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旅にグレイハウンド

西海岸をグレイハウンドで行く

バンクーバー・ビール・ツアー

 

 

バンクーバーはビールの街。ビールの醸造所、すなわちブルワリーがそこかしこに点在している。それはもう日本では考えられないほどの自然さで。

だからすっと入ったパブで、タップ(生)で置いているビールはほとんどが地元のもので、信じられないくらい新鮮だ。ぴんぴんに冷えたビールを喉に流し込むと、アサヒやサッポロとは違う爽やかで軽いホップの香りが鼻を抜ける。

この間、日本料理屋さん(中国人経営)で久しぶりにサッポロの缶ビールを飲んだら、その鋭さとビターな風味に舌がぴりぴりして驚いた。しかしお魚のお刺身や味の濃い焼き肉といただくならこれだよなあと思い出した。海の香りやタレの塩辛さに負けない、食事のためのビール。

そう、死ぬまで飲み物3種類しか飲めないとしたらどうするという問いに「お白湯とコーヒーと、ビール」と答えるくらいにはビールが好きなものとして、ブルワリーなんて行かずにいられない。9月から足掛け6ヶ月滞在して、訪れたブルワリーについて今日は少し紹介しようと思う。

 

1,Strange Fellows Brewing

住所: 1345 Clark Dr, Vancouver

このブルワリーは、ビール屋さんで働く日本の友達のおすすめだった。それでなくとも、以前ピザ屋さんでこのブルワリーのビールが置いてあり、素晴らしくおいしかったので訪れた。

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そのときおいしかったのは、TALISMAN West Coast Pale Aleという銘柄。それでブルワリーで喜び勇んでフライト(テイスティング用にショットグラスくらいのサイズでいろんな種類のビールを選べる)で注文すると、ピザ屋さんで感じた喜びは訪れなかった。それでもおいしかったけど!

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友達に報告したラインを見直していると、どうやらGuardianというIPAが美味しかったようだった。

サラミなんかを摘みながら飲んだ。店内はハロウィン仕様で、イベントごともたくさんやっているみたいだった。

ビールの銘柄も、ハロウィンにちなんでおどろおどろしいものがいくつかあった。"Black mail"とか。

 

2,Whistle Buoy Brewing Company

住所: Market Square, Lower Couryard, #63, 560 Johnson St, Victoria

いきなり番外編なのだが、バンクーバー島というフェリーで2時間の島の、ビクトリアという美しい街で訪れたブルワリー。

これは住所の通りマーケットスクエアというさまざまなお店の入った施設にある。友達と観光に来ていて、お手洗いを借りる際に発見した。

「人気のやつを上からくれ!」と注文したフライト。ひとつなんか変わった味のやつがあったような気がする。

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しかし覚えているのは、手作りのリングトスゲームがあり、友達と延々それを遊んだこと。目の前には飲みたいビールがあり、それを賭けているわけでもないのに白熱して遊んだ。

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ちなみにこれの名前なんて知るはずもなく、グーグルで「リングが引っかかったら勝ちのゲーム」と調べると「リングトスゲーム」という名前が画像付きででてきたのだった。便利なインターネット。

この日はすこぶる雨で、雨のビクトリアでやることのうち正しいこととしてビールを飲んだ。楽しい日帰り旅行だった。

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よく考えると、ほとんどの場合ビールの味を覚えていない。その場でメモすればよいのだろうが、たいてい好きな友達と飲んでいるので、その場で感想を分かち合ってしまい、忘れる。

 

3, 33 Acres Brewing Company

住所: 15 W 8th Ave, Vancouver

この日はクラスメイトと4人でお昼から集合。色々めぐるためだ。点在しているとはいえ、いちおうブルワリーの集結しているエリアというのはあり、そのうちMain Streetという道を中心にした何軒かを回る日だった。まず訪れたのが33 Acresで、ここはしょうじきベストだった!

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お店の雰囲気はカフェみたいで、なるほどコーヒーやサンドイッチなども置いてある。缶バッヂなどのグッズ展開にも力を入れていて、醸造所にそういう概念があるのかはわからないが、今風な感じだった。

とはいえ味は、もう、ぜんぶが美味しい。それぞれ、柑橘類を使ったサワー系のビール好き、ガツンとくる黒ビールのスタウト好き、別になんでもいい子、とラガー大好きな私。フライトで頼むと、いろいろと味わえるので楽しいし、友達の好みも感覚として把握できる。ここのスタウトはコーヒーみたいな風味はありながら爽やかで飲みやすかった。

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これも日本のビール屋さん友達のおすすめ。ぜったいに再訪する。

 

4,Main Street Brewing Co.

住所: 261 E 7th Ave,Vancouver

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メインストリートという、道の名前を冠したブルワリー。テイスティングルームと呼ばれるイートインの座席のすぐそばに巨大なビールの貯蔵庫があり、迫力がある。

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33 Acresと違ってお客の年齢層が高かった。基本的におじさんたち。

だからなのかなんなのか、ビールも苦味が強いようなものが多くて、渋い味がした。

しかしやはり生ビールを飲んでいるぞ、という感慨を強く感じられるいい場所だった。

 

5, Brassneck Brewery

住所: 2148 Main St, Vancouver

この日3軒目となり、いくら度数の低いビール(5%とか)ばかり飲んでいるとはいえ、さすがに酔っ払っていて、あまり覚えていない。

でもツマミに注文したヤムイモのフライが美味しすぎて、追加も頼んでしまった。そして男友達となにかについて口論になり、バンクーバーのビール屋さんで日本語、しかも博多弁(?)と関西弁で大声でバトルをしてしまった。他の2人はビールを飲みながら聴いていた。

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ビールの名前がそれぞれ面白かった。BIG BUSINESSとかPASSIVE AGGRESSIVEとか、いちいち頼んでみたくなる。ビールの名前をつける人は楽しいだろうな。まあ、「たしかにこれはビッグビジネス!」とか、なったことはないんだけれども。

この日はお昼に集まったのに、23時くらいまで飲んでいた。みんな肝臓が強くて助かった。年齢層は50代、30代と私27、あとひとり26歳と幅広かったものの、酒好きというのは胆力があっていいなあと思った。ビールを片手にいろんな話をした。

 

6,Container Brewing Ltd.

住所: 1216 Franklin St, Vancouver

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この日は「女子会」と銘打って、お友達ぜんいんで7人、わらわらと集合。最初はブルワリーを巡りましょうということだったのが、お酒を飲まない友達も来てくれたので、大人しく2軒だけにした。

1軒目は、またビール屋友達が教えてくれたStrathcona Beer Companyというところに行きたかったのだが、金曜日の夜に予約なしで7人押しかけたらテーブルに空きがないとのことだった。

そもそも、先ほど述べたようにブルワリー直営のお店というのはたいてい「テイスティングルーム」と銘打たれていて、もちろん今冷静になって考えてみればレストランであるのだろうし、立派なお食事も出るのだから予約だって必要になるようなものだろうが、このときはまったくそんなことを考えていなかったのである。

それに、場所。みんな女の子たちは、Strathcona(地名)のあたりには来ない。なぜなら、バンクーバーでほとんど唯一危険だから行ったらだめだとされているEast Hastingsという通りの延長にあるからだ。さまざまな薬物で首を折ったりお尻をだしたりコンクリートの上で火を焚いたりしている人のたくさん集まる地域が、East Hastingsだ。ブルワリーの密集するあたりにはホームレスたちはおらず、安全なのだが、女の子たちをはるばるヘイスティングスを通らせてまで来させてしまったという責任から、焦って電話をかけるとContainer Brewingには空いている席があるとのことだったので、胸を撫で下ろした。

ちなみに私はHastingsを通学路としているので慣れている。なので女の子たちが「冒険だったね!」と言い合っているのを見て、微笑ましかった。

お店は大盛況だった。Containerという名前の通り、フードメニューは駐車場にあるコンテナで注文できた。

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フライドポテトは絶品だったし(どこでも大抵絶品ではある)、みんなが食べていたハンバーガーも美味しそうだった。たんじゅんに、フライヤーで揚げたてのチキンが挟まっているという時点で美味しいのだ。日本には他にたくさんおいしいものがあるから、今まで感じなかったけど、揚げたてのフライとチキン、それはもう天に登るほど美味しいものなのです。お腹が鳴りました。

肝心のビールは、フライトで4種類。

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酒飲みは私含めて3人で、前述の”めぐり”に行ったメンバー。もう彼女らの好みを把握している私は、ラガーとスタウト、サワーとそれからヘイジーペールエールを頼んで持っていった。我ながら素晴らしいムーブだった……。友達の食や飲み物の好みを知っておくというのはなんだか、邪悪な満足の伴う感情が宿ることではないかと思う。少し独占欲の漂うような。友達を独占したいと思ったことはないから、それそのものではないのだろうけど。ビール屋の友達のお店に行ったときに「適当に見繕ってくださいな」という注文をしたときに幸せになるのも、こういった感じの理由がある気がする。

そして私の見繕ったサワー系のビールを、友達がパイントで注文し直しているのを見て密かに嬉しかった。暗い喜びですね、やはり。

スタウトはとてもストロングで、今見ると度数は4%くらいなのだが、香りにはアルコールの存在感が強く現れていて、思い出すだけで唾の湧く味だった。

他の、ノンアルコールの女の子たちは、フライトを見て大喜びで写真を撮っていて可愛かった。たしかに、お酒を飲まなければぜったいに遭遇しないアイテムだろう。早く次のビールを買いに行きたくて、グラスをかぷりと干す私たちに「なんか大人!」と言っている子もいて、おもしろかった。私たちの世界は、たぶんかなり違うのだ。

ブルワリーといえどもノンアルコールのチョイスがあるのもよかった。彼女らはレモネードなどを飲み、ハンバーガーにかぶりついていた。終わらないお喋り。

そしてつぎ、パイントをそれぞれ頼もうとなったとき、私は失敗を犯した。

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なんか、頼んだビールが無色透明だったのである。

お姉さんに「なんかめっちゃ透明なのなんで?」と訊くと、「あなたが頼んだのはビールじゃないからよ」と言われた。

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0番を注文したのだが、SELTZERというのはサイダーという意味の言葉なのだそうだ。知らなかった。ブルワリーに来て、ビールが好きなのに、なみなみの蒸留されたなにかのお酒を飲むことになってしまった。かなCかった。

しかし階段によいペイントがあったのでよかった。

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胸に手を当ててみて。ここには同性愛差別、独裁主義、性差別や人種差別の居場所はない。憎悪(ヘイト)に許容の余地はない。

 

7, Steamworks Brewpub

住所: 375 Water St, Vancouver

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言わずと知れたスチームワークス。バンクーバーダウンタウンウォーターフロント駅のすぐそばという好立地にある直営店だ。たぶん、地下でビールをつくってもいるとは思うのだが……。

みんなで連れ立ってバスに乗り、ダウンタウンに戻ってお店に入った。通っている学校からすぐ近くのお店なので、馴染みもある。

大きなナチョスを注文し、みなで分けて食べる。

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私はラガーを注文し、そのあと名前がおもしろいという理由で頼んだビールがスタウトだったのでちびちび飲んだ。50代のお友達はいつのまにか赤ワインに変えていた。私は少し酔った。

ダウンタウンにあるビアパブであっても、ビールの種類はとても豊富だ。ラガーはさやかに飲みやすく、スタウトは顔を顰めてしまうくらい苦かった。

みな、めいめいに好きなことを話していた。いい夜だった。

 

 

 

0, Seasons in the Park

住所: W33rd Ave, Vancouver

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番外編の番外編。これはブルワリーでもなんでもないのだが、女子会を行ったメンバーから5人で行ったので関連して残しておく。

Queen Elizabeth Parkという公園にあるレストランで、少しお高いところなのだ。客は全く車でくる想定をされているので、私たちのような留学生にとってはたどり着くまでが大変だった。勾配の急な公園のど真ん中をうんしょうんしょと歩く。夜、街灯は用意されていない。食前の運動としてちょうどよかったと言っておこう。帰りはウーバーを呼んだが。

ここには、Dine Out Vancouverというイベントの加盟店なので行くことができた。コース料理などを提供するレストランが、イベント用に少しリーズナブルな値段で全3品のコースを設定してくれている。ふだんから節制し、おしゃれしてご飯に行く機会のない私たちにとって、こういうイベントは楽しまない理由がない。とのことで、予約して出向いた。

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一品ずつ選ぶことができて、私はアペタイザーにミートボールを、

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メインにはサーモン、

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そしてデザートにキャロットケーキをいただいた。

お酒を飲むのが3人だったので、白ワインのボトルを注文した。イタリアのワインだった。

なんか、東アジア系の男前のサーバーの人が、ボトルを開けて私のグラスに少し注ぎ、テイスティングを迫ってきてびっくりした。おっかなびっくり、口に含んだ白ワインはすんと冷えていて上品で少し甘く、おいしかったので親指を立てた。彼はあまり喋らなかったが、もしかしたら日本人だったのかもしれない。

しかし、テーブルを代表してテイスティングをするなんていうのは初めての経験だったので嬉しかった。周りで友達が「匂いを嗅ぐんだよ!」とか言っていた。言葉通りグラスを回し、口に含んで少し鼻に空気を送ってから飲む、などと小癪にも知っているふりをした。合っていたんだろうか。笑われていたかもしれない。

サーバーのおじさんが、「レディたちおしゃれしてなにかのお祝いかい?」と訊いてきて、そういうわけでもなかったのだが、ひとり学校を卒業した子がいて、その子のお祝いということにした。するとなんと、チョコレートケーキをサービスしてくれて嬉しかった。みんなで少しずつ食べた。

私たちはたくさん話した。(私が話しすぎたかもしれない。)友達が「女子会のなにがいいって、食事を楽しもうというゴールを共有できるところだよね」と話して、その通りだと思った。おいしい食事をそれ自体楽しむために食べる、その感覚が共有できるのはやはり女の子たちの賑々しさによるものである。おしゃれをしてレストランに行くのが、デートのためじゃなくて、かわいいのなり方を知らない男の人にかわいいと思ってもらうためじゃなくて、レストランにいる自分を楽しむため、かわいいのハウツーをある程度共有する女の子たちと褒め合うため、その夜をナイフとフォークでの食事を単純に楽しむため、なのだから、そして、それを理解しあえるのはやっぱり女同士でしかありえない。

すると50代のお友達が、「でもそれは50になってもできるからね」と言った。「男の子と議論したりするのは若い頃しかできないから」と。でもそれもほんとうにそうなのだろうと思った。私が「ああほんとうに美味しいご飯とお酒、女たち、これがいちばんの幸せ!」と言った少しあとだったように思う。不思議とまったく水を差されたような気持ちにはならなくて、ただそうなんだろうと腑に落ちた。この素晴らしい夜の楽しみは、女たちとの宴は、歳をとっても得られる享楽なのだ。今も楽しいけど50歳になっても楽しいことが確定している。やっぱり女同士でものを食べるのは好きだし、死ぬまで好きなんだろうと思う。

でも同時に、好きな男の人とする食事だって大事なのだろう。食事そのものには集中してしまわない食事も。心安らかなだけではない夜も。きっとね。

しかしその夜私は、バンクーバーに来てからいちばん可愛かった。

 

 

 

 

ブルワリーのことを書こうと思ったのに、肝心のビールの味を少しも覚えていなくて趣旨がずれてしまった。でも、定期的にバンクーバーでの享楽の夜を書こうと思う。享楽、つまり、グルメのこと。

時系列はばらばらになるけど、おいしかったハンバーガーの話とかも書こうかな。大好きなお鍋屋さんや、狂宴のSUSHI・YAKINIKU食べ放題についても。

 

どうやら私はこの街で、しっかり楽しい毎日をしっかり楽しく過ごしているらしい。