ピボットの本質
スタートアップの界隈にいれば、1週間に数回は聞くピボットという言葉。竹の子のように新しいサービスが立ち上がっている世界では、他サービスの登場やテストサービスの失敗でピボットが頭によぎったことがある起業家の方も少なくないのではないか。
今日は、そのビボットの本質を言い表した一節を意外にもビジョナリーカンパニー2の中に見つけたので紹介したい。
針鼠の概念は、最高を目指すことではないし、最高になるための戦略でもないし、最高になる意思でもないし、最高になるための計画でもない。最高になれる部分はどこかについての理解なのだ。この違いは、まさに決定的ある。(参照:ビジョナリーカンパニー2)
針鼠の概念をピボットに置き換えて読んでみるとしっくりこないだろうか。
ピボットは、最高を目指すことではないし、最高になるための戦略でもないし、最高になる意思でもないし、最高になるための計画でもない。最高になれる部分はどこかについての理解なのだ。この違いは、まさに決定的ある。
そう、ピボットは意思や戦略ではなく、深い顧客と自社理解に基づいて行われるべきものである。
具体例として、イーベイを追撃しようと、オークション事業に参入にしたアマゾンのピボットを見てみよう。
3ヶ月でイーベイをコピーしろとの厳命が下った。イーベイになら勝てる、なぜならアマゾンは資金量豊富で出品料金も安くできるし、不正取引行為二対する保険も無料で出来るのだからとベゾスは自信に満ちていた。
アマゾンは、決済企業を買収したり、サザビーズと手を組んだりもするが、うまくいかない。終いには、イーベイからオークション事業の買収を持ちかけられる。しかし、ベゾスは買収を断り、オークション事業のピボットを試みる。
ベゾスはSチームの一部のメンバーと経営幹部をメディナにある邸宅の地下室に集め、社外の売り手を活用する努力が実を結ばないのはなぜなのか、終日かけて検討した。その結果、いろいろと問題はあるが、サードパーティの売り手のページに向かうトラフィックはほとんどが商品ページのクロスリンクによるものだと判明する。
これは重要なポイントだった。アマゾンでは信頼性の高い商品カタログを中心にトラフィックが発生する。イーベイの場合は、たとえばヘミングウェイの『日はまた昇る』を検索すると新品や希少本のオークションが何十カ所かみつかったりする。アマゾンで同じことをすると、しっかりした内容紹介のあるページが一つだけみつかり、顧客はそこに集中する。
その日集まったアマゾン幹部は、インターネットで一番信頼できる商品カタログを持っているのは自分たちであり、それを活用しない手はないとの結論に達する。これこそ、小さなオンラインショップのプラットフォームとしてアマゾンが栄える基となった考え方であり、また現在の成功の相当部分をもたらした考え方でもある。社外の売り手にもアマゾンを使ってほしければ、彼らの商品もアマゾンが販売する商品に並べる形で同じページ、顧客が集まるページに掲載しなければならない。(参照:ジェフ・ベゾス 果てなき野望)
この会議を経て、今のAmazonマーケットプレイスの形にピボットして、オークション事業を成長させている。
これを読むとアマゾンがオークション事業で最高になれる部分を理解したところからオークション事業の方向性が決まったのがわかる。おそらくアマゾンは3つのことを理解したのだろう。
- イーベイでお値打ち品を探すユーザーとAmazonで商品を指名買いするようなユーザーは違うこと。
- 指名買いユーザーは、手間を含めた買い物コストを最小化することを求めていること。
- 自分たちが指名買いユーザーにとって必要な一番信頼できる商品カタログを持っていること。
ここまで顧客と自社について理解できれば、アマゾンのトップページにオークションタブを用意して展開していた従来のやり方から、商品カタログからサードパーティーの在庫を含め最も安い商品が紹介するというやり方に、ピボットするのは比較的容易だったと思われる。
アマゾンの例をみても、ピボットはどのような方向性に進むかを考えることではなく、最高になれる部分はどこかについて理解することだとよくわかる。
そんなわけで、自分も時がきたらうまくやりたいと思う(笑)
ジェフ・ベゾス 果てなき野望?アマゾンを創った無敵の奇才経営者
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