ファミコン生ライブは体育会系!? 【NESBAND】インタビュー
ファミコンに魅了された世代といえば、今の20代後半から上の人々だろうか。その世代がここ数年、ニコニコ動画やYouTubeでゲーム音楽を演奏し、人気を得るケースが増えている。筆頭はファミコンを頭に載せて演奏するパフォーマンスで現在話題沸騰中のサカモト教授。ニコ動発の演奏者を含めた各アーティストのライブ・コンサート情報をまとめたポータルサイト『2083 WEB』(http://www.2083.jp/)なども整い、ますます盛り上がりを見せている。こうしたゲーム音楽奏者のほとんどが、鍵盤をひとりで弾くスタイルをとっている中、ファミコン本体を楽器として使って4人で合奏する、少し変わったバンドがある。
【動画】⇒ http://youtu.be/hEDgzTZ1i_k
ゲーム音楽はファミコンからスーパーファミコン、プレイステーションとゲーム機が進化するにつれて豪華になっていくが、和音の数に制限のあったファミコン音楽こそ至高、とライブ活動を重ねる『NES BAND』。ファミコン実機を鍵盤と繋げて弾くことで、演奏の音をファミコン実機から出しているのだ。上の動画は、都内で行われたライブ映像で、昨年夏にバンドが結成されて以来、YouTubeやニコニコ動画などで話題を集め、ニコ動のカテゴリランキングTop3を独占。
『NES BAND』がわざわざ4人で合奏しているのは、ファミコンの曲のほとんどが3和音+1ノイズの4パートから成り立っているから。4人でパート分けして弾くことで、ほぼ完璧にゲームに忠実に再現することができるのだという。
パート分けは、動画の右から、1チャンネル、2チャンネル、3チャンネル、4チャンネルという名称で、役割分担は以下のようになっている(以下、チャンネル=ch)。
1ch:パルス波……メロディ(ソプラノパート)
2ch:パルス波……ハーモニー(アルトパート)
3ch:三角波………ベース
4ch:ノイズ………パーカッション
【動画】⇒ http://youtu.be/iYmfkKypgQI
『ドラゴンクエスト2』の動画では、階段をのぼる「ザッザッザ」という効果音や、会話の「ピピピ ピピ」、はい・いいえを選択する際の「ピヨピヨ ピピ」といった音までもが、一糸乱れず再現されている。画面を見なければ、演奏ではなく、単にファミコンのプレイ動画かと思ってしまうくらいだ。それにしてもここまで厳密だと、ゲームのサントラを聞くのと変わらないのでは? バンドリーダーのマツケン先生、こと、松澤健さんに、人の手による演奏としてやる意味についてを聞いてみた。 松澤健(以下、松澤) 「ファミコンの音楽は、基本は同時に3和音しか出せないという制限の中で作られているため、アレンジが非常に工夫されているんです。その原曲ならではのアレンジの良さを伝えるというのが我々の一番のコンセプトで、ゆえに、毎回のライブではいかに本物に近づけるかという挑戦でもあります。ただ、どんなに完璧に演奏できたとしても、そこには必ず合奏ならではの若干のズレはあるもの。その人間くささは味として感じてもらえればと思いますね」 ――あくまで演奏側は限りなく完璧を目指しているけど、その上でどうしても生じるミスやズレをも味わうバンドだと。 松澤「本当に機械のように完璧なものが聴きたかったら、サントラを聴けばよくなってしまいますよね。そこであえて生演奏をするのは、例えば、人間の手で弾くのは難しいような箇所で、お客さんも『おぉ、そこまで再現するか』と、ある意味ヒヤヒヤするような感覚も共有できればと思っているんです。ゲームの曲は、もともと人間が弾く用に作られていないため、細部まで完璧に再現するのはものすごく難しいんですよ」 ――ライブ動画を聞いていると、ファミコンの音はハッキリしている分、ミスタッチしてしまうとかなり目立つように思います。 松澤 「おっしゃる通りで、ミスタッチが致命傷になりうるため、演奏側は相当なストイックさが求められます。いくらミスが結果的に“味になるかもしれない”とはいえ、演奏側としては決してミスを肯定しているわけではないのです。ミスタッチだけでなく、4人の合奏をいかにズレなく合わせるかにも気を遣いますね。指揮者のような存在はいませんので、呼吸だけですべてを合わせるしかない。スタジオで合わせ練をするときなんて、4時間くらい休憩もせず、ひたすら黙々と反復練習なんてのもざらですからね(笑)」 ――ずいぶん体育会系ですね……! 松澤 「ただ、厳しくストイックというだけではなく、オチのような役割になっているのが、4chのメンバー。特に狙っていたわけではないのですが、パーカッションの役割である4chは、他の鍵盤担当のメンバーよりも活躍の場が少なく、演奏中にボンヤリ座っているだけのシーンが多いことから、動画サイトでのコメントで“ヒ・ダリ”という愛称をつけられ、イジられて親しまれています(ヒ・ダリ=もともとニコニコ動画発祥の用語で、仕事をしないがおいしいところを持っていく人の意)。こうして、ファンの間でメンバーのキャラも固定されてきていて、バンドが徐々に形づけられていく様を肌で感じられているのはとても嬉しいことです。ライブでは、ドラクエやマリオの人気タイトルはもちろん、『カラテカ』のような知る人ぞ知る名作(迷作?)も、ファミコンあるあるをふんだんに詰め込んで演奏しています。ライブで、ファミコン世代のお客さんがニヤニヤしてくれているのを見ると感無量ですね」 【動画】⇒ http://youtu.be/77QY0BsB7uY
今年に入ってからは、都内のみならず地方での遠征ライブも予定され、さらには、バンドリーダーのマツケン先生によるファミコン音源の打ち込み講座が開講されるなど、活動範囲を広げている。ニコ動発の人気者がメディア出演を続々果たす昨今、次なるブレイクは『NES BAND』か!? <取材・文/もよもよ> ⇒【機材ギャラリー】NESBANDが利用している機材を公開! https://nikkan-spa.jp/193026/n0
●『NES BAND』 HP(http://nesband.com/)
現在、NES BANDのライブ動画の合計再生回数は40万回を超えている。次回ライブは6月16日、名古屋にて。詳細はHPのリンクを参照。
●松澤健 HP(http://dad.cside.com/km/nicotube.htm)
NES BAND リーダーの松澤健氏のHP。ちなみに4月22日、5月27日、6月24日と、オトトイの学校にて「マツケン先生のリアルファミコン音源打ち込み塾」(http://ototoy.jp/school/event/info/40)の講座が開講される。現在、オトトイの学校HPより、受講生受付中。
ゲーム音楽はファミコンからスーパーファミコン、プレイステーションとゲーム機が進化するにつれて豪華になっていくが、和音の数に制限のあったファミコン音楽こそ至高、とライブ活動を重ねる『NES BAND』。ファミコン実機を鍵盤と繋げて弾くことで、演奏の音をファミコン実機から出しているのだ。上の動画は、都内で行われたライブ映像で、昨年夏にバンドが結成されて以来、YouTubeやニコニコ動画などで話題を集め、ニコ動のカテゴリランキングTop3を独占。
『ドラゴンクエスト2』の動画では、階段をのぼる「ザッザッザ」という効果音や、会話の「ピピピ ピピ」、はい・いいえを選択する際の「ピヨピヨ ピピ」といった音までもが、一糸乱れず再現されている。画面を見なければ、演奏ではなく、単にファミコンのプレイ動画かと思ってしまうくらいだ。それにしてもここまで厳密だと、ゲームのサントラを聞くのと変わらないのでは? バンドリーダーのマツケン先生、こと、松澤健さんに、人の手による演奏としてやる意味についてを聞いてみた。 松澤健(以下、松澤) 「ファミコンの音楽は、基本は同時に3和音しか出せないという制限の中で作られているため、アレンジが非常に工夫されているんです。その原曲ならではのアレンジの良さを伝えるというのが我々の一番のコンセプトで、ゆえに、毎回のライブではいかに本物に近づけるかという挑戦でもあります。ただ、どんなに完璧に演奏できたとしても、そこには必ず合奏ならではの若干のズレはあるもの。その人間くささは味として感じてもらえればと思いますね」 ――あくまで演奏側は限りなく完璧を目指しているけど、その上でどうしても生じるミスやズレをも味わうバンドだと。 松澤「本当に機械のように完璧なものが聴きたかったら、サントラを聴けばよくなってしまいますよね。そこであえて生演奏をするのは、例えば、人間の手で弾くのは難しいような箇所で、お客さんも『おぉ、そこまで再現するか』と、ある意味ヒヤヒヤするような感覚も共有できればと思っているんです。ゲームの曲は、もともと人間が弾く用に作られていないため、細部まで完璧に再現するのはものすごく難しいんですよ」 ――ライブ動画を聞いていると、ファミコンの音はハッキリしている分、ミスタッチしてしまうとかなり目立つように思います。 松澤 「おっしゃる通りで、ミスタッチが致命傷になりうるため、演奏側は相当なストイックさが求められます。いくらミスが結果的に“味になるかもしれない”とはいえ、演奏側としては決してミスを肯定しているわけではないのです。ミスタッチだけでなく、4人の合奏をいかにズレなく合わせるかにも気を遣いますね。指揮者のような存在はいませんので、呼吸だけですべてを合わせるしかない。スタジオで合わせ練をするときなんて、4時間くらい休憩もせず、ひたすら黙々と反復練習なんてのもざらですからね(笑)」 ――ずいぶん体育会系ですね……! 松澤 「ただ、厳しくストイックというだけではなく、オチのような役割になっているのが、4chのメンバー。特に狙っていたわけではないのですが、パーカッションの役割である4chは、他の鍵盤担当のメンバーよりも活躍の場が少なく、演奏中にボンヤリ座っているだけのシーンが多いことから、動画サイトでのコメントで“ヒ・ダリ”という愛称をつけられ、イジられて親しまれています(ヒ・ダリ=もともとニコニコ動画発祥の用語で、仕事をしないがおいしいところを持っていく人の意)。こうして、ファンの間でメンバーのキャラも固定されてきていて、バンドが徐々に形づけられていく様を肌で感じられているのはとても嬉しいことです。ライブでは、ドラクエやマリオの人気タイトルはもちろん、『カラテカ』のような知る人ぞ知る名作(迷作?)も、ファミコンあるあるをふんだんに詰め込んで演奏しています。ライブで、ファミコン世代のお客さんがニヤニヤしてくれているのを見ると感無量ですね」 【動画】⇒ http://youtu.be/77QY0BsB7uY
今年に入ってからは、都内のみならず地方での遠征ライブも予定され、さらには、バンドリーダーのマツケン先生によるファミコン音源の打ち込み講座が開講されるなど、活動範囲を広げている。ニコ動発の人気者がメディア出演を続々果たす昨今、次なるブレイクは『NES BAND』か!? <取材・文/もよもよ> ⇒【機材ギャラリー】NESBANDが利用している機材を公開! https://nikkan-spa.jp/193026/n0
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