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価格.com 家電トレンド研究所

人気の空気清浄機は半数以上が“加湿機能なし”、今シンプルモデルが選ばれる理由とは

長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。

第50回は、空気が乾燥する冬場を中心に需要が高まる空気清浄機の最新トレンドについて解説しよう。

毎年11〜1月にかけてピークを迎える空気清浄機。最近では加湿機能なしのシンプルモデルが復権

【図1】価格.com「空気清浄機」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)

【図1】価格.com「空気清浄機」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)

空気清浄機の需要が最も上がるのは、いつか? それは、まさに今、冬の初めくらいの時期にピークを迎える。図1は、価格.com「空気清浄機」カテゴリーにおける過去3年間の閲覧者数推移を示したものだが、多少の違いはあれ、いずれの年も11〜1月くらいの時期に大きなピークを迎えている。特に、寒さが厳しくなり、空気が乾燥してくる11〜12月くらいが空気清浄機の需要ピークと言えそうだ。

空気清浄機は、元々は春先の花粉症対策として広く普及してきた歴史があるので、20年前くらいまでは、年明け1月くらいから3月初旬にかけてが需要のピークだった。しかし、空気清浄機に加湿機能がプラスされた加湿空気清浄機が一般化し、さらにウイルス対策にも有効とされるイオン放出機能が広く搭載されるようになると、乾燥対策や、冬の健康対策といった意味合いから、空気清浄機の需要は初冬に前倒しされるようになってきた。気温が下がり、空気が乾燥してくる初冬に購入して、春の花粉症対策まで半年くらい使い続ける人が増えているのだ。

【図2】価格.com「空気清浄機」カテゴリーの閲覧者数推移(過去半年)

【図2】価格.com「空気清浄機」カテゴリーの閲覧者数推移(過去半年)

今年の場合は、例年以上の高温で11月に入ってからもなかなか気温が下がりづらい状況だったため、さすがに例年よりは出遅れた感があるが、それでも10月頭くらいから空気清浄機の需要は徐々に上がってきている。

ただし、ここ3年の閲覧者数の変化を見ると、年々空気清浄機自体の需要が右肩下がりで下がっていることも見て取れる。2021〜2022年のピークを100%として考えると、2022〜2023年シーズンは約75%、2023〜2024年シーズンは約60%という具合にピーク需要も下がっており、どうも今年はおそらくそれを下回りそうな感じになっている。

この需要減退の理由としては、2つ考えられる。ひとつは、2020年から始まったコロナ禍で空気清浄機の需要が特需的に上がったため、その反動が2021年以降顕著になっていること。もうひとつは、空気清浄機としての技術的進化があまり見られないことだ。正直、空気清浄機の基本性能は、ここ10年ほどほとんど変わっていない。旧機種でも新機種でもさほど性能が変わらないため、買い替えの理由になりにくいのだ。

こうした状況を打開すべく、各メーカーでも、デザイン性や省スペース性にこだわった製品を発売しているが、なかでも最近顕著な動きとして起こっているのは、一時期はそれが標準となっていた「加湿空気清浄機」からの脱却だ。前述のとおり、加湿空気清浄機は、花粉やハウスダストなどを集塵して空気を清浄化するファン型の空気清浄機に、気化式の加湿機能をプラスした製品。1台で、冬場の空気清浄と保湿をまかなえるのがメリットで、一時期は圧倒的な人気を得たが、最近では、加湿機能をプラスしたことによるデメリットのほうにも広く着目されるようになったそれは、お手入れの煩雑さだ

加湿空気清浄機で採用される気化式の加湿機能は、水分の中の雑菌繁殖などを抑えるために、こまめな清掃が必要とされるが、空気清浄機にプラスされている大型の気化式フィルターや吸水トレーはややお手入れが面倒なため、一般的な気化式加湿器に比べても、お手入れの頻度は下がりがちと思われる。また、空気清浄機に搭載されている加湿機能は、それ自体の強度を制御できないことが多いので、加湿が必要な住宅の場合、別途専用の加湿器を用意するほうが効率がいいこともある。そうなると、空気清浄機には加湿機能自体が不要ということにもつながってくる。

【図3】価格.com「空気清浄機」カテゴリーにおける売れ筋製品のタイプ別割合(2024年10月時点)

【図3】価格.com「空気清浄機」カテゴリーにおける売れ筋製品のタイプ別割合(2024年10月時点)

そもそも加湿機能のない空気清浄機は、非常にシンプルな構造なので、ボディもコンパクト化しやすく、デザインの自由度も増す。価格も下げやすい。そうしたメリット、デメリットをさまざま勘案する中で、近年増えているのが、加湿機能を持たないシンプルな空気清浄機だ。図3は、価格.com「空気清浄機」カテゴリーにおける売れ筋製品のタイプ別の割合を示したものだが、これを見ると、一時期完全に主流となっていた加湿空気清浄機の割合は35.43%まで下がっており、半数以上はシンプルな空気清浄機という状況で、ここにも、加湿空気清浄機からの脱却の流れが見て取れる。

人気メーカーは、シャープ、ダイキン。かつて3強のパナソニックはシェア落とす

【図4】価格.com「空気清浄機」カテゴリーにおける主要メーカー5社の閲覧者数推移(過去3年)

【図4】価格.com「空気清浄機」カテゴリーにおける主要メーカー5社の閲覧者数推移(過去3年)

図4は、過去3年における、価格.com「空気清浄機」カテゴリーにおける主要メーカー5社の閲覧者数推移を示したものだ。これを見ると、圧倒的に強いのはシャープで、過去3年間、首位の座を奪われることなく推移していることがわかる。次いで人気なのはダイキンで、こちらも3年間ずっと単独2位の座を守ってきていることが見て取れる。変化が見られるのは、かつては上述のシャープ、ダイキンとともに3強と言われてきた3位のパナソニックだ。3年前に比べても勢いが衰えてきており、4位の新興メーカー、Airdogに追いつかれる場面も出てきている。

パナソニックのシェアが下がってきている理由はいくつかある。ひとつは、シャープ、ダイキンに比べて、新モデルの大幅な改修が見られないこと。上記2社は、上述したような加湿機能を省いたコンパクトモデルを展開して、変化をつけてきているが、パナソニックだけはその傾向が見られない。また、同社は最近、ジャンルの近い製品として空間除菌脱臭機「ジアイーノ」の展開を強めており、空気清浄機のほうにさほど注力しなくなったと見る向きもある。販売価格もほかのメーカーに比べて高めで推移しているため、どうしても人気が落ちてきてしまっている状況と言える。

これに対して最近堅調なのが、Airdogだ。「世界最強レベル」をうたう同社の空気清浄機は、空気清浄機の基本性能にあくまで注力し、一気に空気を吸い込める強力なファンと、電気集塵方式の集塵フィルターによって、空気中のさまざまな物質を吸い込んで濾過する。もちろん、加湿機能などは非搭載で、ある意味、かなりシンプルな構造の製品を展開している。販売価格はかなり高めだが、コロナ禍でのきれいな空気に対する関心の高まりと、テレビCMの効果などもあって、昨今メキメキとその存在感を上げている感がある。

【図5】価格.com「空気清浄機」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯分布(2024年10月時点)

【図5】価格.com「空気清浄機」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯分布(2024年10月時点)

ちなみに、価格.comの「空気清浄機」カテゴリーにおける売れ筋製品の価格帯分布(図5)を見ると、意外にも、価格帯はかなり幅広く分散していることがわかる。最も多いのは「25,001〜35,000円」で23%ほどになるが、ここはまさにメインストリームで、型落ちになった中級以上のレベルの加湿空気清浄機などがこのゾーンに属する。その下の「15,001〜25,000円」も16%ほどあるが、こちらは型落ちのエントリーモデルが属する価格帯と言えそうだ。

このように、35,000円以下の製品が全体の半数程度を占める中で、75,000円を超えるような製品も15%以上を占めている。この高価格帯に属するのが、前出のAirdogを中心とした高額製品だ。Airdogの空気清浄機は、主力モデルの「Airdog X3D」で約11万円、その上の「Airdog X5D」で約15万円と高額製品であり、ほぼ1社で販売価格帯を引き上げている印象だ。

こうした状況を見ると、メインストリームとまでは言えないものの、基本的な空気清浄機能の強さに対して価値を感じる消費者が徐々に増えてきている印象を受ける。加湿機能、イオン放出機能と、どちらかと言えば、付加機能を増加させることでその価値を維持してきた国内の空気清浄機市場だが、ここへ来て、基本の空気清浄機能が重視されるという一種の揺り戻し的な動きが起こっているのは間違いないだろう。

※当記事のデータは、「価格.com DataCompass」を使って作成しています。
価格.com DataCompass」とは、価格.comのビッグデータを基に購入検討ユーザーの動向を分析できる法人向けのマーケティングサービスです

コレ買っときゃ間違いない! 価格.com編集長が今注目する空気清浄機4選

※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2024年11月20日 時点のものです。

シャープ「FU-R50」

FU-R50

価格.com最安価格:19,800円
発売日:2022年9月
ユーザー満足度・評価:★4.48(18人)
最大適用床面積:23畳

シャープの空気清浄機ラインアップのボトムを担う2022年発売のエントリーモデル。集塵、脱臭、プレフィルターの3層構造で、空気中のホコリや花粉などをしっかりキャッチ。「プラズマクラスター7000」搭載で、お部屋の空気の消臭などにもしっかり対応する。加湿機能はないが、その分コンパクトで価格も安く、2万円以下で買える製品としてロングセラーを続けている。

シャープ「KI-RS50」

KI-RS50

価格.com最安価格:28,460円
発売日:2022年9月
ユーザー満足度・評価:★4.00(6人)
最大適用床面積:23畳

上記「FU-R50」と同時期に発売された、シャープの加湿空気清浄機のコンパクトモデル。加湿機能を搭載しつつも、奥行230mmの薄型設計。しかも、二重の加湿フィルターを採用することにより、最大600mL/hという上級機並みの加湿量を実現している。加湿空気清浄時の運転音も43dBに抑えられた。「プラズマクラスター25000」搭載で、消臭やウイルス対策にも期待できる。昨年モデルの「KI-SS50」もあわせて検討されたい。

ダイキン「MCK505A-W」

MCK505A-W

価格.com最安価格:32,999円
発売日:2024年9月
ユーザー満足度・評価:★--(0人)
最大適用床面積:22畳

ダイキンが発売するスリムタイプの加湿空気清浄機の最新モデル。ダイキン独自の「ストリーマ」を搭載し、内蔵する静電HEPAフィルターなどと組み合わせて、強力に空気を清浄化。集塵フィルターに捕集した菌を「ストリーマ」で除菌できるので、目詰まりが起こりづらく、長い期間、空気清浄性能が落ちないのが特徴だ。加湿機能でも「ストリーマ」が水自体を除菌するので清潔さを保てるのもうれしいところ。旧モデルとの価格差は少ないので、最新モデルの購入がよさそうだ。

ダイキン「MC555A-W」

MC555A-W

価格.com最安価格:45,580円
発売日:2024年9月
ユーザー満足度・評価:★4.00(1人)
最大適用床面積:25畳

ダイキンの「加湿機能なし」コンパクトモデルの最新版。圧迫感の少ない高さ50cmのコンパクトボディだが、最大適用面積は25畳のハイパワーを誇る。静電力の落ちにくい「TAFUフィルター」を採用しており、ダイキン独自の「ストリーマ」と組み合わせて、フィルターで集塵した物質をしっかり除菌・分解する。「ストリーマ」による内部除菌機能も搭載し、いつでも清潔な空気を放出する。価格はやや高めだが、コンパクトで強力な空気清浄機が欲しいという人には、最適な製品と言える。

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鎌田 剛(編集部)
Writer
鎌田 剛(編集部)
1996年にソフトバンクにて複数のパソコン情報誌の編集・立ち上げに携わった後、2002年にカカクコム入社。2006年「価格.comマガジン」を創刊。以降、編集長としてメディア運営に携わる。日経MJにてコラム連載、ラジオ出演なども幅広く行う。家電製品アドバイザー資格保持者。
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北島圭介(編集部)
Editor
北島圭介(編集部)
出版社で10数年、編集者として経験を積み、2022年にカカクコム入社。家電製品から文房具など、さまざまな商品を検証するモノ雑誌の編集経験を生かし、価格.comマガジンで生活家電を中心に気になる製品をレビューしている。
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