「スーツのボタンって全部留めてはいけないんですか」「3つボタンだと真ん中を留めるんですか」「では、中に着るベストは」――。このような「スーツのボタン問題」に関するご質問をよくいただきます。スーツにまつわるボタンの留め方は意外に複雑で、迷ってしまうポイントです。皆さまはその「マナー」をご存知ですか。
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■「アンボタンマナー」というルール
「へえ、『マナー』と呼ぶのね」
「アンボタンマナー」という言葉をはじめて知ったときの私の感想です。「アンダーボタンマナー」とも呼ばれるこのルールは、ボタンがついているジャケットやベストの「一番下のボタンをはずす(unbutton)」ことを指します。
つまり、ジャケットやベストの一番下のボタンは留めないことが原則なのです。もともと一番下のボタンは「飾り」と位置づけられます。このため、留めるとスーツのシルエットが崩れる、苦しい、余計なシワが入る――ことから「留めてはいけない」というマナーとして、認識されているようです。
「アンボタンマナー」と教えてもらうまでは私も「一番下は外すもの。全部留めていたら野暮(やぼ)」といった程度の認識でしたが、ダンディーな男性社会では歴然としたルールであったわけです。
■スーツのシルエットを美しくみせる
一番下を外し、腰からヒップにかけてのラインが広がるようにすることで、ウエストに「くびれ」が生まれ、それがスーツ姿の男性のシルエットをきれいに見せます。
ときどき、それを知らずに全部のボタンを留めてしまっている人を見かけますが、一番下のボタンホールが引っ張られて、余計なシワが入ってしまっています。
一番下まで留めると、足さばきにも影響が出そうですし、それらの合理的な理由からも「留めてはダメ」となったのでしょう。