概要
しかし、神社の養女だという学生・海棠美月の手引きの元、村を挙げて執り行われる神事〝姫依祭〟に参加した凛汰を待ち受けていたのは、礼司の惨殺死体だった。
村に福を齎すよそ者〝まれびと〟として歓待されていた礼司の死は、土着の神である〝憑坐(よりまし)さま〟の怒りに触れた凶事であり、次は村人の誰かが犠牲になる。そう解釈した村人たちは、〝憑坐さま〟の巫女を担う美月に、生贄としての役割を求めるが――凛汰は、美月に問いかける。
「お前は、本当に、それでいいのか?」
社会から死を願われた巫女の少女と、血塗られた因習に抗う少年が、閉ざされた村で生き残りをかけて事件の謎に挑んで
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!因習村の秘密を暴きたい!
主人公・嘉嶋凛汰は、父親である礼司を東京に連れ戻すべく、彼が滞在しているという櫛湊村にやって来る。けれどもその村で行われる姫依祭で、礼司の死体を発見してしまうのだった。憑坐、まれびと、供儀…不穏なワードが行き交う村で凛汰は、村を案内してくれた美月とともに、礼司を殺した犯人を探していく。
至るところに謎を紐解く鍵が散らばっており、それを探すのがすごく楽しいです。基本ジャンルはホラミスなのですが、青春を感じる描写もあってわくわくします。一筋縄ではいかない登場人物たちのふとした言動にも、なにかヒントが隠されているかもしれません。
早く真相を知りたくてうずうずすること間違いなし。ぜひみなさんも、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!じわじわと迫り来る恐怖。果たして追い詰められるのは誰?
因習ホラーはけっこう好きでよく読むのですが、こちらの作品はどの作品とも一線を画す、読み応え抜群の面白さです!
まず、主人公がどう見ても只者じゃない。
冷静に行動し、思考する少年・凛汰には強者の風格すら漂います。
因習に衝撃を受け、振り回され、逃げ惑う他作品の主人公たちとは違い、凛汰はあくまでも冷静に振る舞っているように見えます。彼の言動が、広い視野にわたる数多くの情報を読者にもたらします。
情報量の多さは作品の敷居を高くするものではなく、より鮮明な物語の鍵を与えてくれます。文字数を感じずにどんどん読めるのは、作者のさすがの文章力によるものです。
数々のデータを理路整然と分析していく過程も…続きを読む - ★★★ Excellent!!!秘祭、姫依祭。いけにえになるのは、果たして……
父を追ってたどり着いた田舎の寒村では、”まれびと„と「憑坐さま」にまつわる秘密のお祭り、「姫依祭《ひよりさい》」があった。
その秘祭に参加した主人公凛汰の目の前で、人が死に……?
とまぁ、ストーリーの方は各自追ってもらうとして、僕は少し着眼点をずらそうと思います。
こちらの作者の一初ゆずこさん、とてもきめ細やかで厚みのある、味わい深い文章を書く方なのですが、この方がミステリーを、それも横溝正史もびっくりの「因習村系」というどろっどろの話を書くとこうなるのかという驚きがたくさんある話でした。
そしてこの重厚な筆致がありながらも、登場するキャラクターにはどこかライトな雰囲気と言いますか、ち…続きを読む - ★★★ Excellent!!!因習村の悪習に斬り込め! 硬派な文体で語られるホラーサスペンスの極致!
“憑坐さま”(よりましさま)が神様を崇め、怒りに触れると生贄を差し出す。
隔絶した櫛湊村で起こる奇祭、因習というだけで、ゾクゾクします。
主人公は、凛汰くんという高校生。
彼の父親は、この村に住まう画家ですが、凛汰くんは東京に住んでおり、彼もまた画家を目指しています。
しかし、凛汰くんは、画家として父を認めているものの、別居中。
東京からはるばるやって来て、よその土地から福をもたらす『まれびと』として歓迎されるも、村人は老若男女、どこかクセのある変わり者ばかり。。。
それは村に逗留して、美月という少女に出会い、姫依祭という奇祭が近づくにつれ、怪しさは強まっていきます。
そして、ついに…続きを読む - ★★★ Excellent!!!“憑坐さま”のヒミツ、探っちゃお!ドキドキワクワク☆因習村潜入レポート
みんなーっ、“憑坐さま”って知ってる? 櫛湊村ってとこにいる土着の神さまなんだけどね?
この村、よその土地から来た人を“まれびと”として歓迎してくれるんだって!
なんでも、村で行われる“姫依祭”って神事に特別ゲストとして招待してもらえるみたいだよ!
お話の主人公・凛汰クンは15歳の男のコ。有名な画家のお父さんに呼ばれて、この櫛湊村にやってくるんだ!
村の神社の娘である美月ちゃんて女のコが、親切に村のことをいろいろ教えてくれるよ!
ソックリな双子の姉弟とか、物知りなオカルト記者さんとか、“まれびと”の凛汰クンを拝んでくる村人さんとか、素敵な出会いもたくさんあるよ!
やっとお父さんにも会えたけ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!色彩が映える!因習村に洋のモチーフが不思議に絡む、想像膨らむホラミス
凛汰は父に会うため櫛湊村を訪れる。その日は神事・姫依祭が執り行われる日であり、彼もそれに参加するが――
暗闇に淡紅色や赤の映える冒頭から引き込まれました。冒頭に限らず、本当に色使いが印象的で、美しいです。
色が見えるだけでなく、文章が映像で見えるシーンもいくつもあります。それは悍ましい絵であったり光景であったりするのですが、どうしようもなく綺麗で、鮮烈です。
憑坐、まれびとといった日本的に感じるもの。楽園や知恵の実といった西洋的に感じるもの。さらには双子などの要素に、案山子やハナカイドウ等も印象的に提示され、思わず鼻をひくつかせてしまいます。
それらは絶妙に絡み合い、象徴的・示唆的に感じ…続きを読む