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その4 イルカとAV


古林:ふひゅぅー……。
形霧:おや?どうしたんだい、古林君?暇だけどせっかくの休みだから、ちょっとそこまで出てくるとかいって、2時間も外に行ってたじゃないか?
古林:おう、形霧か……。いや、実はレンタルビデオでも借りようかと思ってな……。
形霧:AVだね?
古林:か、関係無いだろ!
形霧:アダルトビデオだね?
古林:う、うるさいな!!
形霧:アダルトビデオなんだね?
古林:ま、まあ借りようと思ったのはそうなんだけどよ。
形霧:借りようと思った、でも、どれを借りようか迷ってしまった、違うかい?
古林:……実はそうなんだ。
形霧:ふーん、でも君がいつも自慢している愛人達はどうしたんだい?
古林:実は皆、生理中だったり、旅行中だったりと、偶然皆呼び出せない状態でな。それに、セックスとオナニーはちょっと違うじゃん。
形霧:なるほど、女体を使った射精と、自分の体を使った射精とではそれぞれに異なった魅力があるという事だね。
古林:そんな事詳細に解説すんなよ!
形霧:それにしても、君はアダルトビデオなんてもっとガシガシ気軽に借りてるのかと思ったよ。
古林:ちょっと前まではそうだったんだけどよ、俺くらいのレベルになるともうパッケージを見ただけでだいたい内容が分かってしまうんだよ。これは企画物で女の顔が髪で隠れてるからブサイクだ!とか、これは女優モノで4種類服を着てるから濡れ場が4回で間に変なドラマが入ってるな、とかいった具合にな。
形霧:ほう。AVマスタークラスだね。
古林:そうなるとなんだかもう、どれを借りるべきか、どれで抜くべきか解らなくなってな。生まれて初めてAVを見る直前の、あのドキドキ感が懐かしいよ。



形霧:なるほど、君の悩みはわかったよ。それで結局何を借りたんだい?
古林:折角の休みだから何か見ようと思って、結局映画を2本借りた……。
形霧:ふつうだね。
古林:……おい、もし凄いAV持ってたら貸してくれないか?確かお前昔レンタルビデオ屋でバイトしてたんだろ?
形霧:確かにバイトしていたんだが、君を満足させられる程凄いのは持ってないね。
古林:本当かよ。
形霧:本当さ。そうだ、代わりにアダルトビデオの新しい楽しみ方を教えてあげよう。
古林:新しい楽しみ方?
形霧:そうさ。……そうだな、まず僕がそれを思いついた時の話からはじめよう。あれは僕が入間にあるイルカ大学に在学していた時だった。
古林:入間に海なんかあるのかよ!。
形霧:レンタルビデオ屋でバイトしていた僕はアダルトビデオの仕入れを担当していた事もあって、1日3本エロビデオを見ていたのさ。まあ、バイト全員仕入れ担当だったんだが。
古林:単なる趣味じゃないかよ!
形霧:そんなある日、大学の友人にレンタルビデオ屋でバイトしている事を話したら、あるAV女優を知らないかと問われたのさ。
古林:「ある」ねー。
形霧:その友人の話によると、どうも同じ学部にAV女優をやってる女の子がいるらしい。勿論、本名じゃなくて芸名でやってるんだが、ビデオのパッケージを見ると一目瞭然でその子と解るそうだ。
古林:えっ!本当かよ!
形霧:勿論、本名じゃなくて芸名でやってるんだが、ビデオのパッケージを見ると一目瞭然でその子と解るそうだ。
古林:まあ、そうだろうな。それよりも姦らせてくれる様に頼んだのかよ?!
形霧:……君ねぇ、「AV女優」と聞いたら「すぐ姦らせてくれる」という様な短絡思考は止めたまえよ。以前TVのバラエティー番組に出ていたコンチータ松本も「AV女優=すぐ姦らせてくれる」と考える男が多すぎると言っていたぞ。
古林:そ、そうかもな。……ま、まあそれよりもどうなんだよ、その女の子は?
形霧:一応、学内で本人の顔を確認したんだが、確かにそのAV女優と同じ顔で、同じ声だったよ。本人に聞いたら笑顔で「違うよー」と答えるんだがな。



形霧:それでその件は終わったんだけど、すぐ近くにAV女優がいる事にちょっとした驚きを覚えたものさ。そしてその後、AVを見ていたある日、僕は一つの発見をした。
古林:えっ!なんだよ?。
形霧:そのAVに出ていたAV女優が知り合いの女の子にちょっと似ていたんだ。強調したいのは、この時は「ちょっと似ている」レベルで、その女の子がAV女優だとは到底思えないレベルだという事と、僕はその女の子の事を好きでも何でも無かったという事かな。
古林:それで、どうなんだよ?
形霧:だが、やはりちょっと似ていたんだ。だからそのAVでオナニーした僕は翌日その女の子に直面すると少しドキドキした。
古林:ぷっ!本当かよ?
形霧:本当さ。だが、そのドキドキ感が結構心地良かったのさ。
古林:へー。
形霧:だからそのドキドキ感を他でも再現できないものかと、これまた好きでも何でも無い他の女の子の知り合いに、ちょっとだけ似ているAV女優が出演しているエロビデオを使って同じ事をしてみたのさ。そしたらまた!
古林:また?
形霧:ちょっとしたドキドキ感が僕の心に発生したのさ。



古林:お前変態だよ!!
形霧:なんとでも言うが良いさ。だが、これが「新しいアダルトビデオの楽しみ方」さ。
古林:そんな変態な事したくねぇよ!
形霧:だが、これは一歩進んだアダルトビデオの楽しみ方だよ。しかも全て自分の心の持ちよう次第だから、誰にも迷惑をかける訳じゃない!僕はこれを「アダルトビデオ・アドバンス」と名づけました。
古林:ゲームボーイ・アドバンスからとったんだろ!
形霧:まあ悪い事言わないから、君も一度やってみなよ。良いかい、変態って概念はただ、従来の常識的な価値観に合わないってだけの事さ。君も「オナニーなんて絶対しない」なんて言うキリスト教徒を変人だとおもうだろ?
古林:ま、まあな。
形霧:僕から見ればこんな精神性の高いアダルトビデオの使用法を「変態だ」という君が変人に見えるね。
古林:うーん、なんかそれもどっかで聞いた事のあるフレーズだなぁ……。
形霧:もっと君も貪欲に「高み」を、新しい「地平線」を目指しなよ。
古林:……オナニーの「高み」なんてちょっと目指したくないなぁ。
形霧:でも新しい「ドキドキ感」が楽しめるよ。
古林:……うーん。



イルカのおねえさん:はい、そこでジャンプ、ジャンプ!そこ、何やってんの?
古林:ドキドキドキドキ……。
イルカのおねえさん:このイルカ本当にキモいわ……。