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創作者なら誰もが抱く疑問、それは「どうしたら面白い作品が作れるか」でしょう。今回の特集テーマは創作論。ライターとしての私の創作論は『面白いを科学する』です。面白いというのは主観的な感覚ですが、それを客観的に評価する方法に日々頭を悩ませています。人が感じる面白さを科学的に解明するのが目標です。主に心理学、経済学、マーティング学など参考にしています。例えば毎回企画で取り上げる作品のどこを見て判断しているかというと『ピークエンドの法則』に基づいています。ある体験の評価は、感情が最も高まる「ピーク」と、その出来事の「エンド」の印象で決まるという法則です。したがって一番物語が盛り上がる場面、物語の結末の読後感を注目しています。登場人物の良し悪しは、『一貫性の法則』があるかどうか。主張や信念が一貫しているキャラクターは読者に安心感を与えます。さらに魅力的なキャラクターを描きたい方は、恋愛心理学などの本を読むと読者に好かれるキャラ作りの参考になりますよ。創作論も人それぞれ。皆さんの創作論はなんですか? 熱い創作を待っています。

ピックアップ

皇帝を筆で射止めろ! 捨てられ転生皇妃の創作活動

  • ★★★ Excellent!!!

 電車に轢かれて死んだ主人公が目覚めると、異世界で皇帝に捨てられた廃妃・奉景の身体に宿っていた。「皇帝を惚れさせれば帰れる」という頭の中の言葉に従い、文芸で皇帝を射止めるために執筆活動をはじめることに。

 文学芸術の才によって地位が決まる世界観がいいです。

 主人公が転生した元妃の少女・奉景は、幼い頃から神童と呼ばれたベストセラー作家。しかし前世では一般人だった主人公は、まったくの創作初心者。そんな奉景が四苦八苦しながら創作に打ち込む姿が初々しいです。

 皇帝の寵愛を失い、才能が枯れたと思われている奉景を宮廷の人々は冷たく見下す。けれども奉景をお姉様と慕う絵師の少女・朔月と、大商人を目指す見習い商人のカトルと出会い、三人で手を組んで出版活動を企む。実力も実績もない弱小サークルが「最高のものを作ってやるぜ」と大言壮語を言い放つ。その心意気やよし! 創作者たるもの、それくらいの自信がなければなりません!

 しかし用済みになった廃妃が活動を続けることに不満を抱く一派が妨害工作を仕掛けて、三人の計画が早速暗礁に乗り上げる。果たして奉景たちの創作活動はどうなるのか? 見捨てられた廃妃の逆襲劇に期待です。


(「これが私の創作道」4選/文=愛咲優詩)

己の好きを貫け! 女流ラノベ作家・蒼井霧雨の人生訓

  • ★★★ Excellent!!!

 「おねショタ」好きな女流ラノベ作家・蒼井霧雨さんのモットーは、自分の好きなものを好きなように書くこと。ときには「異世界もの」を書いてみることもある。自分が書いた作品の中で、お金になるものを編集者が勝手に選べばいいという独特のスタンスを持っている。

 ときには作品には読者から批判や心無い言葉をぶつけられることもある。けれども「万人の好みに完全に合致するものなんて、作れやしないから」と決してブレない信念がたくましい。彼女の創作論はそうしたメンタルの作り方に基づいている。

 自分の作品のアンチだけでなく、SNSやニュースで正論を振りかざす現代人への苦言を呈する。自身の未熟さを棚に上げ、他人を批判して悦に入る人々を言葉の刃でメッタ斬りにする語り口が痛快だ。もはや創作論を超えて、現代人に必要とされる大人の処世術、人生訓にも感じられる。

 彼女の言葉を読んでいると、マザー・テレサの名言『思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから』という一文を連想する。創作者は自分の思想に配慮しなければ、いつか人を傷つける言葉となって自分に跳ね返るということだ。私自身にも痛いほど突き刺さり、身の引き締まる思いがした。


(「これが私の創作道」4選/文=愛咲優詩)

夢はいつか作家デビュー! 見習い作家少女とツンデレ先輩の文芸部ラブコメ

  • ★★★ Excellent!!!

 文芸部に所属する女子高生の栗棟乃愛と、毒舌家の先輩・東条鼎が繰り広げる小説家を目指す高校生たちの学園ラブコメです。

 小説家を目指す乃愛は、自作の小説を新人賞に投稿しては落選を繰り返している。そんな彼女の作品の未熟な部分を先輩である東条鼎は冷ややかに指摘する。かくいう東条本人も新人賞で落選しているのですが、文章力は東条のほうが上だから乃愛は屈辱を甘んじて受けねばならない。

 自分にも他人にも常に厳しい東条ですが、どんなに批評をつけても諦めず、食らいついてくる乃愛のことを内心では気に入っているんですよね。ツンデレな東条先輩と負けん気が強い乃愛、毎日のようにお互いの主張や意見がぶつかり合う文芸活動が熱くて楽しいんです。

 ただでさえ二人っきりの文芸部なのに、創作のためと称して水族館に行ったり、お互いの性格もわかり合っていて、お似合いではないですかねぇ。ラブコメの波動を感じます。

 東条の指摘で次第に上達していく乃愛、乃愛の存在で人との交流を学んでいく東条。先に夢を叶えて小説家になるのはどちらか。若き二人の創作論が眩しいです。


(「これが私の創作道」4選/文=愛咲優詩)

これがプロ脚本家のリアル 常に挑戦し続ける不屈の創作魂

  • ★★★ Excellent!!!

 劇場映画やテレビドラマなどで実際に脚本を手掛けている現役シナリオライター・高橋祐太さんの創作の日々を綴るエッセイです。

 脚本家を志し、映像ドラマを中心に、これまで200本以上の作品を手掛けてきた高橋さん。しかし彼の創作活動は決して順風満帆ではありません。

 企画やコンテストに何度も投稿して不採用を繰り返し、採用されたかと思えば不透明な撮影スケジュールに翻弄され、クライアントの一存でシナリオはコロコロと変更を余儀なくされる。そのくせ先方からは進捗報告をせっつかれる。終わらない原稿、見通しの立たない企画。プロの脚本家の過酷な現実が身につまされます。

 それでもモチベーションを保つためにYouTubeで作業配信を始めて、ときに12時間以上も執筆し続ける集中力と忍耐力に圧倒されます。しかしそれだけ努力しても本人からしてみれば成果はダメダメで、落選続きというから報われません。

 しかし高橋さんは何度落選しても諦めず、常に何かに応募している。落ちても別のところで受かるまでやる。「そうやって、これまで実現させてきた」という不屈の精神に脱帽です。いまプロを目指そうとしている方々に、高橋さんの創作にかける情熱やバイタリティをご覧いただきたい。


(「これが私の創作道」4選/文=愛咲優詩)