弊社エンジニア職の求人に、日本から一向に応募が無い件
先日、弊社CareerLink Vietnamにて、エンジニア職の新規求人を始めました。勤務地はベトナム・ホーチミン市。
東南アジア各国を飛び回るウェブ系エンジニアWanted!!
[5/9 03:10 追記] WantedlyのURLが古く応募ができなかったようです。新URLに置き換えました。
日本人にターゲットを絞り、満を持してWantedlyに掲載したのだけれど、応募がない。
個人的には、南国ベトナムで開発に従事するというのは、なかなか魅力的な労働環境だと思うのだけれど、どういうわけか、日本から一向に応募がない。
なぜ応募が振るわないのか、理由を考えてみたが、労働環境に魅力が無いわけではないと思う。ただ、いきなり東南アジア勤務というのが若干ハードルが高く感じられるのかもしれない。
そこで、気を取り直して、現地ベトナムの雰囲気が伝わるよう、採用に関する補足事項等を、本エントリにまとめてみることにする。
CareerLink Vietnamについて
ベトナム国内向けジョブサイト www.careerlink.vn を開発・運営している。
会社規模はどれくらいか
社員数は数十人程度、創業者CEOは日本人。また、日本人の営業担当の方が複数人働いている。他は皆、ベトナム人スタッフ。なお唯一のエンジニアであるところの僕(CTO)も日本人。創業は2006年だけれども、Webに力を入れ始めたのは今年に入ってからなので、技術人材面ではどベンチャーである。
スタッフの皆さん
なぜ日本人エンジニアを採用するのか
今回、求人のターゲットを日本人に絞った理由は2つあって、
1)やっぱり日本人エンジニアは優秀だなあと感じるから。実は今回の採用活動に至る前に、ローカルでベトナム人エンジニアの募集をしていたのだけれども、弊社の要件を満たす応募が皆無だった。皆、レジュメを盛り過ぎである。。 またWeb系エンジニアであるからには、単に言われた通りの実装をコーディングするのではなく、ぜひプロダクトの使い勝手を積極的に改善していってほしいところだけれども、そういうマインド(やセンス)を持っている人は、ここでは本当に少ない。
2)CEOとCTOが日本人だから
英語でのコミュニケーションは色々と苦労があるので。。
これまでは、僕の個人的なつてをたどって、日本在住のWeb系エンジニアの方々にお願いして、受託扱いで手伝いに来てもらったりしていたのだけれど、どうもそれでは開発が追いつかなくなってしまった。今、弊社でやりたいことを実現するには開発力が全く足りておらず、目下新規採用が至上命題。ベトナム人ではなく是非日本人のエンジニアにJOINして頂きたいと考えている。
想定している応募者像
- LAMP開発歴1年〜5年程度(PHP + MySQL)
- サーバサイドMVCのなんたるかを、それなりに理解している
- MVCフレームワークを使って普段仕事をしている
- JSもそれなりに書く
- 普段Gitを使っている
- いずれはPHP以外の言語にも手を出してみたいと思っている
- 自社サービスを手がけるエンジニアになりたいと思っている
- いずれはディレクションやマネジメントにも挑戦してみたいと思っている
新しくJOINして頂く方には、まず弊社のフロントエンドサイト(www.careerlink.vn)の拡張・改良に従事していただくことになると思う。現在、弊社フロントエンドはSymfony2フレームワークを用いて構築されている。Symfony2を触った経験があればいいけれども、Symfony2の経験がなくても、他のMVCフレームワークを扱った経験があればスムーズに着手できると思う。またSymfony2は、Eric Evans氏が提唱するDDD(ドメイン駆動設計)の考え方が色濃く反映されたフレームワークであり、開発者にはDDDに関する予備知識があることが望ましい。
ワークパーミット(労働ビザ)について
会社にて準備。
ホーチミン市での暮らしぶりについて
食事について
1)日本食
市内に日本食レストランは充実している。「なんちゃって日本食」ではなく、どれも日本人経営の、れっきとした和食である。ホーチミン市はラーメン激戦区でもある。
Lê Thánh Tông通りの日本人街にあるラーメン屋「大ちゃん」
2)ローカル料理
日本食のリーズナブル感と比べると、コスパが低いように感じる。衛生面に関して言えば、僕は胃腸が弱いほうだけれども、ローカル料理を食べたことで特に問題が起きたことはない。
3)その他外食
旧仏植民地のせいか、パンはとても美味しい。自分は朝ごはんに最寄りの「Tous Les Jours」という韓国系パン屋さんでクロワッサンを食べることが多い。この店のクロワッサンとデニッシュチョコパイはとても美味い。ただ店内にヤモリが多く生息していて(ベトナムでは一般的)、天井にへばりついたヤモリが希にウンチを落とす
4)自炊について
自分は自炊をしないので、スーパーマーケットや市場等の事情はよくわからない。スーパーマーケットはあちこちにできているけれど、日本ほど多くはない印象。バイクがないと買いだしは難しいかもしれない。
家賃について
日本と比べると安いが、物価水準を考えるとかなり高い。市内は人口密度が高く、不動産は大変貴重なリソース。外国人向けワンルームのアパートであれば200USD-250USDくらいで借りることができる。奮発して500USDくらい出すと広くておしゃれな部屋になると思う。なお外国人が借りるようなアパートは、基本的にルームクリーニング・ランドリーサービス付きである。
治安について
治安は基本的に良い。軽犯罪(ひったくりなど)は多いが、注意することで被害を防げる。スマホのひったくりには特に気をつけたほうがいいと思う。凶悪犯罪は殆ど無く、真夜中に女の子が一人でATMからお金を下ろしていたりする。
現地での交通手段について
運転免許を取得して、バイクに乗ると行動範囲が広がり、ベトナムを満喫できる。自分も免許を取ってバイクを購入した。免許を取得するのはさほど難しくないが、バイクに乗っている日本人の半数はなんと無免許である(免許を取得するのが面倒くさいみたい)。
ベトナムでバイクに乗っていると言うと、多くの外国人から「クレイジーだ」といわれる。事実、バイクの接触事故は非常に多い。ただ、市内では速度域が低いため、命に関わるような重大事故は少ない。ちゃんとしたヘルメットをかぶろう。真っ当な会社の駐在員は、大抵社則でバイクの運転が禁止されている。タクシーなどの交通手段も安く使えるので、バイクがなくても困ることはない。
朝の通勤ラッシュ
医療等について
日本語が通じる医療機関が複数あり、大抵のことは市内で事足りる。万が一、ホーチミンで手の施しようがない事態になった場合、バンコクもしくはシンガポールにヘリ移送される。なお、会社支給の邦人向け海外医療保険があり、ヘリ移送と相成っても移送費は保険でカバーされる。
市中心部サイゴン大聖堂近くの公園地帯。日本人御用達の病院が公園の隣に二件ある
日本人コミュニティについて
自分はそういう場に顔を出さないのでよく分からないが、日系フリーペーパーなどを見ていると、日本人同好会(フットサルとかソフトボールとか)のメンバー募集広告は多く掲載されている。日本人経営のバーやカフェなどもあるので、そういったお店が交流の場になっているのかもしれない...
その他
求人情報や環境の補足は以上なのだけれども、ついでなのでベトナム、というか新興国でWebサービス開発をするということについて、常日頃見聞きしていること・感じていることなど書いてみたい。
現地で一般的な開発言語について
ベトナムはIT開発系オフショアの一大拠点であり、当然ながら.Net, Java あとはとにかくPHP。去年Matzがホーチミン自然科学大学でRuby講演をした辺りから、RubyやRailsの経験を問う求人が増えてきたイメージがある。他、Drupal等のCMSカスタマイズを問う求人案件がよく目に付く。
現地Web系企業で一般的な開発スタイル
CDD - コピペ駆動開発(あっこれは万国共通かな..)
技術トレンドについて
キャッチアップは先進国の1年遅れくらいかな? 今では mongodb, redis, cassandra, neo4j (←何に使っているんだろう)などの経験を問う求人も、ちらほらと見かけるようになってきた。 ストリームデータ処理とかはまだ見かけない。
マカー率
極めて低い。理由は、
- ハードウェアが非常に高価(日本で買うよりずっと高い)
- OSがタダではない。WindowsだとPCを買えばタダで付いてくる(えっ)
あたりだと思われ。(ちなみに僕は日本で買ってきたMBA2012を使っている)
スマホ、タブレットソリューションの重要性について
カフェに入ってiPhoneもしくはiPadをいじっているのがこっちではステータス。うちも早くiOSアプリを出さねば。
カウンターでこれみよがしにiPhoneをいじる
賃金水準の違いが可能にすることについて
ここベトナムでは、4年制大学を卒業した新卒ベトナム人エンジニアで、初任給は200-300USD程度。非エンジニアのオフィスワーカーだともう少し低いと思う。
弊社社内では、顧客ユーザが入力したデータを社内オペレータが人海戦術で電話連絡、修正・加工していたり、メタデータを追加していたりするが、これは先進国では成立し得ないのではないかと思う。
外国資本同士の殴りあいについて
海外サービスを無理やり締め出して、広大な国内市場をローカルサービスプロバイダに独占させる大陸中国などと異なり、ベトナムは幸か不幸か、強力な外資系プロダクトが国内市場を蹂躙している。結果、国内IT産業が脆弱なままにある。従って、この国でWebサービスを展開する場合、競合他社は必然的に外国資本であることが多く、しかも多くの場合ベトナム以外のASEAN各国にも事業展開している多国籍企業を相手にすることになる。そういった競合と互角に渡り合うには、我々もベトナムからASEAN各国に出て行き、規模を追求しなければならない。世界規模で寡占化が進む中で、今がラストチャンスかもしれない。
このエントリを読んで、もしベトナム・ホーチミン市での開発業務に興味を持ってくれた方がいれば、是非連絡してください。直接Wantedlyで応募するもよし、疑問、質問があればメール(: kazki.matz@gmail.com)もしくはTwitter(: @KazkiMatz)に問い合わせるもよし。もちろん「まずは話を聞きにいきたい」も大歓迎。成田から飛行機で6時間、ホーチミンでお待ちしています。
[追記] 5/8 23:10
所用で、5月8日〜16日の間、関西地方にいます。関西圏の方で「話を聞きたい」という方がいらっしゃれば、直接お会いすることもできます。@KazkiMatzにメンション投げてください。
近所の旅行代理店にて。どういうわけかベトナムの猫はみんな痩せている