連載
女の気持ち
読者の皆様からの投稿欄「女の気持ち」。「男の気持ち」「わたしの気持ち」とともに出来事や悩みなど「時代の心」を映しています。
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「運営側」宣言 宇都宮市・岩上幸代(地方公務員・45歳)
2024/12/24 02:00 539文字光り輝くイルミネーション、街を彩るデコレーション、そして聞こえてくるのは陽気なクリスマスソング……今年もこの季節がやってきた。 カップルが街にあふれるこの時期に、居心地の悪さを感じるのは私だけではないだろう。12月初めから25日までは、毎日が「2人1組でペアを作れ、と言われ気がついたら自分だけが残
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安否確認 神戸市兵庫区・後藤康子(無職・75歳)
2024/12/23 05:08 566文字1日おきに息子の夕飯を作っている。勤め先も住まいも離れているが、週に3回、車で30分以上かけて私の元へ夕飯の総菜を取りに来る。 「ここまでは遠いし、コンビニで買った方が便利やん」と言う私に、「お母さんのんは添加物も入ってないし、なじんだ味やから」と彼は言う。料理は嫌いではない私は、朝から献立を考え
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親不孝娘その後 埼玉県鴻巣市・松永由江(無職・67歳)
2024/12/23 02:01 549文字サークルのグループLINE(ライン)が手紙の話題で盛り上がっているのを見て、長い間返事が書けていないことを思い出しました。 30年以上前、「親不孝娘」と題した私の投稿が本欄に掲載されました。母に優しい言葉がかけられない、と反省する内容でした。 1カ月ほどたったころ、新聞社から電話がありました。「ど
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雑巾掛け 大阪府高槻市・土子美香(パート・54歳)
2024/12/21 05:09 529文字小学校の長期休み明けに、子どもたちは雑巾を学校に持って行きます。ミシンがない家など多くの家庭は雑巾を買って持たせていますが、古い世代の私は、自分で縫って持たせています。 そんなわが家の、勉強も運動もぱっとしない娘ですが、一つだけ人に自慢できることがあります。 それは、学校の掃除で廊下の雑巾掛けを一
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父のお年玉 山口県長門市・渡辺陽子(主婦・74歳)
2024/12/21 05:09 556文字数年前に亡くなった父は90歳近くまで、一人でバスに乗り通院していた。私が退職してからは病院の送迎を引き受けることにした。 初めて付き添った日、診察を終えて会計を済ませようとすると、父はカウンターの端に置かれている募金箱を指さし、500円硬貨を入れるよう促した。募金箱には「東日本大震災募金」とあった
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長い道のり 長崎市・木山典子(72歳)
2024/12/20 05:08 565文字金婚式を迎えた。祝いの席を設けるという娘たちの好意を丁寧に断った。その日は2人で迎えると決めていたからだ。普段より少し豪華な食事を用意して乾杯をした。 京都の実家を出る時の母の言葉がよみがえってくる。「ここには二度と戻ってきたらあかんで」。この地で頑張るしかないと心に誓った。しかし、50年という長
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シオカラトンボ 埼玉県所沢市・樋口和代(主婦・66歳)
2024/12/20 02:01 559文字45年近く付き合いがあった大切な友人の葬儀から帰って2日後。遅い夕食の支度をしていると、何かがシャカシャカと飛ぶ音がする。 見ると食卓の上の天井にはめ込まれた蛍光灯に、トンボがぶつかったり離れたりしながら飛んでいた。最近は外でもあまり見かけないシオカラトンボだった。 どこから入ってきたのかしらと不
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冷蔵庫の搬入 福岡県糸島市・藤田有子(パート勤務・54歳)
2024/12/19 05:13 559文字20年ぶりに冷蔵庫を買い替えることにした。家電店に行くと冷蔵庫の高さは昔より高く、大容量で特に奥行きが広く、大きな鍋が何個も入りそう。私の仕事が休みの日に運んでもらうことにした。 搬入当日は晴れでホッとする。「もうすぐ着きます」の電話を受けてから、門扉と搬入口の窓を全開にして動線にあるじゅうたんを
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正に塞翁が馬 和歌山市・前田志乃生(主婦・72歳)
2024/12/19 05:12 558文字義父を見送った後、一人残った義母が暮らす田舎と自宅を行き来する日々が10年続いた。わずかな田畑を耕し、季節ごとの作物の収穫に喜びと生きがいを感じていた。 それが、今年の夏、田舎通いを突然やめざるを得なくなった。夫が病気になって入院したからだ。家を離れるのを嫌がっていた義母だが、仕方なく義妹の家で暮
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母と野球 長崎県佐世保市・木村輝子(主婦・79歳)
2024/12/18 05:10 555文字野球中継を見ていると、亡くなった母を思い出す。つい最近野球に興味を持ち始めた私と異なり、母は熱心な野球ファンだった。 母は生まれつき体が弱く、医師から50歳まで生きられるかどうかと言われていた。母が寝込む度に、幼い私は埼玉の母の実家に預けられていた。小学生の頃、それまで住んでいた東京から母の実家近
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4月の「第九」 千葉県船橋市・高嶋悦子(無職・92歳)
2024/12/18 02:01 513文字師走になると、あちこちで恒例のようにベートーベンの交響曲第9番(第九)が流れ始める。 私は春らんまんの4月、第九を歌ったことがある。 17年前、息子の友人が所属していた管弦楽団が定期演奏会で第九を演奏することになった。300人の合唱団員の募集があり、今は亡き夫と応募したのだ。 もともと同じ合唱団で
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思案中でーす 和歌山県橋本市・神吉俊子(主婦・74歳)
2024/12/16 05:04 559文字もうすぐ後期高齢者の年齢に突入する。「いつの間に?」というのが実感だ。老化が進む一方で、何のために生きるのかという疑問も浮かぶ。75歳になったら自ら生死を選ぶ社会を描いた映画「PLAN75」を見た時、若い人たちには、老人は邪魔な存在でしかないように感じた。 でも、75歳はまだ元気なのだ。平凡な日常
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アレ歌う? 山口県防府市・道岡加津子(パート・58歳)
2024/12/16 05:03 558文字夫と2人でカラオケに行った。会員登録しているカラオケ店から送られてきたバースデークーポンの使用期限が迫ってきたので、私が誘ったのである。私は前回友人と行ってから10カ月ぶり、夫は何年ぶりか分からないほど久しぶりのカラオケであった。 夫は「声が出るかのう」と言いながら、1曲目を歌い始めた。そうそう、
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時が過ぎて 埼玉県所沢市・小尾明子(パート・67歳)
2024/12/16 02:02 541文字義母が亡くなった。97歳。来年三回忌を迎える。強烈な個性の人だったと思う。 おしゃれでセンスが良かった。義母から譲られた服を私が着ると、必ず「ステキね」と声をかけられた。向学心旺盛だった。90歳を過ぎたころ、隣に外国の人が住むらしいと知り英語の勉強を始めようとしていた。器用で料理上手で常に背筋がピ
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「朝のリレー」 石川県小松市・田辺佐智子(非常勤講師・67歳)
2024/12/14 05:49 546文字45年前、中学校の教師になって初めて、担任したクラスの授業参観があった。教材は谷川俊太郎さんの詩「朝のリレー」。男子生徒の1人がとてもユニークな発言をして、たくさんの保護者が笑い声を立てたのを覚えている。 それからずっと、生徒たちと一緒に谷川俊太郎さんの詩を楽しんできた。彼らが大きな声で元気に朗読
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ほめ育て 北九州市小倉南区・池田典子(主婦・69歳) /福岡
2024/12/14 05:48 531文字9月上旬から週1回3カ月間、地元の交流センターで筆ペン講座を受講した。 年賀状は手書きにこだわるので、私は筆ペンで書いている。講座は定員15人に対し45人の応募があったという。倍率3倍の人気講座だが、運よく受講できた。 講座の先生は80代半ばの男性で、非常に穏やかで優しい口調の方だった。本当に一人
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声 新潟市中央区・平野繁子(無職・62歳)
2024/12/14 02:11 534文字「いい声ですね」 この1年で、よくこう言われるようになった。もちろん初めての経験である。 若いころ、自分の声が好きではなかった。 まず低い。電話で男性に間違われたこともある。そして野太い。高校生のとき、授業中に指名され教科書を読んだ後、先生が言った。「あなた詩吟やってるでしょう?」。そのとき詩吟が
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102歳の好奇心 和歌山県岩出市・津田倭文香(無職・102歳)
2024/12/12 05:41 536文字◇津田倭文香(しずか) 102歳の私は故郷・和歌山県紀の川市から紀の川を隔てた場所に建つ老人ホームでお世話になっている。入居者は、各自の部屋から三度の食事の時だけ食堂に集まり、厨房(ちゅうぼう)の方が作ってくれた真心のこもったごちそうをいただいている。 食堂の前方には大型テレビが据えられ、耳が遠い
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穏やかな日々に 埼玉県川越市・柿沼良子(農業・76歳)
2024/12/12 02:00 533文字今年もあと20日。私にとって忘れられない出来事が二つあった。 一つめは4カ月かけて家を新築同様にリフォームしたこと。住みながらのリフォームで、寝室やキッチンも何回か移動した。日曜日を除く毎日、業者が家の中に入ってきて大きな音を立てていたので、ストレスでかなり参ってしまった。何より飼い猫のお茶々が餌
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別々の人生歩み 大阪府・匿名(パート・67歳)
2024/12/11 05:12 529文字まさか生きている間に会えると思っていなかった人に四十数年ぶりに再会した。遠距離恋愛で、自然に連絡が無くなっていった人だ。 少し前に映画化された「コーヒーが冷めないうちに」という小説のように、現実は変わらないが過去に戻って相手の気持ちを聞いてみることができたらと思うことも時々あった。長い時を経て、「
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思い出ノートの作り方
昔を思い出してノートに書きとめることは脳の活性化にもつながります。公益財団法人「認知症予防財団」の監修の連載です。
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今週の気持ち
投稿コラム「女の気持ち」「男の気持ち」から1本を選び、担当記者が紹介します。