重要な追記(2019/6/22):当記事の記述に重大な影響を与える報道ならびに会社発表がなされています。詳しくは記事最終部分の追記をご覧ください。
ついにこの日が来てしまった。
システム大手のワークスアプリケーションズ(東京・港)の筆頭株主が経営権を売却する交渉を進めていることが16日、日経ビジネスの取材で明らかになった。働きやすい会社としての評価も高く、若者を中心に就職先として人気を集めてきたが、最近は業績不振に陥っていた。
MBO による上場廃止後も大量採用を長年続け、受注を伸ばしてきたワークスアプリだが、一大転換点が訪れた。
その予兆が外部に漏れ伝わってきたのは、2017年10月号のFACTA からだった。
業務ソフト大手「ワークスアプリ」が視界不良:FACTA ONLINE
これは同社が基幹システム全面刷新案件における債務不履行を理由に、14億円規模の損害賠償請求を受けた話題から始まる記事だったが、
[PDF]訴訟の提起に関するお知らせ - 兼松エレクトロニクス株式会社
FACTA はこの記事で、「6月末より(金融機関への)借入金の返済をストップし、大手法律事務所を代理人として全銀行にリスケジュールへの同意を要請している」と報じたのだ。
当然このネガティブニュースに対するショックは大きく、これを受けて社内の士気も低下したというが、ちょうどその頃、ワークスアプリは東京証券取引所へ再上場を申請していた。当時はこれにより100億円規模の資金調達を計画していたという。
覚悟の赤字、「資金難」報道にへこむ ワークス牧野氏|出世ナビ|NIKKEI STYLE
しかしながら、自己都合で退場した同社の出戻り再上場への視線は厳しく、ワークスアプリは日本とシンガポールに拠点を置くファンド投資グループACA Investments Pte Ltd が運営するファンドからの調達を続けていくこととなる。
(ポラリスK&C 投資組合が保有していた全ての株式は、同時期にACA ファンドに譲渡されている。)
ワークスアプリケーションズ :: ACAファンドより50億円の調達、1年間で累計資本調達額100億円を達成(2017年09月29日)
だが、この間にも新たなERP システムの開発費や人件費もかさみ、営業損益も赤字へ転落。新規案件受注へのプレッシャーからか、社内の営業とエンジニアとの意思疎通もままならなかったといい、「とても完成出来っこない案件が降ってくることが増えた」との声も聞かれた。
業績が悪化の一途をたどる中、別の取引先からの損害賠償請求も起き、直近の決算でも巨額の特別損失を計上。
訴訟の提起に関するお知らせ | お知らせ | 古河電気工業株式会社 (請求額:50.5億円+遅延損害金)
結果、平成30年6月期の決算では180億円規模の最終赤字を計上することとなり、今度こそ万事休すかとヒヤリとしていたところ、決算ギリギリの平成30年6月29日に増資により約107億円を調達し、何とか債務超過を回避していた。
ファンドにも再上場の期待を持たせて続けていたのだろうか。とはいえ、このまま資金繰りの綱渡りを続けられるのだろうか――。
Vokers でも同社経営陣に対して、「二正面どころか多正面衝突になってしまっている。苦しいが、一度整理するタイミングになっているような気がする」という辛らつなコメントが寄せられる中、年明け早々のこのタイミングで、冒頭の報道となった。
「投資ファンドが、全株を手放す意向で、売却に向けた入札を実施している」といい、今後の大規模な圧縮は避けられない格好となってしまったワークスアプリ。
膨れ上がった従業員数も、今後3年間で3割程度削減する方針を固めたようだという。
追記(2019/1/16)
ワークスアプリケーションズは同日コメントを発表。
本件は筆頭株主に係る事項であり、当社としてコメントする立場はないとしながらも、報道で言及された業績見通しや人員計画は、当社が公表したものではなく、具体的な決定事実はないとした。
追記(2019/6/22)
当社のHR領域(人事シリーズ及びHR Suiteプロダクト)に関連する事業及び関連子会社(以下、「HR事業」)を会社分割(吸収分割)により、当社の完全子会社である新設会社に承継させた上で、新設会社の発行済株式の全部をベインキャピタルが助言するファンドが管理するSPC に譲渡することを発表しました。
ワークスアプリケーションズ :: 会社分割(吸収分割)及び新設会社株式の譲渡に関するお知らせ
売却額は明らかにしていませんが、日本経済新聞は21日、ベイン側が「1000億円規模の資金支援を検討」していると報じています。
ベインキャピタル、ワークスアプリ支援 1000億円規模 :日本経済新聞
ひとまず将来性のある部門を切り出して売却する方針が示されたことで、状況が好転することが見込まれます。