平凡な中年サラリーマンの佐藤蛍太はある日、姪っ子の光莉にダンジョンでの無双を配信され「新宿バット」として大バズリし、無自覚ながら、有名配信者にまで注目されることになってしまう。一方で、蛍太が勤務している出版社・冒険書房の業績が悪化し、大手配信事務所であるDOOMプロに営業をかけることに。高圧的に枕営業を持ちかける相手から、後輩の鵜飼を守った蛍太は、その日のうちに電車で痴漢の冤罪をかけられてしまう。ストレスは一気にMAXに至り、欲望にまみれた魔物をかっ飛ばすべく<淫魔宮>へと繰り出した蛍太は、国民的歌姫と出会うのだが、その一部始終もまたヒカリに配信されていて、再び大バズリし!?
“私人逮捕系配信者”、“ダンジョン”、“大手配信事務所”などの現実にある配信界隈の時事ネタと、現代日本×ダンジョンものを掛け合わせた作品ですけれど、新たに登場した私人逮捕系配信者やそれに連なるキャラクターやプロフィールのディテールが凄く丁寧に書かれていて、新宿バット VS 私人逮捕系配信者の対立構造となったときの展開からストーリー終盤にかけて平凡なサラリーマンの主人公(新宿バット)が悪役を文字通り叩き潰す流れが最高に痛快でした。
これまでダンジョン配信ものの作品はいくつも読んできましたけれど、“三河ごーすと”さんが書くとなるとこういった作品に仕上げることができるのかと改めて感嘆しました。
たとえば、私人逮捕系配信者がどういった存在であるのか、登録者〇万人規模のアカウントが持つ醜聞の拡散力などなど。私人逮捕系配信者というキャラクターそのものだけでなく、それに付随する細かい要素も情報として作品の展開に組み込んでいて楽しめるところが凄く良かったです。