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【出版記念セミナー】お金とプロティアン~稼ぎ方の心得~(全4記事)

誰もが持っている“目に見えないビジネス資産”を生かすコツ 田中研之輔氏が解説する「オタク度」を上げる価値

一般社団法人プロティアン・キャリア協会主催で行われた『定年後のお金、なんとかなる超入門 インフレ時代のセカンドライフ』(KADOKAWA)出版記念イベントの模様をお届けします。「お金とプロティアン~稼ぎ方の心得~」というテーマで、本記事では田中研之輔氏の講演部分をお届けします。

「お金とプロティアン」を考える

田中研之輔氏(以下、田中):じゃあ、和泉さんからバトンを受けて、私のほうから10分ほど、今考えていることをこのテーマでお伝えしていこうと思っています。ではちょっと画面をもらいますね。

今日は100名ぐらいいらっしゃるのかな? このスライドはアーカイブでも提供するので、みなさんにお渡しします。今回、なんで「お金とプロティアン」を考えたいかと言うと、理事の和泉さんが……今回これ(『定年後のお金、なんとかなる』の本)、みなさんお手元にありますか?

『定年後のお金、なんとかなる超入門 インフレ時代のセカンドライフ』(KADOKAWA)

不思議と、やっぱり(本の表紙が)黄色なんだよね。偶然だと思うんですけど、キャリアとかお金とかね、協会では黄色の本がけっこう多いです。

初めての方もいらっしゃるので、このあたりはさくさくと行きます。私は(協会で)代表理事をやっていますけれども、カリフォルニアバークレーへ行って、今15年目の中堅の研究者になりました。本を書いています。

『プロティアン』という本を書かせていただいて、日経から出して、それなりのインパクトになっています。この前だと、リスキリングのところで、NHKにも出させていただきました。和泉さんほどメディアに出ているわけじゃないですけど、比較的呼ばれたりもしています。

最近ですと、こんなあたり(2019年から2022年に出版された本七冊がスライドに表示される)。 ほぼ毎朝、時間があれば書こうと思っています。今もね、最新作のキャリアオーナーシップは書いています。今度5月15日に『プロティアンシフト』という本が出ます。それは女性管理職のお話ですけれども、またそちらも読んでいただいたらいいかなと思っています。

こんなかたちでね。動画で言うと、こちらは富士通のCHROの平松(浩樹)さんとか、三井物産グループのMKI(三井情報)さんですね。副社長の蒲原務さんとの対談なんかも、直接今日のお話には関係ないんですけど、やはり前提として知っておいていただきたいなと思っています。これが私のプロフィールの最初の紹介です。

「お金に対する向き合い方」の歴史的転換期

みなさんに問題提起したいんだけど、お金とプロティアン(社会の変化に応じて、自分の意思で自由に姿を変え、形成していくこと)で考えないといけないことが1つあるなと思っています。これは私の私見ですけど、今、組織内キャリア型から自律型キャリアへ、プロティアンもその流れの中で歴史的転換を迎えている。組織の中でキャリアを預けないという認識は比較的広まってきたんですよ。

だったら、組織内キャリア型でやっていたお金の認識も、やはり間違っているのではないか。間違っているとは言わないにしても、考え方を変えないといけない時代なのではないかなという感覚があるんです。恐らくそれは間違ってないかなと思っていて。じゃあもう少しフォーカスしてみようと考えると、今回の和泉さんの本の役割でもあるんですけど、恐らく「マネーシフト」だと思うんだよね。

これは私の理解ですが、「認識論的転換」と整理して、つまり我々がお金に対する向き合い方、捉え方、使い方を変える歴史的転換期を恐らく迎えているだろうと捉えていただいてかまいません。それに対して実行できるのかできないのかで、かなり資産も両極化していくと思っています。

組織内キャリア、伝統的な働き方、1社で勤め上げる働き方って、一言で言うならば、与えられて守っていく資産形成だったと思うんですよね。働き始めました、35年ローンを組みました、家も用意できました。しかし、別に良くも悪くも給料とともにローンを払っていく。そうやって生きてきたんだよね。

プロティアン型は、もちろんそうやって生きていくんだけど、給料を1つのところからのインカムで、ある種それをいただいて生活費で分配していく、投資していくのではなくて、もっと自己投資にふれる時代だろうと。

どういうことかと言うと、お金とプロティアンで考えるとですね、みなさん誰もが、いつからでも、私の言葉で言うならば、生産活動ができる時代を今生きている。だからこそ、その戦略設計が必要になると考えているんですね。

だから今、あらためてこの図(これまでのキャリア→プロティアン・キャリアという二つの図がスライドに表示されている)を見ていただくと、この図って意外とお金とプロティアンにもまんま使えるなと。つまり左側、組織の中にいる人に、働く対価としてお金を与えてきた時代から、我々みんながむしろ組織をリードしていく。そのためにうまくお金を使っていく。

お金を「ライフキャリア的思考」で考える

今回、出版記念として私もこれ(『定年後のお金、なんとかなる』)を読んだんですよ。今日も朝から、今セミナーの直前ぎりぎりまで読んで、「わかりやすいなあ」と思っていました。私も、和泉さんのファンの1人でもあるので。ただ、他のこの手の本と和泉さんがどう違うのか、私なりに解釈すると、3つあるんだよね。

この3つを、ちょっとまとめたんです。これは後から和泉さんと話したいんだけど、ファイナンシャルプランナーが、こんなことを書いているんですよ(「前を厚く生きる」「ライフキャリア思考」「網羅的なマネー戦略」とスライドに表示されている)。これ、普通はあり得ないんだよね。おもしろいでしょ? 「前を厚く生きろ」と書いているんですよ。これ、すてきだなと思って。

つまり、「お金を無駄遣いせよ」とはもちろん書いてないよ。書いてないんだけど、「今いる時間をもっと豊かに過ごせ」と。これをお金のプロが言ってくださるんだよ。そうするとね、我々は認識を変えられるじゃないですか。

そして例えばこのページでも。みなさん、もし本を手に取っていただいていれば25ページに、実はドナルド・スーパー(アメリカのキャリア研究者・心理学者)が入ってくるんですよ。定年後のお金の使い方に関する本で、こういう本ってあんまり見たことない。

ドナルド・スーパーが入ってきて、和泉さんはお金をライフキャリア的思考で考えましょうと書いている。もちろん介護や子育てや、いろいろ入ってくるけどね。だからイベントとしてのお金の考え方になってくるわけ。これは大きなヒントがすごくあるなと思います。

もちろん後半にかけては、ものすごく具体的な……例えば今ちょっと紹介していくと、「定年後は自分のキャリアを活かしましょう」。さっきの話もあったけど、「20万円以上利益があると確定申告になる」「地域でどうする?」「副業をどうする?」と本当に具体的。

なので、そういうある種のマネーとプロティアン、お金とプロティアンの百科事典的な位置づけでもあるから、ぜひ読んでいただきたいなと思います。

まず「眠っている資産」を起こす

私なりにそれを受けて整理すると、「浪費」と「消費」と「貯蓄」と「生産」。この4つがあるんだなと思うんですよね。

やはり生産が大事になってくる。生産に関して言うと、組織内型とプロティアン型があったわけですよ。「じゃあみなさまはどうしますか?」と言うと、給料日を待ってね、与えられた限られた資産です。今インフレの話もありましたし、賃金が上がらないという話もあった。

例えば今、私の学生なんかで起きているのは、「タナケン先生、ちょっと海外に行ってくる。1年半帰ってきません」と言って、ワーホリで海外に行くんだよね。向こうでジャパニーズレストランで働いたほうが稼げるんですよ。要は貯金して帰ってくるんだよね。

海外留学というか海外経験を積んで貯金して帰ってくるから、みんな行っちゃうんだよね。もちろん「行け、行け」と言っているんですけど、そういうグローバルキャピタリズムの中で、我々のお金とプロティアンの関係性がある。

スライドはあと3枚になります。1。みなさん、「眠ってませんか?」。何が? タナケンは意外と眠ってないんだけど、資産です。つまり、みなさんの周りにはものすごい休眠資産があるわけ。まずはとことんメルカリに出すとか、とことんセカンドハンドショップに売っていくとかやっています? 私はけっこうやるんですね。

私の場合はね、意外と物を持つのが好きではないというか、空間があったほうが好きなタイプだとわかっているから、どんどん売るんだよね。今、近場でいつも(売りにいく店には)「また来たな」みたいに(言われる)。「はい、今日は何か持ってきました」って。

ガジェットが増えるじゃん。何でもいいんですよ。本もそうだし、みなさん周りのいろんな資産があるじゃない。それをやはりまずは流動させるのがすごく大事なのではないかと思います。

クラウドワークスで自分のスキルを売ってもいいけど、まず第1段階として。これ、私の親が聞いていたらうれしいんだけど、実家に帰ると、2階にけっこう段ボール箱があるんだよね。「なんで?」と言ったら、「いただき物が捨てられなくて」とか言っているんだけど、「いやいや、回しましょう」と。だから、ある意味みなさんはまず眠っている資産を起こそう。

ビジネス資本を生かすコツは「オタクになること」

もう1つは、目に見えない資産。これがまさにビジネス資本だけど、これもあります。このビジネス資本に関しては、もっと戦略的に活かす。例えば、何でもいいと思うんですよ。今日来てくださったみなさんの中で資産がない人……資産というか、プロティアンで言うビジネス資本がない人はいないんです。

ただしちょっと工夫が必要で、それは言い方を変えるならば、少しオタクになることね。少しギークになる。そうすると、そこに資産が集まってくるから。例えば、何でしょうね。みなさん、何をやっているんだろうね。

例えばじゃあ、ランニングをしています。ランニングをしているんだったら、ランニングのシューズを分析してnoteに書くとか、「アシックスがいい」「ミズノがいい」。「ナイキがいい」「アディダスがいい」ってあるじゃない。あれを誰よりも詳しく発信できれば、そこにバリューが付くんですよ。

これ、何歳からでもできるんですよ。だから、60歳だから、55歳だからできないことはまったくないわけ。例えば料理が得意だったら、レシピに関しての解説を。今だったらYouTubeのしらスタくんは、歌手が歌っている曲を解説していくんだよね。彼なりの専門的ビジネス資本ですよね。

それがバズって、いまやテレビにも呼ばれるし、もちろんYouTubeでの収益も上がっている。企業案件なんかも上がっている。だから我々も、そういうことをみんなで、みなさんが育てていくのがすごく大事かなと思っています。

市場価値を発揮するための「嗅覚」

でね、お金とプロティアンで私が考える最後のシートになるんですけども、レバレッジ戦略2つ。これ、シンプルです。「アイデンティティ・レバレッジ」と「アダプタビリティ・レバレッジ」を考えました。

これはまさにプロティアンの生き方なんだけど。とにかく、みなさんらしくあっていいんだよ。だから、「誰々がこうやってやっているから、私のマネー戦略はこうだ」と考える必要はないんです。

私や今回の和泉さんの本を手にしながら、自分にしかできないこと、何でもいいんですよ。タコノコに詳しいとか(笑)。タケノコの季節だからね。携帯に詳しいとか、それこそ今、生成AI系? ChatGPTをはじめ、Leonardo.Aiとか、いろいろデザインツールとかも日々更新されているから、それについて詳しいとか。

やはり、プロティアン的にお金を稼ぐならば、少なくとも100人中の1人にはならないといけないね。それは、もうこの時代は、学歴、あるいは知的レベルという意味での1位ではないです。

つまりオタク度です。その人しか知らない。「水を利き水できます。『い・ろ・は・す』と他の水の味がわかります。なんでわかるのか?」とかばーっと書いていくと、絶対そこにファンが集まるから。だから、ある種のマイクロインフルエンサーになっていけば、必ずアイデンティティ・レバレッジは獲得できる。

そして、アダプタビリティ・レバレッジ。ここがある意味曇っていて疎いと、市場価値は発揮しにくいから。どういうことかと言ったら、やはり嗅覚だと思うんだよね。「世の中が、社会がどっちに向かっていくのかな?」は、やはり考え続けたほうがいいと思います。プロティアン協会はみんなそういう仲間が集まっているから、それについて必死に話したらいいと思うのね。お茶をしたり、リアルで会った時に「(次に)何が来る」と。

例えばClubhouse。今やっている人、あんまりいないよね。私はあれが来た時に「絶対これは流行らない」と思ったものね。それは自分なりの嗅覚。だから自分のセミナーで一回もやってないんですよ。流行るかどうかわからない。自分なりに「絶対あれは流行らない。なぜならばアーカイブしないから」という理由。ただし好きな人もいたから、それはそれで流派が違う。

ただし、今回の生成AIは必ず来ると思う。だから、毎日それを使いまくっていますよ。だから、「何が来るのかな?」ということと、自分らしくあること。これ(スライド)は1枚のシートですけど、まさにアイデンティティ・レバレッジとアダプタビリティ・レバレッジを活かしていくと、オーナーシップを持って、プロティアン型で「マネーとプロティアン」を考えることができるかな。

ちょうど和泉さんの本にも書いてあったけど、そのうちの1つの手段として、やりたいこととやりたくないことをうまくバランス良くやるとか、分けるとかね。副業とかブレない時間を作るとかがあります。ですので、これらをヒントにしながらやっていただければいいかなと思います。

いったん私のほうからは終わりますけど、クロストークさせていただきます。このスライドはみなさんに事務局からお渡ししますので、参考にしてみてください。今日、和泉さん用にほやほやで作ってきたスライドですので、まだ至らない点もあると思うんですけれども、そんな思いで、このすばらしい本を読ませていただきました。みなさんもぜひ読んでみてください。以上です。

栗原和也氏(以下、栗原):田中先生、ありがとうございます。

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