「仕事を頑張っているのに認められず、人事評価が低い」──そうした状況に陥り、頑張り続ける気力を失ってしまう人もいるようです。そんなときは、なぜそうなってしまったのかを分析することから、状況の改善を図りましょう。人事評価が低くて頑張れない原因、それによる今後の影響、頑張れるようになるための改善策について、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんにアドバイスをいただきました。
目次
企業の人事評価とは?
「人事評価制度」とは、企業が従業員の「業績」「能力」「情意(意欲・姿勢・行動など)」などを評価し、報酬制度(給与・賞与など)や等級制度(昇進・昇格など)、異動、人材育成に反映する仕組みを指します。
「評価制度」といえば、「報酬や等級に反映させるための人事査定でしょう?」と狭義に捉えられがちですが、それだけではありません。本来の目的は「経営目標の達成」であり、企業が目指す方向に必要な人材、売上利益の向上に貢献できる人材の育成を目指す狙いがあります。また、「どのような姿勢や行動を良しとするか」を示すことで、その会社らしい文化の醸成を図ることも目的の一つです。
人事評価が低いから頑張りたくないと思ってしまう原因
「人事評価が低いから頑張りたくない」という状況は、分解するとさまざまな原因が考えられます。以下に例を挙げますので、適切な対処をするためにも、自身がどれに当てはまるのかを参考にしてみましょう。
人事評価制度に納得できない
人事評価制度そのものに対して納得できない、評価基準設定のプロセスや運用に対して「おかしい」と思うこともあるでしょう。
例えば、営業は売上数字が昇給や賞与へ反映される一方、管理部門スタッフは何をもって評価されるのか、高い評価を得るためには何をすればいいのかが不透明であるといったケースがあります。このように、部門や職種によって不公平感があり、努力目標を立てられずにモチベーションが下がってしまうケースがあります。
また、評価制度はあるものの、正当な運用がなされていない職場も見られます。上司や経営陣の主観で評価され、「気に入られたメンバー」「相性がいいメンバー」ばかりが昇格・昇進をしている現状に直面すると、頑張る気力がそがれるのも無理はないでしょう。
自分の評価結果に納得できない
自己評価と、上司・会社の評価の間にズレを感じるケースも少なくありません。自分なりに仕事で成果を出してきたつもりなのに、上司や会社からの評価が低く、処遇などに反映されないと感じると、「成果を出しても意味がない」と頑張らなくなってしまうかもしれません。
例えば、新たなプロジェクトが立ち上がると、誰かが通常業務に加えて、その推進を担わなければならないことがあります。失敗のリスクを感じながらも、「会社のため」にリーダーを買って出て、何とかプロジェクトを完遂。ところが、そんなチャレンジをした自分よりも、通常業務だけを続けて成果を出した社員の方が高く評価され、自分よりも先に昇進したとなれば、納得できるものではないでしょう。
あるいは、評価者(上司など)に対して不信感を抱いている、評価プロセスに疑問を感じているといった場合も、モヤモヤした気分を抱えてしまいがちです。
努力しても無駄だと感じている
「会社の業績が厳しい」「所属部門が斜陽」といった状況では、そもそも賞与や昇給で還元する原資が乏しく、人事評価も全体的に厳しめになることがあります。
「上司も先輩も、何年もずっと頑張っているのに、年収が上がるどころか下がっているようだ」と感じ、今後も業績が好転すると期待できなければ、「努力しても無駄」と感じてしまうかしれません。
一方、自分自身に原因があることを認識しているケースもあります。高い目標を課され、自分なりに頑張っていても達成できないような状況です。「そもそも自分はこの仕事に向いていない。苦手だ」「報酬が低いとはいえ、今のままでもかまわない」とあきらめ、努力する意欲が湧かないこともあるでしょう。
上司とうまくコミュニケーションがとれていない
上司とのコミュニケーションが不十分で、目標に対する目線が合っていない可能性もあります。つまり、「自分はこれを期待されている」と思っていても、実際に上司が期待しているのは別のことであるケースも見られます。
あるいは、上司が現場の状況を把握しておらず、行動や成果に対して適切なフィードバックができないこともあるでしょう。このように、状況や課題、目的を共有できていないため、評価項目や評価基準についてのすり合わせもできていないケースがあります。
人事評価が低いから頑張らないとどんな影響がある?
人事評価に納得がいかないからといって頑張らずにいると、どうなるのでしょうか。もちろん状況によりますが、以下のような影響があると考えられます。
給与や賞与が上がらない
頑張っていないのに、自然に成果が上がることは、よほどラッキーなことが起こらないかぎりないでしょう。成果を出さなければ、給与アップは望めず、賞与額にも期待は持てません。
昇進できない
頑張らずに評価が低いままでは、昇進のチャンスをつかめないでしょう。「出世しなくてもいい」「リーダーやマネジャーにならなくてもかまわない」などと考える人もいるでしょうが、同期や後輩が先に昇進していき、自分が指示やマネジメントを受ける立場になると、居心地の悪さを感じようになるかもしれません。
希望する仕事にアサインされない
「やりたい仕事ができるなら頑張るのに」と思う人もいるかもしれません。しかし、目の前の仕事に注力せず、成果も挙げられなければ、希望する仕事にアサインされるチャンスも巡ってくる可能性は低いでしょう。
人事評価を上げて頑張れるようにするための改善策
納得のいく人事評価を得て、頑張るモチベーションを復活させるために、次の改善策を参考に自分にあった取り組みを行ってみましょう。
人事評価につながる成果を上げるための目標を立てる
まず、「会社は自分に何を求めているのか」を把握するところから始めましょう。上司や人事担当者に人事評価制度の評価項目・評価基準などの詳細を確認します。
例えば、会社は入社3年目の社員に対し、担当職務をひととおりこなせると同時に、「新人の育成」「チームワークの強化」を期待し、その行動が一定水準に達していたら主任に昇格させることを想定していたとします。一方、自分は単独で成果を挙げることだけに集中していると、会社の期待に応えていないことになります。
「何をすれば評価されるのか」をつかみ、行動目標を立てましょう。
上司とのコミュニケーションを増やし、意図をくみ取る
会社が定める評価基準とは別に、自身が所属する組織において、上長がメンバーに何を期待しているかを理解しましょう。そのためには、上司とのコミュニケーションを増やすことが大切です。
上司との1on1などの機会には、自身のキャリアプランについても積極的に話すといいでしょう。例えば、「将来的には○○部門で○○業務を手がけたい。そのために今、どういったアクションをとればいいでしょうか?」などと、相談してみてはいかがでしょうか。
それによって中長期目標も含めた目標を共有できれば、適切な人事評価にもつながります。また、希望の実現につながるようなプロジェクトにアサインしてもらえるなど、チャンスを得やすくなるかもしれません。
担当業務のスキルを上げる努力をする
担当業務で成果を挙げられるよう、スキルアップを図りましょう。例えば、「成果を出している同僚などから学ぶ」「担当業務に活かせる資格を取得する」「社内外の研修に参加する」など。
学んだことが仕事に活かせて成果につながるほか、向上心や意欲が評価される可能性もあります。
頑張っても人事評価に納得できない場合は「評価してくれる環境」へ移る選択も
頑張ってみても、やはり納得のいく人事評価を得られない場合は、評価してくれる環境を探して移るのも一つの方法です。次のような道を探ってみましょう。
社内異動を希望する
営業職を例にとると、「A部門の商材は合わなかったが、B部門の商材なら合う」「A部門の営業手法は苦手だったが、B部門の営業手法なら得意」など、部門が変わることで活躍できるケースもあります。
前の部署で人事評価はつきまとうため、異動しても最初はやりづらさがあるかもしれませんが、適性やキャリアビジョンなどにマッチする部門を選択すること、そして学ぶ意欲をしっかり見せることで、道が拓けるかもしれません。
転職を検討する
A社では評価が低かった人が、B社に移ったら能力が発揮されて活躍するといったケースはよくあります。企業・事業の成長フェーズ、人材に対する考え方、組織風土などによって、従業員に求めるものは異なります。自分自身の強みや持ち味が活かせる企業を探してみてはいかがでしょうか。
組織人事コンサルティングSeguros
代表コンサルタント粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。