【今日のおすすめの本】(対象…小学校中学年から大人まで)
『しずかな魔女』
市川朔久子 作
平澤朋子 絵
岩崎書店
(あらすじ)
不登校の中学生「草子」は、いつも図書館にいます。
勉強したり、本を読んだり。
ある日、図書館で見ず知らずの大人から不登校を責められていた草子を、さりげなく助けてくれた司書の「深津さん」。
彼女は草子にある言葉を教えてくれます。
『しずかな子は、魔女に向いてる』
深津さんが〈お守り〉だと言って教えてくれたこの言葉が、草子は頭から離れません。
草子は、はじめて図書館でレファレンスを希望します。
依頼は、〈『しずかな子は、魔女に向いてる』という文章の出てくる本を探しています〉
深津さんは、「これは昔、私が友人から教わった言葉でそういうのではないんです」と、断りますが、草子が「どうしても読んでみたいんです」と食い下がると、やがて、「少しお時間がかかりますが、よろしいですか?」と依頼を受けてくれます。
深津さんからなんの連絡もないまま迎えた夏休み初日。
草子は、別の司書から深津さんから預かったという大型の茶封筒を手渡されます。
草子が封筒を開けると、中に入っていたのは、白い紙の束。
プリントアウトしたばかりの真新しい紙の上に、添えられていたのは
〈お待たせしました。こちらがお探しの物語です〉
というメモ。
作者名はどこにもないけれど、一枚目には『しずかな魔女』というタイトルが印字されています。
ページをめくると、そこに広がっていたのはふたりの少女のまぶしいひと夏の物語でした。………
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娘が先に読み終えて、大絶賛していたので、早速読んでみたところ、あまりに素晴らしく1日で一気に読み終えてしまいました。
一つのお話の中にもう一つのお話が入っている入れ子式の物語です。
序盤に主人公の物語。途中からは『しずかな魔女』の物語がはじまり、そして終わります。最後に『しずかな魔女』の物語の旅から帰ってきた主人公の心には、これまでとは違う変化がおこります。
不登校の主人公にとって、家と学校以外の第三の居場所である図書館。
何も余計なことは言わないけれど、「よく見て」「よく考える」司書の深津さん。
魔女に必要なことは「よく見て」「よく考えること」「角度を変えて」「距離を変えて」「そしてまた見て、また考えて」。
お日様の光で作ったはちみつ漬けのレモンティーソーダ。
ギンガムチェックのおそろいの手作りワンピース。
世界の美しい風景の載った本。
人の心を動かす物語を書くこと。
『しずかな魔女』に出てくるおばあちゃんは、これらのすてきなものはすべて「魔法」だと言います。
草子は、最後まで不登校のままで、深津さんも多くは話しません。
しかし、確かにそこには『しずかな魔女』という物語の魔法にかかった新しい草子の姿があるのです。
はちみつレモンのティーソーダ、団地の空き部屋のお化け屋敷、知らない場所への冒険、秘密のツリーハウス、夏祭り…
じんわりとあたたかい、心の奥底の琴線に触れる物語です。
子どもはもちろん、大人の方にこそぜひ読んでいただきたい作品です。