【短歌一首】 粗相せし猫に起こされ暁の寒空見れば三日月笑めり
夜明け前、夢うつつの中で猫がオエッ、オエ〜と何かを吐いている音が聴こえてきた。そしてそれが止むと、猫が寝床に来て体の上に乗っかってきたり、耳元で大きな声で鳴いたり、畳や鞄で爪研ぎをしたり引っ掻いたりして、しきりに起床を促してくる。
時計を見るとまだ朝5時ちょいすぎ。猫の攻撃に何度も抗ってもう少し眠ろうとするが、猫は容赦なく起こしにかかってくる。 吐き戻しの後は猛烈にお腹が空くらしく、いつも吐いた後はガツガツとよく食べる。 はよ、朝メシにしろと言っているのだろう。
あまりにもうるさいので仕方なく布団から出て、まず、猫がどこに吐いたのかを確認する。寝ぼけていると床のゲロを踏んづけてしまうことがある。 細心の注意を払いつつひととおり床を見て回ったが、どこにも吐瀉物は見当たらない。もしかしたら、腹が空きすぎてオエオエ言っていただけなのかも。
念のため、注意深くもう一度居間をくまなく見て回る。
んがっ、やってくれたな、わざわざソファーとソファーの上にある猫自身にとって冬の大事な居場所である猫のベッドと湯たんぽの上に吐いてある。 床なら拭けば済むのだが、これじゃソファーや猫のベッドや湯たんぽのカバーを外して汚れを拭いた後に洗濯が必要になる。 朝の忙しい時に本当に勘弁してほしい。
洗濯したあとの外出前の外干しを視野に入れつつ、天候確認をするために朝の冷え込んだベランダに出ると、明け方の蒼く寒い空にはまだ三日月が残っていた。
夜明け前からの奮闘を三日月が慰めてくれているのか、それとも笑いものにしているのか。 いずれにしても冬の早朝の三日月はまさに冷たく研ぎ澄まされていて美しい。猫のオエオエのおかげ?でいいことがあった。
猫間英介