2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
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川原崎晋裕氏(以下、川原崎):では学校の話はこれぐらいにいたしまして、次のテーマにいかせていただきたいと思います。
「なんで学校を作ったんですか?」とかをインタビューで死ぬほど聞かれていて。なんでしたかね……。「綿密に計画を立てたわけじゃない」とか、「明確な理由・きっかけがあったわけじゃない」というふうに回答されていて。読んでいる私としては、けっこうモヤっとしていたところではあるんですけど(笑)。
結局、今この瞬間というよりは、ずっと積み重ねてこられたものの中で決断をされたんだろうなと思っています。そこにつながる寺田さんの起業哲学みたいなものを少しお聞きしたいなと思っておりまして。
寺田親弘氏(以下、寺田):おっしゃるとおりですね、ぜひ。
川原崎:ちなみに寺田さんにとって、起業家のご友人はたくさんいらっしゃると思うんですけど、「優秀な起業家」ってどういう方だと思われますか?
寺田:いやぁ、これ難しいですね……。
川原崎:バイネームで(笑)。
寺田:いやいや(笑)。何て言うんですかね、自分がいいなと思うものとそうじゃないものという話と、優秀か優秀じゃないかという話はちょっと分けないと失礼かなと思うんです。僕がたぶん起業の類型として好きだなとか、かっこいいなと思うのは、どっちかというと非連続性のあるものに挑戦すること。
「このマーケットがこう伸びてくるから、そこで勝つ」とか、「市場がこうなるからこう動く」という要素って、やっぱりすべての起業家にとって欠かせないんですけど。そこを主軸に動いていくタイプの人もいるし、そうじゃなくて「世の中の流れをこういうふうに変えていきたい」と動いていく人もいるじゃないですか。それも当然ミックスなんだけど、非連続な価値を生み出すことに比重が向いている人のほうが、なんとなく共感しますね。
ただ一方で、起業家は事業家であり経営者じゃないですか。経営者としては結局、結果が出ることがすべての指標だと思うんですよね。例えば「あの人はすごいですか」と言われたら、結果が出ている人は普通にすごいと思うんですよね。だからその意味においては、結果が出なけりゃ何でもないわけなので。結果が出ている人をすごいと思うという、その2つ。
つまり内容を定性的に見た時に、「この会社・この人たちがいなかったら、ほかのものがそれをやっていたんだろうな」と思うものかどうかという観点と、実際にそれが社会的な・定量的なインパクトとして結果が出ているかどうか。この2つは自分にも問うていますし、仮に人を見た時に感じるものがあるとしたら、その2点で感じますね。
川原崎:なるほど。寺田さんって実際に誰かと競争をしたらすごく強そうなイメージがあるんですけど、あんまり競争したくないみたいな話なんですかね。
寺田:普通に動物的なというか、かけっこしたら勝ちたいし、ケンカになったら勝ちたいしという、勝負になった時に勝つことに対するこだわりはぜんぜんありますし、そこに対して貪欲に手を打っていくこともします。ただ、それは手段でありたいなというのはすごく強いんですよね。誰もがそれは手段だと思っているんだけど、自分たちで何かこう……。
例えばこの学校(神山まるごと高専)って、誰かと競争している感覚はないんですよね。もちろん、学生を募集するとか、先生を集めるとか、寄付を集めるというのは、その要素はゼロじゃないんだけど、極めて少ない感じがするんですよね。我々がチャレンジしなかったらこの学校はなかったし、こういうものはなかったな、と思えることに尊さを感じるので。
一方でもちろん、特にビジネスの現場で競争になったら、勝つことに対してはスイッチをピッと入れて、勝ちにいきますよね(笑)。それは矛盾しているようで、僕の中では両方あるところですかね。
川原崎:なるほど。戦わざるを得ないとなったら戦うし、ってことですね。
寺田:ぜんぜんあります。そしたらもう徹底的に戦うぞ、みたいな感じはありますね(笑)。
川原崎:なんかこう……「尊敬している起業家」とか、いなさそうなんですけど。赤浦(徹)さんのお話はけっこうよく出てくるんですけど、メンターとしてというお話だと思いますので。
寺田:尊敬してる起業家……けっこういっぱいいますけどね。
川原崎:えっ、いるんですか?
寺田:やっぱり結果が出ている人はすべからく尊敬してます。やっぱりすごいんだよな、って思うから(笑)。あとは普通にベタですけど、イーロン・マスクとかスティーブ・ジョブズとか「すげぇな」と思いますよね。やっぱりあのへんは非連続な匂いがしますよね。
日本で言ったら誰だろうな。尊敬している起業家……けっこう身近でいますけどね。昨日もラクスの中村(崇則)社長とメシ食っていたんですけど、中村さんとか「すげぇな」っていつも思っていますし。そういう距離感ですごいなと思う人はいっぱいいますけどね。
川原崎:Sansanの場合だと、売上はストック型でしっかり作っていきつつ、そこからいろんな関連のビジネスに派生していって。全部がないと成り立たないというか、全部が元の名刺みたいなところに紐づいて派生している感じがあります。さっきおっしゃった「非連続」という部分と、ちゃんと安定的な基盤を築くという部分は……?
寺田:あぁ、そうですね。結局、中からの物語は連続的にしか起きないじゃないですか。さっき言った非連続というのは、どっちかというと社会から見た時に「この企業がなければこういうものはなかっただろうな」と思えるものを生み出したいという感じですかね。
例えば僕らはSansanとして、クラウド名刺管理サービス「Sansan」と「Eight」を両方やっていますけど。別にぜんぜんショボいと思っているんですよ。ただ我々があの時起業して、このサービスを世に出していかなかったら、「Yonyon」とか「Seven」が使われていた世界ではないかな、と思うんですよね。
つまり我々がやったことで、誰かの何かの行動は、なかった時と次元が違うかたちで変わっていると、ちょっと感じるわけですね。そこにはすごく意味を見出しますね。
ただ一方で、会社の成長やサービスを作ったりというのは、魔法の杖があるわけじゃないから。1枚1枚、地道に積み上げていくわけですよね(笑)。本当に地道な作業で。成長もこうやって非連続でいきたいと思ってあの手この手をやったら、ようやく連続成長していくような感じだと思っていて(笑)。
川原崎:(笑)。
寺田:それはでも、そうあるべきだと思いますしね。ギャンブルをしているわけじゃないし、って感じもあります。
川原崎:あとご自身が今、起業家になられてもう10……。
寺田:14年? 長いですね。
川原崎:中学校の子どもがそろそろ卒業しそうなぐらいの。
寺田:びっくりしちゃいます。
川原崎:その中で寺田さんは、「成長」という言葉をよく使われますし、成長することがなによりのエンタメというか。
寺田:そうかもしれないですね。
川原崎:何か具体的なエピソードで、すごく自分を変えるきっかけになった言葉であったりですとか、すごく落ち込んでる時とかに「この人のこういうのを見て起業家として成長した」と思われた瞬間って、どういう時なのかなと。
寺田:すごくいい質問ですね。うーん、どうなんだろうな……ちょっとストレートな答えにならないかもしれないですけど、この「神山まるごと高専」をやり始めて、久々に肌感覚としての成長を感じています。
川原崎:めっちゃ最近の話ですね(笑)。
寺田:新しいことに挑戦することは、そういうことなんだろうなと思うんですけど。さっき言った話とかぶりますけど、Sansanを経営している、Sansanを率いている立場の自分としてみると、もはや結果が出なければ成長したと思えないわけですよ。「がんばっているのに」とか「こんなことができるようになった」という感じよりも、ちゃんと結果が出れば「俺は成長したんだろう」と思うと。
一方学校は、結果がまだ何もないですけど、日々動いていく中で今までだったら会わない人に会いに行ったり、やらなかったようなことをやり始めたり。イベントとかそういうものって僕あんまり……苦手じゃないけど好きではないんですよね。
川原崎:イベントに出られることが。
寺田:イベントとか、人前でしゃべることって。どっちかというとたぶん得意なほうなんだけど、好きではないんですよね。だから極力そういう機会は減らしていましたけど、学校の話が始まってからはがんばって出るようになったりとか(笑)。
川原崎:(笑)。それも成長なんですね。
寺田:それも成長です。日々の成長を感じる、筋肉痛を感じるのはそこですかね。
寺田:誰かの言葉云々という意味で言ったら、マザー・テレサの言葉とか。「思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。 言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから……」っていう一連の言葉がありますけど。
要するに自分が司れる思考をちゃんと意志をもって方向づけすることで、運命すら変わるんだというのはすごく思っていて。それは大事にしていますかね。
川原崎:基本寺田さんはパッション系ですよね。すごくスマートに感じる面もありますし、なんとなく寺田さんご自身は自分のことをロジック派というか……(笑)。
寺田:(笑)。
川原崎:でも私は、「この人は絶対にそっちじゃないな」と思って、Sansanの社内の人に聞いてみたんですよね。そうしたら「そうなんですよ」って。「ロジカルっぽく本人は言っているけど、周りの社員から見るとめちゃくちゃパッションな人だ」って。
寺田:そう……なんですかね(笑)。なかなか自分のことを第三者的に見られないですけど。理想では両方ありたいなと思っていますかね。人にものを説明する力とかって、やっぱりロジックが入ってこないと、パッションだけだと伝わらないし。逆も然りかなと思うので。パッションとロジック、情と理みたいなもの、両方高く伸ばしていきたいなとは思っていますかね。
川原崎:なるほど、わかりました。少しお話が変わるんですけど、「起業家」という言葉を聞くとどうしても、「経営者」と何が違うのかというのをけっこうみなさんもイメージされるのかなと思っています。
当然、会社を興したことがあってそのまま経営者になった方と、いわゆるプロ経営者と呼ばれている方とか。あとはこれは難しいと思うんですけど、取締役も経営者って呼ばれるじゃないですか。その根本的な違いってあるんですか?
寺田:どうなんですかね……僕自身は、自分のことを起業家であり事業家であり経営者なんだと思っているんですよね。起業家というのは業を起こすので、何かゼロイチのこととか。さっき比喩として勝ち負けと非連続と言いましたけど、どっちにもやっぱり「業を起こす」という意味でゼロイチがあるじゃないですか。
何もなかったところに法人という組織を作って、そこに人が集って、お金が流れていく世界を作る。これがまさに起業で。だけどこの起業の要素って、最初の何年かだけで、そこから先はないかというと、会社としては再びスクラップ&ビルドをしたりゼロイチをやっていくことがあるので、起業家的な要素はずっと残っていくと思うんですよね。
一方事業は、普通にビジネスを立ち上げてサービスを、エコノミクスを回していくという要素だと思うし。経営となると一般的にもそうだし、どっちかというと組織をマネージしていく色合いが強いのかなと思います。
それをもうちょっと複合競技として捉えるみたいな。起業家は事業家でもあり経営者でもあるし、いわゆる一般的なプロ経営者も起業家的な要素もなきゃいけないし、事業家的な要素もなきゃいけないということなのかなと思っています。
いろんな社長さんとか会社の代表を見ていると、志向はけっこうそれぞれ際立ちますよね。僕は起業家志向の経営者でしょうね。一方で「組織をデカくしたい」とか、「この組織を」「会社を」と語りがちな、そういう言葉が大きい人は経営志向なんだと思うんです。
僕は経営者である前に事業家でありたいし、事業家である前に起業家、もしくはイノベーターでありたいというのを矜持にしているので。ただ帽子は全部かぶり直さなきゃいけないし、上場企業の社長として投資家と対峙する時は当然、経営者の帽子をかぶってちゃんと向き合いますしね。だから全部の要素がそれぞれなきゃいけないってことなんだと思いますけどね。
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