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NHK短歌「歌に物語りあり」

 今月のNHK短歌のテーマは「架空の生き物」、それを受けて、先日の日曜の題は「歌に物語りあり」、全国からの入選9首を紹介し選者の大森静佳さんがコメントを述べている。
 
 大森静佳さんは、1989年生まれ、京都大学在学中に角川短歌賞を受賞、以降主要な短歌に関する各賞を受賞し、平成生まれの若手歌人として著名。実弟の大森浩平氏はスーパーリアリズム鉛筆画家、夫は歌人で精神科医の土岐友浩氏、生まれながらか、環境か、才能ある人は集まるらしい。
 
 紹介された入選歌は以下の通り、
 
一席
恋人に なりきれなかった 放課後に
ユウヒネジリが 夕日を捻じる      有賀未来
 
 ユウヒネジリは作者が考えたオリジナルの妖怪、カタカナで書くと妖怪っぽくなるのが面白い。恋に破れた自分の気持ちのせいで夕日がねじれているのではなく、あくまで妖怪が捻じっているとして、屈折したユーモアとか青春性を感じる・・・・とのこと。
 本当は涙が浮かんで夕日が捻じれているのだろう。経験はないが(?)気持ちは理解できる。
 
二席
前の世にも わたしを赦した 逆鱗が
光るよあなたの 喉の隆起に       碓井やすこ
 
 逆鱗とは、龍の喉にさかさまの鱗が生えていて、その鱗に触ると龍が激怒するという慣用句。前世でも龍と人間として出会っていて、その時も今回もあなたは私を赦してくれた。優しさが染みわたってくる歌・・・・
 逆鱗のいわれを知らなかったので、最初はピンとこなかったが、大森さんのコメントを聞いて、成程と思った。と同時に我が身の無知を改めて知った一首でした。
 
三席
ネッシーの 煮つけを食べたと いう祖父の
首のたるみの 影こくなりぬ      吉本美加
 
 ネッシーの煮つけが凄いインパクト、首のたるみの影が濃くなった、単なる老化現象なのに祖父が首からネッシーに変身しつつあるような、ちょっと不気味な感じです・・・・
 我が身、我首を考えると、とてもこんな冗談は言えない!
 
 他の入選歌は、
蜃気楼 吐き出す貝を 思わせる
郷帰りした 姉貴のあくび      前川泰信
 
誰もみな 孫を見るように 見守って
配膳ロボの 垂直な背筋       紙村えい

 
猛暑日に きゅうりの 昆布和えを出し
一人残らず 河童に変える       月出里ひな

 一心に昆布和えを食べて居る姿を河童に見立てているのが大胆・・・・
 
ハンバーグ 好きだったんだ ケルベロス
みたいな上司の 尻尾が揺れる    かなもん
 
 ケルベロスはギリシャ神話に登場する冥界の番犬で頭が三つある、普段は厳しい上司が、ハンバーグが好きだったんだと意外な一面を見せるのが、子供っぽくてかわいい・・・・
 ケルベロスは知らなかったが、大森さんの解説でこの歌がようやく理解できた。会社人は社内の人間関係が複雑、相手により顔を変えるケルベロスみたいな人が多い、それを皮肉った歌ではなかろうか。
 
君の名を 呼ぶとき胸は ペガサスの
蹄に強く 蹴られて撓む      丹羽祥子
 
ゆるキャラの 控え室開け お茶出せば
中身優しき 礼の返さる      多田木まさのり

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