれたらありがたいとも話していた。
それに呼応するように葬儀には、大田西部警察の署長、与野党の代表たちが続々と現れ、被害者の女の子が応援していた地元のプロサッカーチームの監督までも弔問に訪れた。 被害者の女の子のあこがれのアイドルは葬儀に花輪とメッセージを送っている。
セウォル号沈没事故の時、梨泰院雑踏事故の時は、国民全体が喪に服すかのような雰囲気だったが、それに似たものが感じられる。