Best New Entry受賞店をご紹介
2025年1月29日に発表された「The Tabelog Award 2025」。初めてノミネートされた店舗の中でも特に「食べログユーザーから注目されている店」に贈られる「Best New Entry」を受賞したお店を紹介していく本連載。今回はオープンして12年目で初ノミネート、そして「Best New Entry」と「Silver」を受賞した「とり茶太郎」をご紹介。
渋谷で12年続く人気焼き鳥店
渋谷の中でも駅から少し歩く場所にある鶯谷町は、高級マンションや一軒家のある住宅街。そこに住む祖母の家だったという民家を改装して開業したのが「とり茶太郎」。2013年のオープン以来少しずつ進化を重ね、多くの焼き鳥好きを魅了し続けている。しっとりした格子戸に白い暖簾、植木の緑の風情に情緒を感じる佇まいは、渋谷という賑やかな街にいることを忘れてしまう。
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木目が目に優しい店内はカウンターのみ。しかし空間を広くとっているのでゆったりとしている。照明を抑えたカウンターの内側は、余分なものを排除したシンプルな美しさがあり、それが焼き鳥店というよりも、まるで割烹のような美学を感じさせるのだ。
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店主の金子拓也さんは、半世紀愛される西荻「戎」、名店で知られる大塚「蒼天」などで腕を磨いた実力派。その焼き鳥最大の特徴は、素材となる肉への愛の深さにある。これぞと惚れ込んだ素材は、生産者との連携を密に、肥育日数を延ばしてもらうなど、自身が目指す味わいに近づくためのアプローチを欠かさない。
「賞をいただけたことは純粋にうれしいです」。鶏舎と連携したこだわりの仕入れと研究を重ねた焼きの技術とは?
「焼き鳥で質の良い鶏を探す方は多いと思います。でも私のように生産者とやり取りをして、自分に合った鳥を育ててもらうことは少ないのではないでしょうか」と金子さん。納得できる生産者を見つけて足を運び関係を深めるという地道な努力が、他にはないこの店の焼き鳥の味を支えているのだ。
意外なことに「The Tabelog Award」には初エントリーであったが、早くもSilverを受賞するなど、その実力は高く評価されている。受賞に際して金子さんはこう語る。
「お客様に評価していただけたというのは、とてもうれしいことですね。“焼き”に関しては、まだまだ技術を上げていけると自負していますので、もっと腕を磨いていきます。またうちでは生産者さんと一緒になって良い鳥を育てていますので、そうした鳥の良さをもっと広めていきたいですね」
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店では、ホロホロ鳥、名古屋コーチン、比内地鶏、かすみ鴨、やまがた地鶏といった鳥を、その時の調理法や部位によって使い分けている。焼き方は近火の強火で、ガツンと短時間で火を入れる特徴的なスタイル。皮目はパリッと焼けて香ばしく、中の水分を逃がさず焼くので肉はジューシーに仕上がる。
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「最近は遠火で優しく焼き上げる店も増えていますが、それと近火の強火で焼いたものは食べたときの感じ方が全く違います。自分が最初に感動したのが、近火の強火でガッと焼いたものだったので、それを追い求めていますね」と金子さん。
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