「#アホ男子母死亡かるた」というハッシュタグで、男子のアホな行動をかるた形式でネタとして投稿していたら、とある出版社が「#アホ男子かるた」なるハッシュタグを利用しネタを募集し、絵をつけて出版に至ったという騒動。
出版社は限りなく黒に近そうなのですが、ツイートは著作物として認められるのか、出版社がパクった証拠を出せるのか、一般人が裁判をしてメリットがあるのか、などなどなんとも複雑な騒動です。
ツイートの所有権はユーザーにある
ツイートに著作権があるか否かを考える前に、しばしTwitter社はツイートの二次利用を認めているので、ツイートを勝手に本として出版しても問題ない、という見解を示す人がいますが、それは本当かを検証します。
「アホ男子かるた」の方も、そのような話を聞いたことがあると書いています。
ツイートの著作権については私も知識が乏しいのですが、twitter社は二次利用も認めていると聞いたことがあったのでこのパクリ自体が法的に問題があるのかどうか分かりませんでした、
tweeterjpさんによるtwitter利用規約読解講座 - Togetterまとめ に代表されるように、Twitterの規約ではツイートの再利用を認めているから誰かが勝手にツイートを本として出版しようが、パクツイしようが問題ないと解釈する人が定期的に出現します。先日も、そんな内容のRTが回ってきました。
この規約をざっと読んだところ、(日本語版は読んでないけど。)、本にされようが、他のサイトに伝搬されようが、無償での再利用を許諾していることになる。主張できるのはツイートの所有権だけ。
2010-08-31 00:58:24 via web
本当にTwitterの規約にはそんなことが書かれているのでしょうか?
Twitter / サービス利用規約 には「5.ユーザーの権利」にツイートの所有権に関する記述があります。
確かに「コンテンツを使用、コピー、複製、処理、改変、修正、公表、送信、表示および配布するための、世界的な非排他的ライセンスを(サブライセンスを許諾する権利と共に)当社に対して無償で許諾するものとします。」と書かれており、一見すると無制限な二次利用を認めているように読めます。しかし、その下のヒントには「このライセンスによって、ユーザーは、当社や他の利用者に対し、ご自身のツイートを世界中で閲覧できるようにすることを認めたことになります。」とも書かれています。
この文言は、ユーザーはTwitter社に対して、投稿したツイートをWebやクライアントや、その他のサービスで表示することを承諾したという意味です。
所有権に関しては、以下に引用した記述の通り、ユーザーにあると明記されています。
ヒント:Twitterは、エコシステムパートナーによるユーザーのコンテンツの取扱いについて、進化し続けるルールを定めています。これらのルールは、ユーザーの権利を尊重しつつオープンなエコシステムを実現するためのものです。ただし、ユーザーのコンテンツをユーザー自身が所有していることには変わりありません−ユーザーのコンテンツ(コンテンツには写真も含まれます)の所有権はユーザーにあります。
ツイートを二次利用して良いのは、APIを利用した場合で、例えば favstar や ツイッターをまとめよう - Togetterまとめ のように外部サイトにツイートを表示し利用することができますよ、という話です。勝手にツイートをまとめて本を出版しても良い、という話ではありません。
同様の理由で、Twitter社の規約は、他人のツイートをコピーして自分のツイートとするパクツイをしても良い、とは書いていません。Twitterヘルプセンター | Twitterルール にあるように「繰り返し他のユーザーのアカウント情報 (自己紹介、ツイート、ホームページなど) を自分のものとしてツイートした場合」はスパムであると判定される場合もあります。
ちなみに、ツイートの二次利用では非公式RT、あるいはコメントを追加してRTする方法が問題になりますが、Twitterヘルプセンター | ツイートをリツイートする方法 から判断するに、Twitter社は非公式RTをしても良いとの立場でしょう。ただし、公式のRTを推奨する立場ですが。
ツイートに著作権はあるの?
短い文章は、著作権法において「思想または感情の創作的な表現」と定義された「著作物」には当たらないと判断されるケースがあります。
キャッチコピーは著作物にあたるのですか | 法律相談 の回答にあるように、キャッチコピーやスローガンは著作物に当たらない場合があります。ただし、スローガン事件 における「ボク安心 ままの膝より チャイルドシート」なる交通標語は著作物であると判断される場合もあり、ケースバイケースです。
例えば、「古文単語暗記用文例中に著作物性の肯定される文例が存在することを認めた事例」 として年号の語呂合わせも著作物として認められたケースがあります。
あるいは、新聞見出し無断ネット利用に賠償命令 著作物性は再び否定 - ITmedia ニュース にあるように新聞の見出しは著作物として認められません。しかし、新聞の見出しを用いて広告収入を得るのは不法行為として、広告収入を得ていた会社に損害賠償を命じています。
「#アホ男子かるた」の場合は、ツイート単体では著作物として認められる可能性は裁判をしてみないと分かりませんが、勝手に出版するのは不法行為と判断できるでしょう。また、ツイート単体ではなく「かるたの一群」として考えると著作物であると見なすこともできるでしょう。
ただやはり、わざわざ一般人が裁判するメリットがないのですよね。
追記 発売延期だそうで
アホ男子かるたの出版を延期するそうです。
出版社曰くブロードキャストでのツイート利用に関するガイドライン を読んで問題ないと判断したそうですが、本はブロードキャストではないので、何を言ってるんですかね。規約を禄に読めない、きちんとした法務部がいないと言ってるに等しい謝罪文だと思うんですが。
そして、なんでこの手のネットに疎い会社の謝罪文って画像なんですかね。URLを確認するのが面倒なんですが。