特集
裁判Plus 司法のリアル
事件や紛争の解決を見届ける司法記者は日々、さまざまな裁判に遭遇しています。司法の現場の知られざるエピソードを報告します。
-
少女に懐かれると劣等感が消えた 買春繰り返す性依存症、家族も黙認
2024/12/15 06:01 2394文字100人以上の少女を買春してきた坂上タカヨシ受刑者(40)=仮名=が過去に2回起訴されたことは、家庭や職場でも知られていた。だが、周囲は更生を促せず、黙認状態だった。「性依存症だと分かっていたが、誰にも相談しようと思わなかった」。幼少期に芽生えた劣等感から性行為に過剰に執着した坂上受刑者は、児童買
-
100人以上の少女を買春した理由 元「裏アカ男子」のゆがんだ正義感
2024/12/15 06:00 2526文字約8年で会った未成年の少女は100人以上。SNS(ネット交流サービス)を駆使する「裏アカ男子」として児童買春を続けた坂上タカヨシ受刑者(40)=仮名=は10月、3度目の起訴にして初めて懲役4年6月の実刑判決を受けた。「性交は少女の心の闇を癒やす手段だった」。巧妙に少女たちを手なずけてきた坂上受刑者
-
「おもちゃになるしか」 教師からの性暴力、元教え子の葛藤と告発
2024/12/9 15:04 2352文字「おもちゃになるしかありませんでした」 教え子に性的暴行を加えてけがをさせた罪に問われた元中学校長の裁判員裁判が東京地裁で開かれた。 教え子の女性は、かつて受けたという性暴力の実相を法廷で証言した。 傍聴席や被告の視線を遮るついたての向こうから、抑揚のない声で、淡々と。 ◇口実は、体のメンテナンス
-
立ち小便見つかり会社クビは重い? 司法が真剣に考えた「社会通念」
2024/11/29 05:30 2272文字2年前の夏のことだった。 東京都内に本社を置く運送会社に勤務していた男性運転手は、早朝からトレーラーで荷物を運んでいた。 いつもと変わらない一日の始まり。だが、男性の人生は、その日の軽率な行為によって暗転する。 「立ち小便」だ。 ◇急激な尿意、トイレは使えず 男性は50代。高校を卒業し、18歳から
-
「指紋一致」と強盗犯に 「冤罪ラッパー」が歌うこの国の不条理
2024/11/26 05:30 2943文字うその「自白」で容疑を認めてしまう冤罪(えんざい)事件なんて遠い世界の出来事だと思っていた。 前途洋々のミュージシャンだった男性は、身に覚えのない強盗事件で逮捕され、後に無罪が確定した。 保釈されるまでの302日間、言いようのない苦しみと孤独を味わった。 人生の歯車は大きく狂ったが、男性は再びマイ
-
-
国民審査2024
34年ぶりの「異変」 国民審査で浮かんだ「民意」の正体
2024/11/12 05:30 2152文字司法の最終判断を担う最高裁裁判官を辞めさせるべきか有権者が意思表示できる2024年の国民審査に、「異変」があった。 形骸化が叫ばれて久しい制度だが、辞めさせたいとする票の割合である罷免率が34年ぶりの高水準に達していた。 ウェブ、SNS(ネット交流サービス)、そしてドラマ――。裁判官や専門家への取
-
「幸せ」感じた直後に…息子に手をかけたシングルマザーの罪と罰
2024/10/24 05:30 3261文字「ママ、苦しいよ」 「ごめんね。ママと一緒に死んでくれないかな」 当時9歳だった長男の首を絞めて殺害しようとしたとして、シングルマザーの女性が殺人未遂罪に問われた。長男には軽度の知的障害があり、女性の両親はいずれも高齢で重い介護が必要だった。育児と介護を同時に担う「ダブルケア」後に、無理心中を図っ
-
「経歴盛るのが当たり前」 新卒SEが派遣スクールで見た業界の闇
2024/10/4 05:00 2103文字ばれるのは時間の問題だった。 システムエンジニア(SE)派遣会社に新卒で入社した20代の男性は「実務経験5年のSE」として取引先に送り込まれた。 実際は素人同然で、トイレの個室にこもっては専門用語を検索する日々が続いた。周囲からの冷ややかな視線に耐えかね、程なく退職する羽目に。 会社の対応に疑問を
-
無実の叫び 袴田事件
証拠開示拒む検察 埋もれる無罪の証拠 「再審格差」の現状、なぜ
2024/9/30 09:00 1469文字58年前に逮捕された袴田巌さんにようやく再審無罪判決が言い渡された。事件が残した教訓を検証する。 【関連記事】 “殺人犯の姉”と言われても 「神の国」に向かう弟を救った半生 「殺したのは私です」 警察が「王様」と誇った袴田巌さんの虚偽自白 袴田さんの姿が突きつける死刑存廃の問い 制度の行方、カギ
-
無実の叫び 袴田事件
袴田さんの姿が突きつける死刑存廃の問い 制度の行方、カギは世論
2024/9/29 08:09 1554文字58年前に逮捕された袴田巌さんにようやく再審無罪判決が言い渡された。事件が残した教訓を検証する。 【関連記事】 “殺人犯の姉”と言われても 「神の国」に向かう弟を救った半生 「殺したのは私です」 警察が「王様」と誇った袴田巌さんの虚偽自白 無罪判決が言い渡された法廷に、いるべき人の姿はなかった。
-
-
無実の叫び 袴田事件
「殺したのは私です」 警察が「王様」と誇った袴田巌さんの虚偽自白
2024/9/28 07:00 1943文字58年前に逮捕された袴田巌さんにようやく再審無罪判決が言い渡された。事件が残した教訓を検証する。 【関連記事】 “殺人犯の姉”と言われても 「神の国」に向かう弟を救った半生 袴田さんの姿が突きつける死刑存廃の問い 制度の行方、カギは世論 静岡県警清水署の取調室は近くに幹線道路が走っていた。防音設備
-
無実の叫び 袴田事件
“殺人犯の姉”と言われても 「神の国」に向かう弟を救った半生
2024/9/26 14:05 2247文字ずっとずっと待ち望んでいた言葉だった。 被告人は無罪――。 26日午後、静岡地裁。国井恒志裁判長が一息に主文を告げると、傍聴席から拍手が起こった。証言台の席に座っていた袴田巌さん(88)の姉秀子さん(91)は、深く頭を下げて一礼。その後、自席に戻って弁護団とがっちり握手を交わした。 秀子さんは、精
-
無実の叫び 袴田事件
隠された「死刑囚」の一人息子 袴田巌さんが抱えるもう一つの悲劇
2024/9/19 12:00 2250文字1966年6月に静岡県清水市(現静岡市)で4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)には一人息子がいる。事件で生き別れになり、58年間、断絶状態にある。 やり直しの裁判(再審)の判決を控えた9月上旬の晩。浜松市の自宅にいた袴田さんの姉秀子さん(91)は、袴田さんから手のひらサイズのクマの
-
無実の叫び 袴田事件
精神をむしばんだ死刑の恐怖 拘禁症状続く袴田巌さんの日常
2024/9/19 12:00動画あり 1059文字1966年6月に静岡県清水市(現静岡市)で一家4人を殺害したとして、死刑が確定した袴田巌さん(88)に対するやり直しの裁判(再審)の判決が26日、静岡地裁で言い渡される。死刑とされた袴田さんは2014年に47年7カ月ぶりに釈放されたが、超長期の拘禁で精神をむしばまれ、意思疎通が難しい状態が続いてい
-
「ヤクザアパート」と地元で呼ばれ 77歳の女性大家が明かした半生
2024/9/10 06:30 2234文字警察が捜査中の暴力団関係者をアパートから逃がしたとして5月、女性の大家(77)が逮捕された。 女性大家は埼玉県内に約30棟のアパートを所有。行く当てのない人たちばかりを住まわせることから、いくつかの物件は、地元で「ヤクザアパート」と呼ばれていた。 なぜ誰彼問わず入居させたのだろうか。保釈された女性
-
-
「千奈ちゃんが生きた意味…」裁判長の涙 園バス3歳児置き去り死
2024/9/5 05:45 2586文字被告人を禁錮1年4月に処する――。裁判長が主文を読み上げると、満員の傍聴席からどよめきが起こった。 手を握り合っておえつする遺族を前に、裁判長は言葉を続けた。「千奈ちゃんが生きた意味について考えたいと思います」 裁判官が判決言い渡し後、被告に説諭をするのは珍しいことではない。ただ、この日は違った。
-
追跡 公安捜査
「内部告発」をまさかの撤回 取り調べ批判の警官、証人尋問を前に
2024/8/14 06:00 3363文字「内部告発者」は権力に取り込まれてしまったのか。 ある冤罪(えんざい)事件で上司の取り調べを批判する文書を作成していた警官が、裁判に証人として出廷することになった。 しかも、違法な取り調べがなかったと主張する捜査当局側の証人として。 立場を180度転換したようにも見えるこの警官が説明する、その不可
-
突然「盗作」疑う通知文 イラストレーター襲う「トレパク冤罪」
2024/8/11 06:00 1768文字イラストレーターの花邑(はなむら)まいさんの元に、女性漫画家の代理人弁護士から「通知文」が届いたのは2019年6月のことだった。 「作品が花邑さんにトレース(なぞり書き)されている」 初めは、すぐに解ける誤解だと思っていた。しかし、事態が訴訟に発展し、仕事も失うはめになるとは想像だにしていなかった
-
「オーバードーズの原因」 トー横の“売人”が有罪後に向かった先
2024/7/26 06:00 2371文字厚い雲に覆われた、まだ寒い2月のある日だった。 金髪にマスク姿の男性が、東京・小菅の拘置所から姿を現した。両腕には大きな二つの紙袋。裸足にサンダルの足元は、季節外れに見えた。 この日、東京地裁で罰金30万円の有罪判決を受け、釈放された。新宿・歌舞伎町で市販薬の過剰摂取を繰り返した末に、他人に薬を無
-
取り調べで机たたき、怒鳴る検事たち 上司も部下も、法廷で同じ“釈明”
2024/7/18 06:30 2193文字ドンッ。証言台をたたく鈍い音が法廷に響いた。検事は4年半前の取り調べの様子を再現し、相手を怒鳴った理由を語った。くしくも、かつて法廷で同じように問い詰められた上司の発言と重なっていた。 6月11日、大阪地裁の703号法廷で、検事は国が訴えられた裁判の証人として証言台の前に座っていた。40人ほどが傍
-