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中国ドラマ女優放談 Vol. 1(前編)
中国ドラマを彩る女優たち|ヤン・ミー、ティファニー・タン、リウ・シーシーはなぜファンの心をつかむのか?
1980年代生まれのトップ女優たち──楊冪、唐嫣、劉詩詩
2025年2月21日 18:15 12
近年、日本でファンを増やし続けている中国ドラマ。豪華絢爛な宮廷劇や、幻想的な世界が舞台のファンタジー、等身大の恋愛を描いた現代劇など、そこで生きる女性を見事に演じる女優たちに心つかまれる人も少なくない。
連載「中国ドラマ女優放談」では、作品を彩る女優たちにフォーカス。1回目となる今回は、ライターの小酒真由子と島田亜希子に
取材・
誰しもの心の中にMyヤン・ミー(楊冪)がいるんじゃないか(島田)
──以前、お二人には「中国ドラマを彩る女優さん」というテーマで、1990年代生まれの女優さんたちの魅力を語っていただきました。今回、連載第1回ということで、日本でも人気の高い1980年代生まれのトップ女優、ヤン・ミー(楊冪)、ティファニー・タン(唐嫣)、リウ・シーシー(劉詩詩)、チャオ・リーイン(趙麗穎)、リウ・イーフェイ(劉亦菲)、アンジェラベイビー(楊穎)にスポットを当てたいと思います。Weiboのフォロワー数もそれぞれすごい数字ですが、彼女たちにはどんな印象を持っていますか?
島田亜希子 デビュー当時はアイドル枠だったのかもしれないですけど、今はプロデュース業をしたり、若手を育てる立場になっていたり、役者以外の場に活躍を広げていて、次のステージに進んだ存在という印象がありますね。
小酒真由子 なんとなく2000年代ぐらいまでは、中国女優というと、文芸映画や香港映画に出ている演技派の女優さんのイメージが強かった気がするんです。でも2010年代になり、中国ドラマが広く海外に輸出されるようになってからは、ドラマと一緒に育ってきた女優さんが、海を越えて認知され日本でも人気を集めるようになった。今回の6人も中国時代劇が出世作と言える人が多いですが、彼女たちの活躍とともに中国ドラマもどんどんメジャーになっていったので、中国ドラマの顔みたいな印象がありますね。
島田 業界を牽引する存在ですよね。ライフスタイルや、キャリアの積み方といった部分でもファンにとって憧れの対象で、ロールモデルのようなイメージもあります。
──お二人は特に書く機会が多い女優さんはいますか?
小酒 どの人も主演作が上陸してくると書く機会が増えますね。
島田 私はヤン・ミー(楊冪)ですかね。かつて“華流ブーム”に火がついた頃から、彼女の作品を担当することが多かったです。
──1986年9月12日生まれのヤン・ミーは、1985年以降に生まれた「85后」と呼ばれる女優さんを代表する1人です。Weiboのフォロワー数はなんと約1億1300万(2025年2月時点)。この数字からも、人気の高さがうかがえますが、彼女にはどんな印象を持っていますか?
小酒 私が最初にヤン・ミーのことをちゃんと認識したのは、「宮 パレス ~時をかける宮女~」だったと思うんです。中国時代劇版「流星花園~花より男子~」と言われて、中国で大ヒットしていた。かわいらしくて個性のある女優さんだなと思いました。作品選びがうまいので、そのあとはもうどんどん彼女の主演作が日本に入ってきましたね。演技力はもちろん、プロデュース能力やビジネスの才覚まであって、こういう作品が今は流行るみたいなことを見抜くセンスもあるのかなと。相手役選びも上手な印象があるんです。すごく才能がある人だなと思いますね。あとは、子役からトップ女優になった元祖という感じもあって。中国は子役でも潰れてしまうことなく名門校に進む人が多いですが、彼女も名門の北京電影学院に進んで、エリート街道を歩んでいる。
島田 子役から長くやっていることもあって、好きとか嫌いじゃなくて、誰しもの心の中にMyヤン・ミーがいるんじゃないかと思うんです(笑)。この作品のヤン・ミーが私は大好きとか、あの作品でファンになったとか、あのドラマはそうでもなかったとか、この役は嫌いとか。そういう意味でも、国民的女優と言えるのかなと感じますね。彼女は中国のエンタメ業界に足を着けて、後進を育成したりもしているので、今回の6人の中だと、国内発展型のイメージ。業界を牽引している女優さんですよね。
小酒 だから有能なキャリアウーマン役がハマるんですよね。場合によっては彼女の演じるキャラクターってきつく見えることもあるんですが、かわいらしさも出せるので、ちょっと小悪魔的というか。キリッとしているのに、愛らしさも持ち合わせているところが反則で、これは男性がコロッとなるよなと(笑)。シュー・カイ(許凱)と共演した「マリアージュ・ブラン~嘘つき弁護士の愛の法則~」を観たときにそれを強く感じましたね。ゴン・ジュン(龔俊)と共演した「恋狐妖伝(れんこようでん)~ファースト・ラブ~」で演じた役も、姉御のキリッとした感じが出ていて、歳下男子を惑わせていました。
島田 わりと男の人に食ってかかる役が多いですよね。物申すというか、負けてないというか。
小酒 そうそう。堂々と「あなたのここが悪い!」って。ヤン・ミーはそういう役がすごいハマるので、テレビの前で自分が怒られている気持ちになることも(笑)
島田 「我告诉你」ってすぐ言うんですよね(笑)。そんな「告诉」しなくてもみたいな。
一同 (笑)
※編集部注:「我告诉你」は「言っておくけど」といったような意味
小酒 でもそれは必ずしも悪いことじゃないんですよね。「私のキライな翻訳官」では生真面目に通訳の道を目指すヒロインを演じているんですが、すごくストイックで、自分にも他人にも厳しいキャラクター。屈辱的な思いをしたときに、日本だと黙ってしまうところを、ちゃんと自分の気持ちを言う。そういう女性の役がぴったり。当時、日本にはこういうヒロインはいないなと文化の違いを感じながら観ていました。
──気が強い役は魅力的に見せるのが難しい場合もありますよね。
小酒 ヤン・ミーの場合は、そこにかわいらしさを表現できるところが強いんじゃないかなと思いますね。
島田 そうそう。チャーミングなんですよね。
小酒 「永遠の桃花~三生三世~」のヒロインも青丘の女帝としての貫禄があるけど、やっぱりかわいらしかった。子役から鍛えてきているから、魅せ方がうまいなと思います。
編集部注:青丘は中国神話や伝説の中に登場する狐族が生活する地
──何年にもわたって支持を集め続けていますが、その魅力をどう捉えていますか?
島田 キャリアを積んで、どんどん実力が上がっているけれど、劇的なイメチェンをせずに、印象が大きく変わらないというのが1つの理由なんじゃないかなと。結婚しても、子供を産んでも、全然変わらない。ブレなさみたいなのが強いなと感じます。ヤン・ミーなら間違いないという安心感がありますし、アクションもやっぱりうまいので、「ファンタジー時代劇は……」と思っている人でも、一目置くというか。そういうものを彼女は持っているなと思います。
小酒 トータル的に高い才能を持っているんですよね。業界をリードする女優さんなので、業界人にも尊敬されていて、そういう存在感が突出している。それが熱い支持にもつながっていると思います。後進を育てるのも、自分にある程度余裕がないとできないことなので、すごいなと。あとは、ドレスアップしてイベントに登場するときに、めちゃめちゃオーラが出ている。圧がすごいです(笑)。
──彼女の出演作の中でお薦めの作品はありますか?
島田 私は「斛珠<コクジュ>夫人~真珠の涙~」です。ファンタジー時代劇とラブ史劇で押さえておくべきポイントが全部入っている。男装あり、師父への恋あり、最後には国を守るみたいな、ヤン・ミーが今までファンタジー時代劇でやってきたいろんな要素がわーっと詰まっている感じがして。こういう壮大で、大ヒットを意識した作品をやるのは最後なのかもなと。演じるキャラクターもヤン・ミーらしさが存分に生きていました。あとは、現代ドラマでお薦めするなら「マリアージュ・ブラン~嘘つき弁護士の愛の法則~」ですね。
小酒 私が個人的に思い入れがあるのは、「扶揺(フーヤオ)~伝説の皇后~」なんですよね。男装あり、アクションあり、ロードムービーの要素もあって、最後は偉くなるみたいな、要素てんこ盛り(笑)。相手役が台湾出身のイーサン・ルアン(阮經天)で、新鮮味があったのもよかった。「永遠の桃花~三生三世~」で相手役だったマーク・チャオ(趙又廷)も台湾の俳優さんですが、彼の場合は、いつもとまた違うファンタジー仕様のマーク・チャオだったんです。でもイーサンはいつものイーサンという感じで、ヤン・ミーとイーサンのケミストリーが面白かった。しかもクライマックスがめちゃくちゃすごくないですか?
島田 そうそう! 世界が爆発するみたいな。
小酒 もうとんでもないパワーで。ヤン・ミーとイーサンの熱演が忘れられないですね。観ていてすごいカロリーを消費しました! 日本だとヤン・ミーと言えば、まずは「永遠の桃花~三生三世~」という感じですが、「扶揺」もお薦めしたいです。
島田 彼女は大きい事務所から離れたので、自分自身を今後どうプロデュースしていくのかもすごく楽しみです。これからの彼女も、ウォッチャーとしては追っていきたいなと。新作の「生万物」は、農村部で生きる女性を描いたヒューマンドラマだそうなんですが、チャオ・リーイン(趙麗穎)が主演した「輝け!シンフー~幸福到万家~」も農村が舞台でヒットしていたから、公開前から比較されて「生万物」はどうなるのか?って盛り上がっているみたいで。どんな作品なのか気になっています。
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