「破魔矢」(はまや)・「破魔弓」(はまゆみ)は、
「初詣」の際に、「開運厄除」「家運隆昌」を
祈願して持ち帰って神棚に飾る風習があります。
「初誕生」や「初正月」「初節句」を迎えた
男の子に贈られ、武者人形など一緒に
飾られたりもします。
名前の由来
「破魔矢」や「破魔弓」と言う名前は、
飛鳥時代の「射礼」(じゃらい)や
「大射」(たいしゃ)の儀式に使われた
「的」(まと)が元になっています。
「射礼」(じゃらい)や
「大射」(たいしゃ)の儀式とは、
お正月に弓で的を射ることで
「魔」を打ち払い、
その年の健康や豊作を願うというものです。
この儀式では、藁縄で円座のようなものを
作って「的」としていたのですが、
この的を「はま」と呼んでいました。
そこから「はま」は弓矢でいる的(まと)、
もしくは射的の競技を意味する言葉となり、
後には儀式での弓矢の意味と役割から、
魔を破るという「破魔」(はま)の字を当てて、
それぞれ「破魔弓」(はまゆみ)
「破魔矢」(はまや)と呼ぶようになったのです。
弓矢は古来より神聖な意味を持っていた
日本では、既に縄文時代には
弓矢が存在していたと言います。
狩猟・採集生活をしていたその時代、
弓矢は食料を得るために
必要不可欠な道具であり。
神聖な意味を持つものとして扱われていたと
言われています。
古来の人々は弓矢には
「邪気を祓い、目には見えない悪霊を退散させる」
特別な力が備わっていると信じていました。
宮中儀礼に欠かせない弓矢
『日本書紀』の頃から宮中では、
「射来」(じゃらい)と呼ばれる弓の儀式があり、
後にお正月の儀式となりました。
平安時代には、弓の弦を強く弾いて
魔除けをする「鳴弦 (めいげん) の儀」が行われたり、
大晦日には、「追儺」(ついな)という
邪鬼駆除の儀式に
桃や葦で作られた弓矢が用いられたりしました。
「鳴弦 (めいげん) の儀」
矢は使わずに弓の弦を強く弾き鳴らして
音を四方へ発することで、
天地四方の邪気を祓う意味を持つ神事です。
現代の破魔弓でも、セットになった破魔矢が
4本であることが多いのは、
この天地四方の考えに由来するとされています。
弦を弾く時の音は鬼が嫌う音と信じられ、
鬼が起こすとされた魔気や邪気を祓うために
宮中では出産や産湯を使う際に行われてきました。
この儀礼行事は現代まで続いており、
今日の皇室においても
お子様が誕生されてから七日目には、
「読書・鳴弦の儀」が行われています。
更に、遠方に向かって放ち
標的を仕留める弓矢は、
人間には知ることの出来ない
「方向や距離を判定する占い用具」としての
意味も持つようになり、
魔除けのための「破魔弓神事」だけでなく
「弓射」(ゆみいり)と呼ばれる弓矢を用いた
年占い神事も行われていたそうです。
その後も弓矢は神聖なものとして扱われ、
今日でも神社などで行われています。
正月飾りとしての破魔弓
鎌倉時代に男の子の「初正月」の祝いとして
贈られていた「破魔弓」は、
小さな弓と矢を組み合わせたものでした。
弓は武士にとって重要なものでしたから、
江戸時代には、武家の男児が成長して
立派な武士として出世することを願い、
手遊びに使えるような弓矢が贈られました。
その風習はやがて民間にも伝わり、
現代に至っています。
その後、破魔弓の作りが
次第に豪華になっていくと
そういう遊びも行われなくなり、
やがて飾ることが主流になっていきました。
平穏な世の中と無事を祈る魔除けの道具として
親しまれるようになりました。
破魔弓は誰が贈る?
「破魔弓」は一般的に母方の実家から
贈られていたものですが、
今では、両家で折半するなど様々です。
11月中旬辺りから店頭に並び始めますので、
12月初旬には飾りつけが出来るように
購入するのがいいようです。
破魔弓の飾り方
旧年の風に当てることから、
12月の「大安」などの良い日に飾ります。
一般的には、
お正月の準備時期が始まる
12月13日の「正月事始め」を過ぎたら
「破魔弓」などを飾り始めます。
縁起が悪いと言われるのは、
12月31日の大晦日に飾る「一夜飾り」です。
破魔弓や羽子板などの正月飾りだけではなく、
一般的にお祝いものを前日に出して飾る
「一夜飾り」はあまり良くないとされています。
また12月29日は「苦立て」と呼ばれ
「二重苦」を連想させ縁起が悪いので、
避けておくのが無難でしょう。
破魔弓の飾り場所は、
かつての主流は床の間でしたが、
現在は床の間がない場合もありますから、
その場合は、魔除けの意味から
子供の寝室だったり、
皆んなが見れる場所が良いでしょう。
破魔弓はしまい方
破魔弓は「小正月」(1月15日)過ぎに
しまうのが一般的ですが、
縁起物ですので、
一年中飾っていても構いません。
破魔弓を収納する場合は、
晴れた乾燥した日を選びましょう。
しまう際は、防虫剤は少なめにして
乾燥した場所を選びましょう。
上棟式
「上棟式」(じょうとうしき)とは、
家づくりが棟上げまで終わった時点
(基礎工事が終わってと家の骨組みを完成)で行う行事です。
クレーンなどの重機がなかった時代、
大工さん総出で1日中棟上げの作業をする
必要があったため、
その労をねぎらう意味もあって
上棟式を行ったようです。
その棟上げの際、屋根の上に破魔弓・破魔矢を立てる「鬼門除け」も、
弓矢の持つ魔除けの力を信じ、
魔除けの力で家を守ろうと始まった風習です。