インテルはエンスージアスト向けのデスクトップPC用プロセッサー「インテルCore Ultra プロセッサー 200Sシリーズ」を10月25日に販売開始しました。
デスクトップPC向けプロセッサーとしては最速の次世代Performance-Cores(Pコア、高性能コア)を最大8個、次世代Efficient-Cores(Eコア、省電力コア)を最大16個搭載し、前世代よりマルチスレッド性能で最大14%、シングルスレッド性能で最大6%の性能向上を実現。さらに、デバイスパッケージでの消費電力を最大58%削減、ゲーム時にはシステム全体の消費電力を最大165W削減すると謳われています。
エンスージアスト向けのデスクトップPC用プロセッサーとしては初めて、AI処理に利用する「NPU」を搭載しているのも大きな売り。本プロセッサーに注目して、どの製品を購入するか悩んでいる方も多いことでしょう。
今回は「インテル Core Ultra 9 プロセッサー 285K」(実売価格110,000円前後)と、「インテル Core Ultra 5 プロセッサー 245K」(実売価格53,000円前後)の性能をベンチマークで比較しました。ハイエンドとエントリーでどのぐらい性能が異なるのかベンチマークでチェックしてみましょう。
検証した「Core Ultra 9 285K」と「Core Ultra 5 245K」の主なスペックは下記のとおりです。
大きく異なるのはコア数。「Core Ultra 9 285K」は「Core Ultra 5 245K」に対して、Pコアが2つ多い8コア、Eコアが2倍の16コアを搭載しています。また、ベースパワーは125Wと同じですが、最大ターボパワーは「Core Ultra 5 245K」が159Wなのに対して、「Core Ultra 9 285K」が250Wとなっています。
同時に実行できる命令数が多く、そしてより多い電力により高いクロック周波数で動作させられる「Core Ultra 9 285K」は「Core Ultra 5 245K」よりも高いパフォーマンスを発揮できるわけです。
なお、どちらも内蔵GPUは最大8TOPSの「Intel Graphics」、NPUは最大13TOPSの「Intel AI Boost」となっているので、両者に大きな違いはありません。NPUは「Copilot+ PC」が搭載するプロセッサーには性能が及びませんが、NPUを搭載していることにより、現在Copilot+ PCにのみ提供されているAI機能が「インテルCore Ultra プロセッサー 200Sシリーズ」搭載機にも提供されることが期待できます。
ベンチマークを実施するにあたっては、下記のパーツを用意しました。CPUを除いた、マザーボード、グラフィックボード、メモリー(2枚ぶん)、ストレージ、水冷CPUクーラー、電源、PCケースの合計価格は実売42万円前後です。
つまり、「Core Ultra 9 285K」では総額で53万円前後、「Core Ultra 5 245K」では総額で47.3万円前後となるわけです。OSの「Windows 11 Home 日本語版」の実売価格が15,000円前後。「Core Ultra 5 245K」搭載機なら50万円の大台はなんとか切りますね。
とはいえ、検証に使用したパーツは上位モデル。特に、マザーボード、水冷CPUクーラー、電源、PCケースについては同じメーカーでももっと安価な製品が存在します。上位モデルのパーツにはそれだけの機能性が実装されており、デザインも魅力的ですが、もっと安価にシステムを組むことは可能です。
なお、今回ベンチマークを実施するにあたり、「Core Ultra 9 285K」と「Core Ultra 5 245K」の推奨設定を利用していますが、オーバークロックは設定していません。
CPU「インテル Core Ultra 9 プロセッサー 285K」実売価格110,000円前後
CPU「インテル Core Ultra 5 プロセッサー 245K」実売価格53,000円前後
マザーボード「ROG STRIX Z890-F GAMING WIFI」実売価格70,000円前後
グラフィックボード「ROG-STRIX-RTX4070-O12G-GAMING」実売価格148,000円前後
メモリー「CP16G60C48U5」実売価格8,000円前後(1枚あたり)
ストレージ「T500 CT1000T500SSD8JP」実売価格12,000円前後
水冷CPUクーラー「ROG RYUJIN III 360 ARGB」実売価格48,000円前後
電源「ROG-THOR-1000P2-GAMING」実売価格66,000円前後
PCケース「ROG Hyperion GR701」実売価格60,000円前後
今回使ったパーツはほぼ上位モデル。RGB LEDがふんだんに用いられており、美しく光ります。配信などに使えば非常に映えますね
さっそくベンチマーク結果を見ていきましょう。まず、CPUベンチマークについては、「Core Ultra 9 285K」は「Core Ultra 5 245K」に対して、CPU(Multi Core)で170%相当、CPU(Single Core)で112%相当のスコアを記録しました。「Core Ultra 9 285K」は約2倍弱のCPUコアを搭載しているだけに、マルチスレッド性能には大きな差がありますね。またベースパワーの差もシングルスレッド性能として表れています。
CINEBENCH R23
いっぽう、3Dゲームベンチマークでは「Core Ultra 9 285K」は「Core Ultra 5 245K」に対して、「ファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー ベンチマーク Ver. 1.1」で111%相当、「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」で115%相当、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」で104%相当となりました。3Dゲームはグラフィックボードの性能に大きく依存します。それでも、「黄金のレガシー」と「暁月のフィナーレ」では差が大きくなっています。
「ファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー ベンチマーク Ver. 1.1」(CPUとGPUの使用率は「Core Ultra 5 245K」で計測)
「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」(CPUとGPUの使用率は「Core Ultra 5 245K」で計測)
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」(CPUとGPUの使用率は「Core Ultra 5 245K」で計測)
クリエイティブ系アプリでも処理速度を計測してみましたが、「Adobe Photoshop Lightroom Classicで100枚のRAW画像を現像」、「Adobe Premiere Pro 2025で4K動画を書き出し(H.264)」のどちらでもその差はわずかです。
「HWiNFO 64 Pro」で取得したCPUとGPUの使用率を見てみると、CPUの使用率はLightroom Classicで最大61.9%、平均55.22%(アイドル時除く)、Premiere Proで最大27.8%、平均21.02%(アイドル時除く)となっています。CPUがフル稼働しているわけではないわけですね。
また、「Premiere Pro」ではグラフィックボードによるハードウェアアクセラレーターが強く効いていることから、4K動画の書き出しではほとんど処理時間が変わらなかったわけです。
「Adobe Photoshop Lightroom Classic」で100枚のRAW画像を現像(CPUとGPUの使用率は「Core Ultra 5 245K」で計測)
「Adobe Premiere Pro 2025」で4K動画を書き出し(H.264)(CPUとGPUの使用率は「Core Ultra 5 245K」で計測)
「Core Ultra 9 285K」と「Core Ultra 5 245K」は異なるユーザーのニーズに応えるために設計されたプロセッサーです。「Core Ultra 9 285K」は「Core Ultra 5 245K」に対して、CPUベンチマークではCPU(Multi Core)で170%相当のスコアを記録。また、3Dゲームベンチマーク「ファイナルファンタジーXIV」の黄金のレガシーと暁月のフィナーレでは111〜115%相当のスコアを記録しています。3Dゲームでもこれだけのスコア差があれば、フレームレートにも大きな影響があります。
いっぽう、今回、「Adobe Photoshop Lightroom Classicで100枚のRAW画像を現像」、「Adobe Premiere Pro 2025で4K動画を書き出し(H.264)」では、特に後者でわずかな差となりました。利用するアプリ、作業内容によって、プロセッサーの違いを体感できるか変わってくるわけです。
前述のとおり、両プロセッサーの価格は「Core Ultra 9 285K」が11万円前後、「Core Ultra 5 245K」が53,000円前後と大きな差があります。「Core Ultra 9 285K」は高負荷な作業を行うプロフェッショナルユーザーに、「Core Ultra 5 245K」はコストパフォーマンスを重視する一般的なユーザーにおすすめのプロセッサーと言えるでしょう。