コードレススティック掃除機は、電源ケーブルを気にせずに動かせる手軽さが魅力ですが、流行のサイクロン式だと、本体に溜まったゴミをひんぱんに捨てなくてはならないのは面倒と感じる人もいるのではないでしょうか。
そう、いわずもがな、紙パック式ならゴミをひんぱんに捨てる必要はないし、ゴミ捨て時のホコリの舞い上がりも気にしなくていい。加えて、サイクロン式の新モデルのように充電スタンドに自動ゴミ収集機能を付ける必要もないので、充電スタンドがシンプルで設置しやすいのもうれしいポイントです。
そんな魅力が詰まった一台が、日立グローバルライフソリューションズ(以降、日立)の「かるパックスティック PKV-BK3L」。価格.comの「掃除機」カテゴリーでもランキング上位の人気アイテムで、「価格.com プロダクトアワード 2024」の「生活家電部門」掃除機カテゴリーで見事金賞を受賞しました。その実力を細かく探るため、使用レビューを実施!
日立「かるパックスティック PKV-BK3L」【SPEC】●本体サイズ:スティック時/230(幅)×205(奥行)×1082(高さ)mm●標準重量(本体重量):1.1kg(0.8kg)●集じん容積:0.4L
日立から販売されているコードレススティック掃除機は、まず「紙パック式」か「サイクロン式」に分かれます。
紙パック式では、今回レビューする「PKV-BK3L」と「PKV-BK50L」の2モデルがラインアップ。後者の「PKV-BK50L」は、清掃パワーと豊富なアタッチメントツールが特徴で、標準重量は1.4kg、紙パックのゴミ捨て頻度の目安は4か月に1回です。いっぽう「PKV-BK3L」は1.1kgと軽量で、ゴミ捨て頻度の目安は2か月に1度。
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ちなみに、サイクロン式は4モデルがラインアップされています。とにかくパワフルで多彩なアタッチメントツールを付属したのが「パワーブーストサイクロン PV-BH900SM」。標準重量は1.6kgです。パワーがありながら1.4kgと軽量で、アタッチメントも多彩なのが「パワかるスティック PV-BL50M」。これら2モデルは、スマホを使って掃除の軌跡をチェックできる「ARおそうじ」と、前後左右からゴミを吸う「4方向吸引機構」にも対応しています。
さらに、1.1kgの軽量なタイプが「ラクかるスティック PV-BL3M」。より軽さを重視し、標準重量0.97kgを実現したのが「すごかるスティック PV-BS1M」です。
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全6モデルに共通なのが、緑のLEDライトを使って床のゴミを浮かび上がらせる「ごみくっきりライト」と、ブラシの先端をループ状にして髪の毛などをからまりにくくした「からまんブラシ」を搭載していること。ただ、ライトの数が異なります。紙パック式の「PKV-BK3L」が5灯で「PKV-BK50L」は7灯。サイクロン式の軽量タイプ「PV-BL3M」と「PV-BS1M」も同じものを5灯備えています。いっぽう、パワータイプの「PV-BH900SM」と「PV-BL50M」は、前と左右の広範囲を照らしてよりゴミを見えやすくする「3方向ごみくっきりライト」を搭載。
緑のLEDライトでゴミがくっきり浮かび上がります。写真は「PV-BH900SM」の「3方向ごみくっきりライト」
ARアプリと連携し、掃除の軌跡が視認できる機能「ARおそうじ」。アプリには床がそのまま映し出され、掃除機のヘッドが通った場所がリアルタイムに色付けされていくので、人気アクションシューティングゲーム「スプラトゥーン」で遊んでいるかのように掃除できます
前置きが長くなりましたが、今回レビューした「PKV-BK3L」は、軽さと吸い込みパワーのバランスがよいタイプという位置づけです。
「PKV-BK3L」のLEDライトは、前方のゴミを浮かび上がらせます
シンプルなボタン配置。直感的に迷わず使えます
延長パイプの裏側。ちょっとボコボコしています。部分的に薄肉化することで、軽さと強度を両立させています
運転時間は、「強」が8分、「自動」が8〜30分、「標準」が30分で、充電時間は約2時間。「強」モードはよく吸い込みますが、運転時間が短く、音が大きいので、日常的な汚れなら「自動」を使いましょう。床面に合わせた吸引力で掃除してくれるので、バッテリー消費とのバランスがいいです。
今回のレビューでは、ゴミに見立てた重曹(微細なゴミ)と猫砂(大きめのゴミ)をフローリングにまいて実施。フローリングのゴミはワンストロークの片道でもよく取れて、往復するとすっかりキレイに。壁際もよく吸い込みました。猫砂の場合は、1往復だと若干残留。また、持ち上げたときに吸い込みきれなかった猫砂がパラリと落ちてくることもありましたが、数回往復したらキレイになりました。
ゆっくりと動かしながら掃除。重曹はよく吸い込みました
猫砂の場合は1往復だとちょっと残ってしまいました。何度か掃除するとキレイになりました
次に、ラグの上を掃除してみました。こちらも微細なゴミはよく吸い込みますが、1往復だと猫砂はわずかに残ってしまいました。でも何度か掃除をするとキレイになります。
2cm程度の厚さのラグで実施。ヘッドの動きは押すときはスムーズですが、戻るときにちょっと引っかかりを感じました。1往復だと、猫砂が少しだけ残留
操作ボタンは、シンプルで文字も大きいので、誰でも直感的に操作できると思います。また、スタンドにアタッチメントをセットできるので、置き場所にも迷いません。
自走式のヘッドは軽いかけ心地です。ヘッドはコンパクト、かつ左右によく曲がるので家具の脚がたくさんあるテーブル下などもすき間を縫って掃除ができます。壁際や家具の脚の際にあるゴミも、しっかり吸い込む印象を受けました。
ゲーム機「Nintendo Switch」のケースと大きさ比べ。ヘッドがこのくらいコンパクトだと、狭い場所の掃除がはかどります
ハンドルと操作ボタンが隣接しており、片手で操作しやすかったです
ヘッドがよく動くので、狭い場所も動かしやすい!
ヘッドの回転ブラシ。前部に寄せて配置されているため、壁際のゴミも得意! ちなみに、ヘッドの押し引きに合わせて後部のフラップが同期して開閉する「シンクロフラップ」が搭載されており、ヘッドが床に貼りつきにくいために取り回しやすく、引くときもゴミを吸い込んでくれます
下の動画は壁際を掃除したシーン。フローリングの溝や壁際のゴミもよく吸い込んでくれました。
回転ブラシは、ループ形状のものがヘッド内部にみっしりと搭載されています。ループ形状であるがゆえに、髪の毛はからんだとしても少し浮いた状態に。これにより、毛はほどきやすく、ブラシには溝がついているため、ハサミを沿わせて切るのも簡単でした。総評としては、「髪の毛はからみはするが、手入れしやすいブラシ」といったところでしょうか。
また、回転ブラシは外して水洗いが可能。そのほか、紙パックと本体の間のフィルター(「アレルオフフィルター」)も水洗いができます。
ブラシはループ形状の毛と溝が配置されており、からんだ髪の毛はハサミでカットしやすかったです
スタンドは、掃除機本体の置き場所として使用するのみで、セットしただけでは充電できません。充電の際は、ACアダプターのコネクターを本体の充電端子に挿し込む必要があります。これが(慣れるまでは)ちょっと手間だな……と感じました。
掃除後、スタンドに本体を戻したら、毎回自分で充電端子を挿し込まなければなりません
先述のとおり、本モデルの「ごみくっきりライト」は5灯ですがそこそこ優秀。特に暗い場所ではゴミが見つけやすく、廊下や物陰の掃除がはかどりました。
とはいえ、やはり上位モデルに搭載されている7灯の「ごみくっきりライト」や「3方向ごみくっきりライト」のほうが、広範囲のゴミを発見できますし、ゴミも影で浮き上がりやすく、より見つけやすいです。
本機のアタッチメントは、「ハンディブラシ」と「2WAY すき間ブラシ」が付属するシンプルな構成です。
「2WAY すき間ブラシ」は先端のブラシの位置を変えることで、すき間用の吸い口に切り替えられます。写真は、延長パイプを外し、ハンディタイプにして「2WAY すき間ブラシ」を付けた状態。軽量で片手でも持ち上げやすく、高いところの掃除がしやすかったです
掃除機は一般的に、軽量でコンパクトなモデルほど、それだけ振動などの影響を受けやすいものです。本モデルは、許容範囲ではありますが、運転音は大きめに感じました。前掲の壁際掃除の動画は「自動」モードで運転させているシーンですが、いかがでしょうか。
さらに、「強」モードで使うと、人の話し声やテレビの音は聞き取りにくく感じました。エコモードや静音性に配慮したモードは備えていないので、運転音が気になる人は実際に店頭などで1度確認してみましょう!
紙パックは、本体前側のフタを開けて取り出します。取り出す際に、「シールふた」を紙パックの吸い込み口に貼り付けられるので、ホコリの舞い上がりは気になりません。これがとても快適! ゴミに直接触れることもなく、ゴミの塊を見ることもなく、サイクロン式のようにダストカップを毎回お手入れする必要もなし。
ちなみにダストカップタイプだと、ゴミを毎回捨てたとしても微細な汚れが溜まり、気になっていました。それを考えても、紙パックを捨てるだけ、というのは本当に気持ちがいい!
紙パックを引き出す際に、「シールふた」で口を密閉できる「こぼさんパック」。ホコリが舞いにくく、中のゴミもこぼれにくいのはとにかく快適!
紙パック式の掃除機は一般的に、使用後の“手離れ”がよく、使いやすいものですが、使っているうちにゴミが溜まり、空気の流れが悪くなることで吸い込み力が下がるという課題がありました。
本機の場合、紙パックの交換目安は2か月に1回。今回は試用で1か月ほど使いましたが、吸い込みパワーが落ちた印象はありません。これは、紙パックをセットする空間に風が流れる通り道“風路”を複数作っているおかげ。純正の「抗菌3層パックフィルター GP-S120FS」をセットしていましたが、排気のニオイなども気になりませんでした。
また、先述しましたが、ゴミ捨て時は紙パックをシールで密閉できるので、ゴミの舞い上がりが抑えられるなど、細かいところへの配慮はうれしいポイントでした。
個人的な本機のお気に入りポイントは、とにかく軽さ! 片手で扱いやすく、気づいたときにサッと使えるし、家の中で持ち運びやすいのは本当に楽です。また、ゴミ捨て頻度の少なさも影響してか、本機の使いやすさを一度知ると、「掃除」への心理的負担も軽くなり、掃除することのハードルがグッと下がるんです。パッと手に取れる軽さって大事なんだなと改めて感じました。また、家族も軽いから使いやすいようで、掃除機を使っている時間が家族トータルで増えた(家族みんながこまめに掃除してくれるようになった)のはうれしかったです。
先述しましたが、紙パック式の上位モデル「PKV-BK50L」と比較すると、まず集じん量が異なります。「PKV-BK50L」は0.6L、本機は0.4Lなんですが、これは紙パックの交換頻度の違いにもつながり、「PKV-BK50L」は4か月、本機は2か月です。
充電池も異なります。「PKV-BK50L」はカセット式なので、劣化した充電池を交換したいときは別売のバッテリーを購入して自分で差し替えればOK。いっぽう、本機は内蔵式なので、買った販売店、あるいは同社の「修理相談窓口」にて対応してもらう必要があります。消耗品なので、保証期間内でも有料です。
あと細かい違いと言えば、「PKV-BK50L」のほうが単純に吸引力がパワフル。アタッチメントの種類も豊富ですし、充電もスタンドにセットするだけで行えます。
同社のサイクロン式の軽量タイプ「すごかるスティック PV-BS1M」は、標準重量が0.97kg。ストラップが付いているので、壁のフックなどにホウキのように吊り下げて収納してもよさそうです。スイスイ進むかけ心地も魅力ですが、押すときも引くときもゴミを吸い込む「シンクロフラップ」は非搭載。集じん容量が0.13Lなので、ダストカップに溜まったゴミをこまめに捨てる必要があります。「PKV-BK3L」と同じように「ごみくっきりライト」は5灯搭載で、「からまんブラシ」やハンディブラシは付いていますが、スタンドは付属しません。より軽さを求めて、ホウキのような感覚で手軽に掃除したい場合は、この「すごかるスティック PV-BS1M」を選んでもよさそうです。
どちらの写真も上がサイクロン式軽量タイプの「すごかるスティック PV-BS1M」で、下が今回紹介した紙パック式軽量タイプ「PKV-BK3L」
左が「すごかるスティック PV-BS1M」で、右が「PKV-BK3L」。「PKV-BK3L」には「シンクロフラップ」が付いています
各写真内の左が「PKV-BK3L」で、右が「すごかるスティック PV-BS1M」。両モデルともに片道だけヘッドを動かした結果です。「PKV-BK3L」は大きなゴミ(猫砂)が残ってしまい、「すごかるスティック PV-BS1M」は微細なゴミが残りがちでした(写真左下)。しかし1往復すると、両モデルともにゴミはしっかりと取れました(右下)
本機は、同社の専用紙パック「抗菌3層パックフィルター GP-S120FS」を使用。6枚入り1,210円で、公式サイトから定期購入も可能です。
「かるパックスティック PKV-BK3L」を1か月ほど使ったうえで、おすすめできる人は以下のとおりです。
・髪の毛やホコリなどの日常的なゴミが多く出る人
・2階/3階建ての家に住んでいて、掃除機を持ち運んで掃除したい人
・家具が多くて、狭い場所をスイスイ掃除したい人
・部屋がフローリングメインの家に住んでいる人
本機は軽くてコンパクトなので、家具の間や下、高い位置も気軽に掃除できます。特に、高い位置を掃除するときに、片手で持ち上げられるのでハタキ感覚で掃除ができて便利でした。また、階段がある家でも、これなら気軽に持ち運べます。
重曹や砂、髪の毛など、いろいろなゴミで試してみましたが、砂などの細かいゴミや髪の毛などの日常的なゴミは、不満なく吸い取れました。いっぽう、猫砂やスナック菓子などの大きめのゴミは、1度で取りきれなかったり、本体を持ち上げたときにパラリと落ちたりすることがありました。
スタンドのデザインはシンプルなので、我が家の場合、玄関先に置いてもジャマに感じにくかったです。花粉が気になる時期や砂汚れなどが気になるときには、本機が玄関近くにあると安心。また、紙パック式でゴミ捨て時にゴミが舞い上がらないところはとにかく快適でした。
部屋の入り口付近に置いても、ジャマになりにくいのはうれしい限り
微細なゴミを目立たせてくれるLEDライトは、実際はゴミの影で浮かび上がらせるというよりは、明るく照らすことで発見しやすくなるという印象。とはいえ、家具の影や壁際、扉の影など、ほの暗い場所のゴミが発見しやすくなるので掃除ははかどりました。
LEDライトで明るく照らせるおかげで、部屋の角や家具の影など、暗くなりがちな場所の掃除は得意です
さらに、ボタンがシンプルで迷わず使えるほか、アタッチメントがスタンドにセットできるところなど、細かいところまで配慮されている点も好印象。軽くてシンプルで使いやすく、昔からある紙パック式ということで、高齢の家族や親戚への贈り物としてもよさそうだと思いました。