はじめに
年末の振り返り記事はつい読書記録総決算とばかりに大量に紹介しがちですが、あえて3冊に絞ることにしました。
その結果「人文系の作文術関連の本」というテーマが浮き彫りになりました。
私がブログを長年続けられているのは、文章を書くことが純粋に好きであること、そしてそれを通じて読者を楽しませたいという想いがあるからです。なのでこのテーマはぴったりです。
とくに2024年は生成AI関連のツールや開発に触れる機会が多かったため、それを活用する手段としてライティング技法への関心が高まりました。
今回紹介する本の著者たちの背景は人文系であることは共通していますが、日本文学、英米文学、外国語、国際文化の研究やオタクの推し活など幅広い分野に及びます。
これまで理工系の作文術ばかりを好んで読んできた私にとって、これらの本は味変として新鮮な刺激をもたらしたといえます。
そして、どの著者にも共通して見られたのは、人に物事を教えるトレーナーとしての能力の高さです。
- 『「好き」を言語化する技術』には「感想は自分の感情を表現し言葉として残すこと」
- 『ビジネスパーソンのための「言語技術」超入門』では「言語は言葉を使ってコミュニケーションを図るための技術」
- 『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』には「論文(文章)には価値のある主張が必要」
という視点が述べられており、これらが私の読書と執筆の習慣を新たな視点で捉え直す契機となったと言っても過言ではありません。
「好き」を言語化する技術
『「好き」を言語化する技術』は、自分の好きなものについて語れる、いわゆる「推し語り」のための文章術をまとめた実用書です。
一番カジュアルに読めそうな内容であるため、まず最初に紹介します。
この本は、市民の読書習慣の変容を近代労働史の視点から読み解くベストセラー『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の著者である三宅香帆によるものです。
「なぜ働いているとーー」は映画「花束みたいな恋をした」の印象的なシーンを分析の出発点とし、『「好き」を言語化する技術』を活用して書かれているとも読めるので、本書の有用性にも説得力があります。
※この本は、2023年に発刊された「推しやば」こと『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』とほぼ同じ内容を含むため、既読の方は注意が必要です。
感想を語るコツは、「細分化」と自分で考えた言葉(文脈)
心を動かされたところを具体的に挙げるうえで注意してほしいのが、「細かく」挙げること。これは細かくたくさん挙げろ、と言っているのではありません。挙げるのが全体的な点ではなく、細かければ細かい点であるほどいい! という意味です。 細かく具体例を挙げることのなにがいいのか。それは、感想のオリジナリティは細かさに宿るからです。
たとえば、ライブの感想に「最高!」という言葉しかでてこないという悩みは、ライブの「どこが」最高だったのかを言えたら解消されます。ライブで「この曲が」演奏されたのが嬉しくて、「この歌詞が」あらためて響いて、「この演出が」自分の心を揺さぶった。そんなふうに、最高だった点を細分化さえできれば、じつは語彙力なんてなくても、あなたのオリジナルな感想になり得るのです。
感想を語るコツは、自分の好きと言う感情を「細分化」と自分自身で考えた言葉で語ることにある、と三宅は主張しています。
我々はしばしば言語化のうまさを、国語力、つまり「読書経験や学力によって豊富な語彙を持ち、それを選び取る修辞テクニックに秀でた状態」として認識しがちです。
しかし、本当に重要なポイントは自分の好きと言う感情を「細分化」することであり、感動、共感、違和感など、心を動かされた要素を具体的かつ細かく挙げていくことにあります。
これにより、語彙力に頼らずともオリジナリティのある表現が可能になります。
その抜き出した細部を、自分の考えで妄想的に膨らませ、好きなものや人への感情を表現する妄想力を養うことが重要です。
また、自分の記憶から関連するコンテンツをつなぎ合わせ、思考を自由に展開させることで新たなネタを生み出します。
こうした作業を通じて、「好きな対象のどの部分に注目したのか」「なぜそれを好きなのか」「それはなぜか」といった「なぜなぜ分析」を重ねていきます。
これらのプロセスは、客観的な意見や一般論に頼るのではなく、自分自身の文脈に基づいた独自の表現力を築く基盤となるのです。
このようにして、感想や思考の言語化は、語彙やテクニックではなく、自分の「好き」を掘り下げる視点から始まることを理解できます。
話し相手(読者)との情報格差を埋める
重要なのが、「距離」つまり、「自分と相手との差異はどの程度か?」を把握しようと心がけること。ただ「相手の情報」を把握するのではなく。「自分の情報との差異」が重要です。なぜかというと、伝えることは、自分と相手にある情報格差を埋めることにほかならないから。
好きの言語化とは、自分と相手との情報格差を埋めるプロセスです。
この際に重要なのは、聞き手の「推しに関する知識量と印象」を把握し、それに応じて「伝えたいこと」を補足することです。
たとえば、専門用語が多い場合は、言い換えや具体例を用いることで聞き手が内容を理解しやすくなります。
また、聞き手の興味に合わせた語り方を心がけることで、相手にとって話題がより魅力的に感じられるでしょう。
たとえば、「このキャラクターの魅力はツンデレなところ」と言う代わりに、「最初は冷たく見えるけど、実は不器用で優しいところがある」と表現を変えることで、ツンデレという用語に馴染みのない相手にも伝わりやすくなります。
このように、文章化は相手の知識や関心を考慮しながら情報を整理し、共有する作業です。
その結果、伝えたい内容が効果的に伝わるだけでなく、相手との間に新たな共感が生まれる可能性を高めるのです。
SNSの空気から自分の言葉を守る
SNSで推しのことを発信するのは、ほかならない推し、あるいは自分のためですよね。推しの魅力を伝えたい、推しのよさを記録したい、推しの面白さをわかってほしい。これらの欲望の間には、推しと自分しかいないはず。他人を介在させる必要なんてない。 だから、他人の言葉に自分が影響されないように。大量に流れてくる他人の言葉の渦から、自分の言葉を守ること。それがSNSのコツなんです。
SNSの空気から自分の言葉を守り、自己表現を維持するという言論は三宅の著書に度々出てきます。
確かにSNS上には同調圧力や「空気」のようなものが存在し、多くの人の意見がなんとなく決まってしまう傾向があります。
この空気に流されてしまうと、他人の意見を無意識に取り入れてしまい、自分の考えを失ってしまう危険があります。
(このブログの読者は古参インターネットのマッドマックス的世界の残党が含まれているので「そんなことはないが」と言われてしまうかもしれませんが)
本書ではこの問題に対する対策として、「自分の感想をプライベートなメモや日記に書き留めておく」ことを提案しています。
「一旦、感情君を安全な場所で保護せよ」ということですね。
たとえば、映画を見た後にまず自分の感想を日記に書いておけば、SNSで他人の感想を目にしても、自分の意見が揺らぐことを防げるのです。
こうした習慣を持つことで、他人の意見に左右されずに、自分自身の言葉や感情を守ることができます。
これには私も賛成で、メモアプリを長年取っ替え引っ替え愛用しています。
本書の使いどころ:コンテンツ消費活動のお供に
『「好き」を言語化する技術』は、快適な消費活動のお供として活用できる一冊です。
摂取したコンテンツの感想が一辺倒になってしまうという問題に対し、本書はあの手この手で具体的な解決策を提示しています。
コンテンツの消費は、それをどう受容したのかを周囲に表現する活動と一体化している部分があり、自分の感想をいかに独自性のある言葉で表現するかが重要になります。
本書を通じて、自分独自の感想を言語化する力を身につけることで、健全な精神を保ちながら快適にコンテンツを楽しむことができるでしょう。
「推し」の魅力を語る行為は、単に相手に伝えるだけでなく、自分自身が何を大切にしているのかを再発見する機会となり、結果として自己理解を深め、人生をより豊かなものにしてくれるのです。
本書は、そうした消費活動をさらに深い楽しみに変えるための実践的なガイドブックといえるでしょう。
そしてこれは、個人ブログへの投稿としても最適な内容です。
個人ブログはフリースタイルで書けるため、自分の書きたいことを優先しやすく、本書で学んだ「感想の言語化」技術を存分に活かせる場となります。
たとえば、本ブログでありがちな技術記事の視点から見ると、「新しいフレームワークの開発者体験のどこが優れるのか」といった評価や、「この技術を使っていて感じたツラみやアンチパターン」を具体的に言語化することに役立てることができるでしょう。
また、より論理的で体系立てた文書にしたい場合は、後続の本でさらなるスキルを学ぶことをお勧めします。
ビジネスパーソンのための「言語技術」超入門
『ビジネスパーソンのための「言語技術」超入門』は、言語を技術として使用し問題を解決する力を身につけるための実践的なガイドです。
対話、説明、記述、絵やテキストの分析といった具体的なスキルを体系的に解説しており、特に各スキルには具体的なトレーニング方法や応用例が示されています。
この本の著者、三森ゆりかは、教育現場向けの教材開発や研修実施において長年の経験を持っています。
本書は2021年に発刊されましたが、私は今年この本を読みました。
本記事のテーマに非常によく合致しているので、合わせて紹介したいと思います。
言語技術は訓練によって向上させることが可能
その結果明らかになったのは、いずれの国の母語教育もやはりその組み立てや内容に大きな差異はなく、どの国でも母語教育が非常に重視され、週に五時間程度、徹底的に読み、議論し、記述する訓練がなされていることである。そして、この言葉の技術教育の目的は、幼稚園から高校までの長期にわたる訓練の末、最終的にはそれぞれの技術が有機的に絡み合い、汎用的能力として社会で機能することである。
言語技術は、私たちの母国語・日本語の言葉を道具として使い、目的を達成することであり、情報を明確に伝え、他者と円滑に意思疎通を図る力が含まれます。
従来の日本語教育では言語の形式的な面に重点が置かれ、コミュニケーションや思考といった言語の機能的側面が十分に扱われていません。
「暗黙の了解」に重きを置く文化もあり、言葉で明確に表現するスキルが軽視されているのです。
それはビジネス、教育、日常生活など、あらゆる分野で応用可能です。
例えば、プレゼンテーションでは自分の考えを明確に伝え、相手を説得する力が求められます。
他には、社会問題への関心を持ち、情報を分析し、自分の意見を築いていくためには、強力な言語技術が不可欠です。
これらを実現するための言語技術は「訓練によって向上させることが可能である」というのが本書の出発点です。
問答ゲーム:質問と回答の型を身につける
本書で提唱される対話トレーニングの「問答ゲーム」は1対1で対話を行い、与えられた質問に対して相手が答える形式で行われます。
「問答ゲーム」のルールは次の四点である。
①結論を最初に言う
②主語を入れる
③理由を言う
④結論の再提示をする
これらを必ず守ることが、常に結論から情報を発信し、効率よく対話をする能力の獲得に繫がる。
目的としては、質問と回答の型を身につけさせ、欧米型の結論先行型の思考プロセスを実際に体験させることで、そのメリットをしっかりと理解させることにある、と三森は説明します。
日本文化では主語や目的語を省略し、背景や相手の気持ちを想像してハイコンテキストにコミュニケーションをすることが一般的です。
こうした中では質問に対する回答は最初に過程や理由を述べ、その先の結論に共感してもらうことに重きが置かれます。
結果として、ときに結論や自分の意見が不明確なまま話し始めてしまうこともあります。
しかし言語技術における対話の場面では、明確で論理的なコミュニケーションを促進するため、結論先行型への移行を積極的に促すことが求められています。
「問答ゲーム」によって質問を繰り返し、「なぜその結論に至ったのか」、その理由が論理的に正しいかを質問と対話によって深めることができます。
これは、例えば『「好き」を言語化する技術』における「感情の細分化」に通ずるアプローチでもあります。
空間配列:分かりやすく情報を組み立てる
説明文には種類があり、これは時間を扱ったものと空間を扱ったものとに大別できる。前者は、いわゆる時系列で並べられる情報を提示する文章で、これには経過や段階を示すものも含まれる。後者は、空間的に捉えた対象、時間には落とし込めない事柄を提示する文章である。日本の教育では、時間的情報の並べ方については一応学習機会がある。しかし空間で捉えたそれについての提示方法は未学習である。ところが、この方法による説明の機会は存外多く、その結果が日本の説明的文章のわかりにくさを生み出している。
空間配列は、情報を時間や重要度によって並び替えて配置する方法です。
三森はこれを、情報の整理および効果的な伝達のための技術として説明しています。
複雑な情報の塊を分解して、特定の基準に基づいて順序立てて説明することで、関連する概念がより明確に理解できるようになります。
これは、一種の論理的なソートアルゴリズムに似ています。
本書では、国旗などの視覚的な情報を言語化し、構造的に捉えることが実践されています。
これをライティングに応用すると、文章をアウトライン構造に整え、重要度の高い情報を結論としてパラグラフの最初に配置し、重要度の低い情報を捕捉する説明として後続に配置します。
本書の使いどころ:ブレスト、プレゼン、ドキュメンテーション
『ビジネスパーソンのための「言語技術」超入門』が活用できそうな場面は多岐にわたります。
まず文章にする前の思考過程、いわゆるブレインストーミングにおいて活用できます。
情報の収集と整理は、発話の前に考えをまとめ、何を伝えたいのか、どのような情報が必要かを整えることによって効果を発揮します。
対話→質問によって思考を深め、より明確な結論を導くことも可能です。
次に、ある特定の情報をテキスト化する場面では、具体的な例としてニュース解説記事、テクニカルライティングが挙げられます。
また、自分の考えを整理し、文章として他者に理解させる場面でも有用です。
これには、ブログやエッセイ、さらにはプレゼンテーション用のスライドの作成が含まれます。
まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書
『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』は学術論文の執筆技術を体系的に解説した書籍です。
著者の阿部幸大は、日米文化史研究を専門としている筑波大学の助教であり、自身の執筆経験を活かしてこの本を書き上げました。
光文社から提供されたPR素材は本書の詳細に乏しいですが、gendai.mediaの抜粋記事や著者のウェブサイトであるkodaiabe.comに掲載されたアブストで、その内容を十分に理解できます。
2024年に『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』(光文社)と題した入門書を出版した。期末レポートや卒論レベルから世界のトップジャーナルまで、論文執筆に必要な実力を養うための方法論を網羅的に指南する。人文学における論文執筆には基礎となる習得必須の知識と技術が存在するが、それを現在の大学教育はうまくカリキュラム化できていない。なにを達成すれば論文は成功したことになるのか、どの段階でどの程度の達成が要求されるのか、そしてそのためにはどのようなトレーニングが必要なのか。そもそも、いったい人文学の論文とはなんのために書かれるのか? 本書では、原理編・実践編・発展編・演習編の四段階にわたり、独学で学術論文を準備・執筆・出版するために必要なすべてを提供する。
この本は、従来のアカデミック・ライティングの方法論を学んでも書くことが難しいという人々でも、各要素を分解して分析し、トレーニング手法を確立することで、執筆が可能になるというコンセプトを持っています。以下の『独学大全』の読書猿と阿部幸大の対談にそのことが書かれていました。
自身の主張(アーギュメント)を提示する
論文とはなにか。この問いに、ひとまずシンプルな答えを与えることからはじめよう。
論文とは、ある主張を提示し、その主張が正しいことを論証する文章である。
これはシンプルなようでいて、論文というジャンルの文章がもつ、きわめて奥深い特質である。
本書でまず印象的なのは「アーギュメント」という言葉を定義して、それを元に論理を展開することです。
アーギュメントとは論文の主張のことです。論文を書く際に、その論文全体を貫く主張を明確にします。
論文では主張に対して他者が意見を述べたり、反論したりすることで、アカデミックな価値が育まれます。
実際に本書では、戸田山 和久氏の『論文の教室』に掲げられた「論文には問いが必要だ」という主張に対し、「論文には問いではなく主張が必要」と反論することで、論文の書き方指南書における「論文とは何か?」という議論に参加しています。
パラグラフ解析:書くために読む
多くの人は、自分では論文を書けなくても、読むことならある程度できる、と考えている。スラスラと正確に読めるかどうかといった話ではなく、ようは 執筆力よりも読解力のほうが高いはずだ という想定だ。 しかし本書の核にある認識のひとつに、「書けないやつは読めてもいない」 というものがある。書けないということは読めないということなのであり、読めないということは書けないということなのだ――そう考えたほうが、執筆の役に立つ。
阿部は、「書けないのは読めてないから」と説明し、読解力のみならず文章を「書く」能力も論理的な文章を読む訓練を通じて向上させられると述べています。
実際、自分の書いた文章であっても客観的に読むことが求められますし、自分の書きたい領域での文章をお手本として分析してその構造を理解することがライティングの第一歩です。
さらに、パラグラフを分析する具体的なトレーニングとして、パラグラフ解析手法”Uneven U”が紹介されています。
この方法では、抽象度に応じてセンテンスをレベル1から5に分類します。
先の『ビジネスパーソンのための「言語技術」超入門』でいうと抽象度を使った「空間配列」の一種として、規則によって文章を配置して構築できます。
このように、文章の読解と書くことが密接に繋がっていることが理解できます。
蛇足ですが、パラグラフ解析手法”Uneven U”のトレーニングをサポートするGPTsを公開しているので興味がある方は使ってみてください。
長いパラグラフを作るには情報を詰め込むべし
パラグラフ解析をして対象領域の論文と我々の文章を比較すると大抵「パラグラフが短い=内包するトピック数が少ない=議論に乏しい」という問題が明らかになると阿部は説明します。 長いパラグラフを作成するための実践方法が「第5章 長いパラグラフをつくる」です。
むしろわたしたちが取り組むべき 実践的な 課題は、 パラグラフ・ライティングのルールを守りながらもっと長いパラグラフを書けるようになるための方法論の構築 である。丁寧に論じているつもりなのにパラグラフが短くなり議論が粗雑であると判断されてしまうのはなぜなのかを理解し、その解決策を手にいれることなのだ。
パラグラフに多くのトピックを振り込み、複数の論点を関連付け、論理的に展開する構造によって、複雑なアイデアを明瞭に伝えることができます。
一つのトピックに基づいて、詳細な説明や具体的な例を交えながら論点を展開することも重要です。
さらに、パラフレーズを活用しながら内容を別の言葉で言い換えることにより、情報を異なる視点から提示することで分量を増やします。
引用を活用して参照先の文献から引き出したアーギュメントを加えることで、他者の知見を取り入れ、多角的な解釈が促進されます。
これらを効果的に行うためには、読解力が不可欠であり、自分なりの解釈を生むためにも言語技術が求められます。
というわけで『ビジネスパーソンのための「言語技術」超入門』にも通ずる話です。
生成AIの作文が読み応えがないのは情報が少ないから?
「第5章 長いパラグラフをつくる」を読んでいるときに思い出したのが、生成AIによる作文の読後感です。
「AにとってXは効率的に活用できる重要な〇〇です」というフレーズのように、表面的には「結論→補足→まとめ」の形式を整えているにもかかわらず、含まれる主張や情報が少ないと感じることが多いのです。
要するに、主張や論点、捕捉説明が不足し、文字でそれを埋め合わせているに過ぎないのかと納得しました(生成AIにおける「推しが好きすぎてAIヤバイ」と連呼している状態と考えると微笑ましい)。
これは、現在の安全なAIの基準が自身が主張を控えることをよしとする調整をされているためであることも想像します。
本書の使いどころ:主張を含む文章全般
『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』の使いどころは、論文以外にもビジネス文書、技術ブログといったさまざまな場面で意見を文章化する際に適用範囲が広げられると思います。
文章を書く以前の調査過程でも、引用を目的とした参考文献を集め、自分の意見や主張を明確にしたり、議論に参加する基礎を築くために本書のトレーニング手法が役立ちます。
ボーナストラック:YouTubeチャンネル
最近、著者のYouTubeチャンネルが開設されて動画が公開されています。
このチャンネルでは、本書で解説した方法論を実際に活用して、ウェブ上の文献から情報を集取する手順をライブで説明しているコンテンツがあります。
私は動画を見て、作業工程が技術ブログの執筆過程と似ていると感じ、自分のライティング作業にも適用できると気づきました。
本書を読んだ後、気に入った方はこのチャンネルもフォローするとよいでしょう。
おわりに
以上で2024年に読んだ本の紹介を終わります。
今年はこれらの本以外にもコンピュータ書や小説もたくさん読みました。
一部の本は記事にしてあるので、当ブログの過去記事一覧から辿ってもらえればと思います。
そしてその読書を可能にしたのは日々使っている生成AI技術のおかげです。
来年以降は生成AI技術を使った文章執筆・構成の自動化分野に取り組みたいと考えています。
それでは良いお年を。