私の母親の実家はコメ農家である。まあ、日本の場合、政府による助成金や、価格設定など昭和の時代なんかは特に農家を優遇するような政策が多かったわけだが、それは単に政治家の票集めだけというわけではない。国家にとって、最も重要なのは食料自給率である。平和な時ももちろんだが、戦争時などには、特に日本のような島国ではある種の兵糧攻めの様な状態に置かれる可能性があるため、食料の増産と備蓄は重要課題なのである。だから、多少の経済効率を無視してでも農家を優遇する必要があるわけだ。
人類の文明は農業と共に発展したといっても過言ではない。土台となる農業や漁業などの食料の安定供給がなければ、どんなに金や貨幣があったとしても、飢え死にである。そして、日本に限って言えば、山ばかりで平野部の少ない資源のない孤立した島国で、昔は自給自足しようにも餓死者を出していたほどのジリ貧国である。だから諦めるのか、あるいはだからこそ色々と工夫して食料自給率を上げていくのか、それは国民が決めることであるのだが、私は以前、大学時代の友人に久しぶりに会った際に、こんな事を言われた。
「農家なんて、学もなくて稼げなくて可哀そうに」
明らかに侮辱の籠った発言なわけで、私は内心穏やかではなかったが、まあ何も言わなかった。あなたがどんなに稼いでいたとしても、日本と言わず世界中から農家がいなくなったら、あなたはどうやって食べていくのですか? と訊ねてみたかったが、まあやめておいた。こんな風に、一応大学ででも、というか学歴のある者ほど、実はバカということは良くある。
確かに農業やら漁業やらは、肉体労働だし、自然が相手だから確実に収穫が見込めるわけでもないし、汚いし危険だし、とかく蔑まれがちではある、というかあった。しかし、誰かがやらなければならない仕事だし、仮に自分にはそんな厳しい仕事は無理だ、ともっと楽な仕事を選んだのなら、せめてそのようなキツイ仕事をしている方々への敬意をもっても良いのではないか? 農業があまり儲からないのは、国民の命を支える最低限の基盤であるからだ。食料の価格があまりにも高ければ、富裕層以外は買えなくなってしまう。だから、よほどの豪農でなければ厳しい仕事の割には儲けが少ないのである。
別に農家の方々がバカなわけでも、他の職業の人たちと比べて劣っているわけでもない。
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