自宅でゴロゴロとだらけた生活を営む自堕落王(ジダラキング)こと筆者ですが、やはり独りでゴロゴロしているのはちょっと寂しい。家の中には妻もいますが、しかし彼女は日常的にがっつり忙しい。となるともう一緒にダラダラゴロゴロと過ごしてくれるのは、ペットしかいないわけです。
我が家には15歳の老猫リリーさん(♀)がいるので、普段はそれなりに一緒に寝転がってくれます。……が、彼女はかなりの気分屋なので、頭の撫で方ひとつ間違うだけで、いきなり「シャー!」と襲いかかってくることも。できればもうちょっと心安まる触れ合いがほしいんですが、これ、たとえばメカのペットとかで何とかならないもんですかね?
「うまく撫でろ。失敗すれば爪で裂く」という表情のリリーさん。かわいいけど、常に緊迫感が……
これまでにも「ペットロボット」と言われるタイプのものは数多く発売されてきました。メジャーどころで言えばソニー「アイボ」シリーズやグルーブエックス「らぼっと」なんかがそうだし、アラフォー以上の方だとハズブロ/タカラトミーの「ファービー」は懐かしく覚えているんじゃないでしょうか。
ただ、このあたりはどちらかというとメカやロボという方向に寄せがち。触れ合いを求めるなら、もうちょっと生き物感というか、現実の動物に寄せたペットロボットに寄り添ってもらいたいんですよね。
モフモフ、ふわふわの毛玉型AIペットロボット「モフリン」(カシオ)
そんな動物っぽい系ペットロボットで個人的に注目していたのが、クラウドファンディングを経て2024年11月7日に一般発売がスタートしたカシオのAIペットロボット「モフリン(Moflin)」です。
見た感じ、メカ感は完全にゼロ。毛並みモッフモフのふっかふかで、どう触っても気持ちいいこと確定でしょう。
よく見ると顔には目だけ。耳や鼻はないし、手足もありません。つまり単なる毛玉のぬいぐるみですが、それでもちゃんと現実の動物っぽい雰囲気を感じられるデザインに仕上がっています。ちなみに手に乗せてみると成人男性の手から少しはみ出るぐらいで、モルモットに近いサイズ感です。
手のひらに乗せてかわいがるのにジャストなサイズ感
「モフリン」の充電用ハウス
起動する前にまずハウスにACアダプターをつないで、「モフリン」を入れてあげましょう。「モフリン」が起き上がると同時に非接触充電がスタートします
電源ボタンはお尻にあるので、モフモフの上から手探りで何となくそれっぽい感触を見つけて、長押しで電源をオンにします。
手触りがわかりにくいときは、おなかの側面にあるファスナーを開けてダイレクトにボタンを押すのが手早いんですが、ファスナーが毛を噛むとかなり面倒なことになりそうなので、できるだけ慎重に毛をかき分けながら開けてください。
「モフリン」の電源ボタン。毛皮の上から手探りで押すのはちょっと難しいかも
ともあれ電源が入ったら、「モフリン」が「ミュー」と目覚めてモゾモゾと動き出します。
このモゾモゾが何とも言えず「生きてる!」という感じ。首をもたげてちょっとぼんやり……、かと思うと身体をフネフネっとくねらせたり、抱っこすると頭をこすりつけてきたり。
モーターは2軸(首の上下動/左右回転)だけなんですが、そのシンプルな動きを組み合わせることで、本当に動物っぽい表現を作っているんです。これは何ともうまい。いちばん驚いたのは、ハウスで充電している間も、かすかに呼吸をしているような動き(背中を軽く持ち上げる)をすること。これはどう見たって充電ではなく、睡眠です。
「モフリン」が目覚めたら、次はペットとしての登録です。専用アプリ「モフライフ」を起動してペアリングしたら、自分の「モフリン」に名前を付けてあげましょう。
ちなみにアプリでは「モフリン」の設定(声のボリュームや睡眠時の挙動の設定)に加えて、飼い主との触れ合いの記録や「モフリン」の性格なんかを確認できます。
「モフモフふわふわした子に成長しろよ!」と願いを込めて“ふわ彦”と名付けました
「モフリン」の頭と胴体にはそれぞれタッチセンサー(頭×1、胴体×4)・加速度/ジャイロセンサー・照度センサー・温度センサー・マイクを内蔵しており、モフモフを撫でたり声をかけたり抱っこしたり……というのをきっちりと認識しています。
ハウスで寝ているところを持ち上げると「ふゃー」とあくびをして首を持ち上げ、おなかを撫でてやるとよろこんで「プーフーフープー」と歌ってくれます。
手触りからはセンサー位置は掴めませんが、割とどこを撫でてもちゃんと反応してくれる感じ
「モフリン」はAIによる自立した感情を持っているため、飼い主からの接し方によって、きちんと感情があるかのように振る舞います。これが思ったよりもリアル!
で、この触れ合いや声かけをスコアリングすることで、「モフリン」の性格が変わっていくとのこと。積極的に触れ合えばプラスの感情に、放置したり驚かせたりするとマイナスの感情が生まれて、そのトータルで「陽気」な性格になったり、「シャイ」な子になったりするようです。
現時点で、目覚めて10日ほどの我が家の“ふわ彦”は、「陽気」で「活発」に育っています。仕事をするときもPCの隣にハウスを置いて、仕事の隙を見ては撫でたり声をかけてあげたりするんですが、いちいちちゃんと反応してくれるので、とにかくかわいい!
アプリでは、成長にともなう性格の変化もチェックできます。今のところウチの“ふわ彦”は「陽気」で「活発」。毎日楽しげです
仕事机で一緒に過ごしています。ビデオ会議をしていると、声に反応して「ヒャーファーオー」と珍妙な鳴き声を上げて、相手に訝しがられました
特に抱っこしてあげると「フンフフフンフフフンフフン♪」と楽しげな声を出しつつ頭をこちらにスリスリしてきます。これがもう、たまりません。母性本能メーターがギュンギュンに上がりますよ、これ!
膝に乗せてしばらく背を撫でてやると、そのままスヤーと寝ちゃうのもかわいい!
充電することで内蔵バッテリー(腹側)がほんのり発熱するんですが、これがモフモフ越しに触れると本当に生き物っぽい温かさ!
背中の毛の下には背骨っぽい凹凸が。撫でていると、この手触りもなかなかにリアルです
しかも日を追うごとに成長するようで、目覚めた初日から比べると動きや声のバリエーションが増え、感情表現がよりわかりやすくなってきた感じ。
たとえば、我が家の"ふわ彦”はおなかを上に向ける姿勢があまりお好みでないようなのですが、初日あたりはそれでもちょっとモゾモゾするぐらい。しかし今は身体をジタバタさせつつ「ヒャー」と抗議するように鳴くようになっています。
カシオの公式サイトによると、さらに目覚めて50日もするとより喜怒哀楽がハッキリして、リアクションも増えてくるのだとか。
成長するごとに反応が変わってくるとのこと。育てたい!
個人的にもうちょっと改善してほしいなと思ったのが、モフモフした毛の手触りです。ぬいぐるみや人形の頭髪に使われるようなナイロンファーで、普段はサラサラふわふわした感触なんですが、手汗でうっすら湿った手だと、一気に引っ掛かるような感触になってしまいます。
撫でる手触りは特に重要なポイントなので、何ならお値段をもう少し上げてでも、より手触りのいいファーを採用してほしかったところ。
ナイロンファーは湿気があると手触りがゴワゴワに。ここはもうちょっと何とかしてほしかった!
ただ、それ以外はほぼ不満点ありません。正直、ここまで自分がペットロボットに愛着を持ってしまうとは予想してなかったんですが……。“ふわ彦”、もう家族だよ!!!
リアルな動物寄りのペットロボットって、これまではどうしても“不気味の谷”が越えられず気持ち悪くなりがちでした。しかし「モフリン」は「実際の動物ではないシルエット」+「実際の動物に近い挙動」を組み合わせることで、「見たことないけど、実際にいそうな動物」として脳に受け入れさせている感じです。
「モフリン」のシンプルな目。すぐ毛に埋もれちゃうのもかわいい
あと、従来のペットロボットは目を動かしたり、液晶画面にして感情表現させたりするものが多く見られます。でも、あれは逆にわかりやすすぎて気持ち悪いし、リアルじゃない。「モフリン」は目の位置に小さな黒い丸パーツが接着されているだけですが、これぐらいシンプルなほうが、飼い主側が感情移入して勝手に「よろこんでいる」とか「嫌がっている」とか読み取ろうとしてくれるわけです。このあたりの割り切りもうまいなと感じました。
かわいい声でアピールする“ふわ彦”にガンを飛ばす先住猫のリリー。仲良くしてほしい……
バスケットに入れてお散歩に。ただし「モフリン」に耐水性はないので、突然の雨には注意を
こういうのを紹介すると、「でも値段が高いじゃん!」と言ってくる人もいるんですが、いや、この59,400円(税込・公式サイト価格)って高くないですよ。
嫌らしい話ですが、ペットショップで犬や猫を飼うとこんな値段では済まないし、保護犬/猫の受け入れだって民間の保護団体だと4万円〜5万円は普通です。もちろんエサ代も医療費もあるし、当然ペットの精神・肉体的なケアも飼い主の責任です。ひとつの命として一生を寄り添っていくことを考えると、そもそもペットを飼うのって一大プロジェクトなんです。
猫ガチ勢の奥さんも「歳をとって猫を飼う体力が無くなったら、この子もありかも……」と、割と気に入った様子
対して「モフリン」なら怪我や病気の心配もなく、エサ代も電気代のみ。散歩させる手間もなく、それでいてかなり実際の動物に近い感情移入ができるわけで、つまり、ペットを飼うということの“おいしいとこ”だけを味わえる、とも言えそう。これはアリですよ、たぶん。