相次ぐ下請法違反…自動車業界の金型保管、環境づくり急務に
自動車業界で金型保管に関する環境づくりが急務となっている。日本自動車工業会(自工会)は自主行動計画を改訂し、発注企業が受注企業に金型を長期保管させる際の費用の支払いを明記した。日本自動車部品工業会(部工会)は保管費の適正負担に取り組む手順の周知に力を入れる。金型の長期無償保管は下請法に抵触する恐れがあり、最近でも違反行為が相次ぐ。いかに浸透させるかがサプライチェーン(供給網)の強靱化(きょうじんか)のカギとなる。(編集委員・村上毅)

自工会が改訂したのは「適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」と、計画の実効性を高めるための「徹底プラン」。この中で量産終了後の金型保管について「自社に型の所有権があり、長期間発注を行わず取引先に型を保管してもらう場合に保管に要する費用を支払う」と記載した。取引先に金型の所有権があっても「事実上自社の指示に基づき取引先が型を保管する場合」や、型の廃棄に伴い「残置生産の指示を行う場合」も費用を負担するとした。
部工会では量産終了後の金型保管費について、サプライチェーン全体でコストを適正に負担するため「型保管費に関する困り事を能動的に声掛けし仕入れ先と協議の場を持つ」ことや「型保管費支払い対象や保管費査定の基準(目安)を示し、仕入れ先および調達部門双方での協議を促す」などの手順や事例をまとめてホームページ(HP)などで公開。説明会などを開催して周知に努めている。
金型保管については長年、発注側と受注側で金型の廃棄や保管費用などの管理が曖昧で、部品量産終了後も補給部品を供給するため受注側で金型を長期保管する事例が問題となっていた。
政府も「型取引の適正化推進協議会」などを通じ金型取引の適正化を議論し、2019年に金型取引のルールを策定するなど対策に取り組んでいる。ただ、所有者や保管状況の管理が煩雑なことなどが障壁となり、金型の長期無償保管に関する違反行為は相次いでいる。
24年7月にトヨタ自動車子会社のトヨタカスタマイジング&ディベロップメント(横浜市港北区)が、25年2月には中央発條と日産自動車子会社の愛知機械工業(名古屋市熱田区)がそれぞれ公正取引委員会から金型の長期無償保管で下請法違反の勧告を受けた。
自工会や部工会では自主行動計画改訂や保管費の適正負担の取り組みの周知、適正な価格転嫁を掲げる「パートナーシップ構築宣言」などを複合的に組み合わせ、適正取引の浸透につなげる考えだ。
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