神奈川県横須賀市は10月27日にVRChat上でワールド「Dobuita & Mikasa World」をグランドオープンした。本ワールドはドブ板通りエリア、三笠公園エリアの二つのエリアから成るが、ドブ板通りエリアは先にオープンしており、27日20時に三笠公園エリアの公開とともに、グランドオープンを記念するお披露目会を行った。
地方自治体のメタバース活用事例は大阪府大阪市が国産メタバースプラットフォームCluster上にバーチャル大阪を展開したり、VRChat上の即売会バーチャルマーケットにて静岡県焼津市や大阪府泉佐野市が出展するなど、コロナ禍以降いくつもの事例はあった。しかし、自治体公式としてVRChatのワールドをオープンしたり、スカジャンをバーチャルファッションとして展開したりといった、VRChatを基点とするカルチャーに沿った形で展開している都市はこれまでなかった。
日頃VRChatで遊んでいる方なら少し見て回るだけでも丁寧な作りこみを感じると思うが、Quest単体でもワールドに入れるように対応されているというから驚きだ。横須賀グルメを食べるギミックがあったり、記念艦三笠内部に入れるなど見どころが多く、ワールド容量が200GB程度とはとても思えなかった。
しかも、アバター用ファッションのアイテムとして作られた横須賀が発祥の「スカジャン」はなんと無料で配布されるという。一体、横須賀市がVRChat上のワールドとしても普通に楽しめるクオリティのワールドを用意して表現しようとしたものは何なのだろうか?
そぞろ歩きに船内見学! ドブ板通りと三笠公園を観光しよう
まずは、ワールドの楽しいポイントからお伝えしたい。メタバースヨコスカのすごいポイントはいくつかあるが、とにかくワールドの作りこみが素晴らしいので、歩いているだけでも楽しめるはずだ。
リアルなドブ板通りの街並みと、街の上をモノレールが走る近未来都市的なヴィジュアルの融合が面白い。メタバースヨコスカ プロデューサーの横須賀市観光課 小山田さんによると、「リアルな横須賀をそのまま再現するのではなくて、メタバースという世界観に落とし込んでいただいた」とのこと。Quest対応するなどの制限がある中でできる表現を日々ディスコードで話し合って詰めていったという。
自治体もディスコードでやり取りをしていると思うと勝手に親近感が湧いてしまう。
観光案内所のような場所にドブ板通りの由来や横須賀グルメについての紹介パネルがあるが、ただパネルが置いてあるだけではない!
ここに置いてあるバイクは手で持って動かせるので、好きな場所に置いて写真を撮れるようになっている。お披露目会では、おきゅたんが偶然触ってしまったことからポーズを取る場面も。
このバイクはキーヴィジュアルのバイクを模して造られたものだという。横須賀らしさを感じられるかっこいいコンセプトアートとして描かれたイラストから生まれたバイクなので、もちろんメタバースヨコスカにぴったり合う。ぜひ、好きな場所にバイクを持ち運んで写真を撮って欲しい。
ここからは横須賀グルメのお店をご紹介!
よこすか海軍カレーはスプーンを使って食べるギミックがあるほか、カレーと牛乳を合わせていただく食文化も表現されており、席には牛乳が置かれている。また、この牛乳は細かいことに飲むことができる。食べたり飲んだりできるギミックがあると楽しいですよね。
「ヨコスカネイビーバーガー」のお店ではなんと、自分たちでパティを焼いたりして作って遊ぶことができるギミックが。もちろん食べることもできる。
店内にはジュークボックスが置かれており、現在は動いていないが、ゆくゆくはアップデートされて曲が流れるという。11月にはライブイベントが実施されるということなので、イベントに出演したアーティストの楽曲が流れるのだろうか? 気になるところだ。
「三笠公園エリア」の入り口には物産展のように、横須賀近郊のグルメが置かれている。こちらにはドブ板通りのお店にあるようなギミックこそないが、精巧に作られた葉山の名店マーロウのプリンや、三崎名物のマグロ丼などを手にもって見ることができる。
なんと、今まで紹介したよこすか海軍カレーや、ヨコスカネイビーバーガーなどのアイテムはBoothで無償配布されている。利用規約によると使用権利もかなり自由に設定されており、ワールドに設置するほか制作したゲームに使用するなどクリエイティブ活用に役立てて欲しいとのことだ。これも横須賀市の魅力を知ってもらうための施策の一環だという。
●アセット
・よこすか海軍カレー
・ヨコスカネイビーバーガー
記念艦三笠へ行こう!
三笠公園エリアに入るとまず見えるのが、存在感抜群の記念艦三笠。三笠公園には第一次世界大戦時代の戦艦三笠が見学できるように保存されているが、実際の三笠同様にこちらも内部を見学できる。
三笠の内部に行くには、広場にあるテレポートのスフィアに触れることで移動できる。
地上からだと遠くて見えなかったが、内部に入るとしっかりと「Z旗」がはためいているのが見える。「皇国の興廃この一戦にあり」という名文とともに掲げられ、当時最強とうたわれたロシアのバルチック艦隊を破った、かっこよすぎる代物だ。
船内にもテレポートスフィアがあり、艦長室や船尾へ行くことも可能。VRChatならカメラをドローンのように動かして普段は絶対撮れない位置からも写真を撮れるのでおすすめだ。
なお、一度艦長室方面に行くと再び広場に戻ってからでないと船内に入れないので、友達と遊びに行く際ははぐれてしまわないように気を付けよう。
東郷平八郎が指揮をとっていたという艦橋に出ると、ワールドに入った時から上空を走っているのが見えていたモノレールが近くを通る。実はこのモノレールは未来の京急電鉄の車両をイメージしたものだという。
この未来の京急は、通称「ドレミファインバーター」の音を鳴らしながら走行しているのが特徴。このドレミファインバーターとは京急電鉄の車両独特のインバーターで、振動ノイズが音階になるように調整されており、その音がファンから「歌う列車」と愛されていたが、2021年に全ての車両が惜しまれつつ引退した。
つまり、世界で唯一歌う列車が走っているのはメタバースヨコスカだけということになる。夕暮れの風景も相まって、なんともエモい情景だ。走行中の音にもぜひ、注目してみよう!
最後は主砲の下で集まった全員で記念写真を撮影(一部の方が距離の設定で映っておらず申し訳ありません)。大人数で敬礼すると雰囲気が出てしまって面白い。
最初から最後まで、ずっと楽しいお披露目会だった。
作ったり食べたりできるギミックや内部を歩ける三笠など見どころたっぷりだが、さらにQuest対応までされているのが本当に驚きだ。
しかし、この記念艦三笠をよく見ると浮いているのがなんとも気になる。今後の展開が楽しみだ。
スカジャン絵師×アーティストコラボの「スカジャン」が無償配布
ここまで見どころたっぷりの「Dobuita & Mikasa World」を紹介したが、先ほどからスカジャンを着ているアバターが多く映っていたと思う。それはこのメタバースヨコスカではワールドを発表しただけでなく、横須賀発祥のアパレルアイテム「スカジャン」をバーチャルファッションアイテムとして展開しているからだ。対応アバターは桔梗、まめひなた、水瀬などの人気アバター15体に及び、こちらも横須賀グルメのモデル同様になんと無償提供!
今回のお披露目会では、スカジャンの着用モデルとしてメタバース上のモーションアクターチームとして活動する『カソウ』舞踏団よりyoikamiさん、kouaさん、えーすけさんが登場。かっこよく、そしてかわいくスカジャンを着こなしていた。
スカジャンといえばサテン生地に大胆に入った刺繍だが、スカジャン絵師の横地広海知さんとVRアパレルブランドEXTENSION CLOTHINGのアルティメットゆいさんによるコラボレーションによって素敵なデザインが実現。バリエーションも豊富なので自分好みのスカジャンを探せるのが楽しい。
また、アバター用の衣装やギミックの導入ツール「Modular Avatar」に対応しており、対応するアバターのものであればドラッグ&ドロップの操作だけで着せ替えられるのが嬉しい。女性アバター用、男性アバター用どちらもインナーやボトムスとセットになっているため、Unityの操作に慣れていなくても簡単にスカジャンファッションを着用できる。
もちろん、アバター改変に慣れている方ならスカジャンだけをアバターに着せる改変も可能。
今回、私が普段使っているアバターは対象外だったため、対応アバターの杏里君にスカジャンを着せてお披露目会に参加した。スカジャンを着せるだけで雰囲気が一変して楽しいので、改変に慣れている方はぜひ着せてみて欲しい。
なんと、改変のためのアバターを持っていない方向けに、オリジナルのVRoidアバターも無償提供。
こちらもスカジャン絵師の横地広海知さんによるデザインで、VRoidモデルの製作はLUCASさんが担当。LUCASさんによると「VRoid史上最高のスカジャンを目指した」とのこと。
●スカジャン
・DOBUITA STYLE 【for Woman】
・DOBUITA STYLE 【for men】
・メタスカオリジナルVRoidアバター
「Dobuita & Mikasa World」には、これらのスカジャンを見れるお店もあるので、お店に行ってからダウンロードするのもおすすめだ。
まめひなたが自然とつかむチェーンのきらきらとした金属の質感や、ボトムスのダボっと感のリアルさに思わず目が行くが、yoikamiさんのまめひなたがとにかくかわいかった。
また、店内にはスカジャンと合わせられるコラボアイテムも展示されているので要チェック。
スカジャンに合わせて辛めのコーディネートを楽しめるMelty Lilyのキャミソール+デニムや、スカジャンのコーディネートにぴったりのLemiel_atelierによる髪型のセットがある。
女性用の髪型として、ポニーテールが用意されているのがかわいい!
●コラボアイテム
・Lace up Camisole & Denim Full Pack:2500円、単体(森羅、萌、マヌカ、桔梗):1000円)
・Reve Hair(ポニーテール) Reve Hair+小物:800円、Reve Hair単体:640円
・Abel Hair(ショートマッシュ) Abel Hair+小物:800円、Abel Hair単体:640円
お店を出てすぐのところにあるグラフィティアートの前で撮影タイム。すると「ここで踊ったらめちゃくちゃ絵になってしまうのでは」との声にyoikamiさんがダンスを披露すると、一気にヨコスカ感が!
「これだけ動いても全然破綻しないです」というダンサーならではの感想とともにハイキックを繰り出すところを見ると、さっきまでまめひなたでひたすらかわいく振舞っていた人とは思えない…!
横須賀市が「メタバースヨコスカ」に託した想いとは
ここまで、「Dobuita & Mikasa World」のワールドの面白さやスカジャンのかっこよさについて紹介してきたが、ある自治体による公式ワールドと考えると、単に再現するだけでなくちょっと近未来調にしていたり、ファッションアイテムの無償配布をするなど、VRChatのカルチャーに深く寄り添っている印象を受けた。
メタバースヨコスカ プロデューサーの横須賀市観光課 小山田さんによると、「横須賀市は軍港やカレーの知名度はあるのですが、観光地として周知できていないのが課題」とのこと。メタバースヨコスカプロジェクトはそんな課題を解決するための施策のひとつとして、横須賀市の観光スポットとしての魅力を知ってもらうために「Dobuita & Mikasa World」公開、スカジャン無償配布、ライブイベントの実施という三つのポイントを軸で始動したという。
ライブの会場はいかにもなスピーカーが並んでいる、記念艦三笠の前のステージ。
JOHNNY HENRY、93poetryなど、VR音楽シーンの実力派がそろう約二時間のライブは、11月4日(土) 20:30開場。先着30名の早い者勝ちという狭き門だが、ぜひトライしてみよう。
また、今後もワールドのアップデートを予定しているほか、12月には横須賀市の観光スポットとして人気の「猿島」もオープンするという。これだけ見どころたっぷりだったのに、まだまだイベントが控えているというのは、ただごとではない情熱を感じる。
いくらVRChat上で観光スポットの魅力をPRすると言ってもここまでのものを「ただVRで観光PRしたいから」というところから作れないのでは? と思い小山田さんに伺ったところ、これまで横須賀市役所での仕事でサブカルやeスポーツとのコラボレーションを担当してきた中で、そのコンテンツの世界観を壊さないことや、既存のファンに認められる施策にすることを大切にしてきたという。
そんな中、2年前にQuestを購入して以来VRを楽しんでいた小山田さんが、横須賀市がメタバースに進出するにあたっても既存のコミュニティに受け入れられる施策にしたいと常に意識してきたとのこと。自身がもともとゲーマーだったこともあり、アバター改変にドハマりしてしまったというエピソードが出ると「やっぱりこちら側の方なんだ…!」という安心感を覚えた。
豪華クリエイター陣とのコラボレーション
街の中心あたりの広場ではスタッフクレジットを見ることができるが、今回、ドブ板通りのリアルなテクスチャや造形をワールドに落とし込んだりリアルな食べ物のモデルを制作したりBGMを制作したりと、ワールド制作だけでも写真に映っている8名のクリエイターが参加している。
しかしもちろん参加クリエイターはそれだけではなく、スカジャンのモデル制作や、動画の制作など、総勢70名を超えるクリエイターが参加しているという、ひとつのワールドでいえばかなりのビッグプロジェクトだ。
そんなプロジェクトのプロデューサーは横須賀市観光課の小山田さんであり、その根本には「横須賀市が観光地として周知できていない課題」という明確な課題があったところが、今回お披露目会で回ったワールドやプロジェクトに感じる情熱の正体だ。
つまり、なんとなくVRでアピールしたいといったところが全くなく、VRChatで普段遊んでいる方に楽しんでもらえる場所を作るという横須賀市の本気度の現れなのだろう。だからこそ伝わってくる街としての魅力や、ここ行ってみたいなと思わせるプロジェクトだと感じる。
(TEXT by ササニシキ)
●関連リンク
・メタバースヨコスカ 公式サイト
・メタバースヨコスカ 公式Booth
PANORA
XR/VTuber/メタバースの専門ニュースサイト
横須賀市がVRChat上で70名を超える豪華クリエイター協業で本気の観光PR!「メタバースヨコスカ」のここがすごい!
神奈川県横須賀市は10月27日にVRChat上でワールド「Dobuita & Mikasa World」をグランドオープンした。本ワールドはドブ板通りエリア、三笠公園エリアの二つのエリアから成るが、ドブ板通りエリアは先にオープンしており、27日20時に三笠公園エリアの公開とともに、グランドオープンを記念するお披露目会を行った。
地方自治体のメタバース活用事例は大阪府大阪市が国産メタバースプラットフォームCluster上にバーチャル大阪を展開したり、VRChat上の即売会バーチャルマーケットにて静岡県焼津市や大阪府泉佐野市が出展するなど、コロナ禍以降いくつもの事例はあった。しかし、自治体公式としてVRChatのワールドをオープンしたり、スカジャンをバーチャルファッションとして展開したりといった、VRChatを基点とするカルチャーに沿った形で展開している都市はこれまでなかった。
日頃VRChatで遊んでいる方なら少し見て回るだけでも丁寧な作りこみを感じると思うが、Quest単体でもワールドに入れるように対応されているというから驚きだ。横須賀グルメを食べるギミックがあったり、記念艦三笠内部に入れるなど見どころが多く、ワールド容量が200GB程度とはとても思えなかった。
しかも、アバター用ファッションのアイテムとして作られた横須賀が発祥の「スカジャン」はなんと無料で配布されるという。一体、横須賀市がVRChat上のワールドとしても普通に楽しめるクオリティのワールドを用意して表現しようとしたものは何なのだろうか?
そぞろ歩きに船内見学! ドブ板通りと三笠公園を観光しよう
まずは、ワールドの楽しいポイントからお伝えしたい。メタバースヨコスカのすごいポイントはいくつかあるが、とにかくワールドの作りこみが素晴らしいので、歩いているだけでも楽しめるはずだ。
リアルなドブ板通りの街並みと、街の上をモノレールが走る近未来都市的なヴィジュアルの融合が面白い。メタバースヨコスカ プロデューサーの横須賀市観光課 小山田さんによると、「リアルな横須賀をそのまま再現するのではなくて、メタバースという世界観に落とし込んでいただいた」とのこと。Quest対応するなどの制限がある中でできる表現を日々ディスコードで話し合って詰めていったという。
自治体もディスコードでやり取りをしていると思うと勝手に親近感が湧いてしまう。
観光案内所のような場所にドブ板通りの由来や横須賀グルメについての紹介パネルがあるが、ただパネルが置いてあるだけではない!
ここに置いてあるバイクは手で持って動かせるので、好きな場所に置いて写真を撮れるようになっている。お披露目会では、おきゅたんが偶然触ってしまったことからポーズを取る場面も。
このバイクはキーヴィジュアルのバイクを模して造られたものだという。横須賀らしさを感じられるかっこいいコンセプトアートとして描かれたイラストから生まれたバイクなので、もちろんメタバースヨコスカにぴったり合う。ぜひ、好きな場所にバイクを持ち運んで写真を撮って欲しい。
ここからは横須賀グルメのお店をご紹介!
よこすか海軍カレーはスプーンを使って食べるギミックがあるほか、カレーと牛乳を合わせていただく食文化も表現されており、席には牛乳が置かれている。また、この牛乳は細かいことに飲むことができる。食べたり飲んだりできるギミックがあると楽しいですよね。
「ヨコスカネイビーバーガー」のお店ではなんと、自分たちでパティを焼いたりして作って遊ぶことができるギミックが。もちろん食べることもできる。
店内にはジュークボックスが置かれており、現在は動いていないが、ゆくゆくはアップデートされて曲が流れるという。11月にはライブイベントが実施されるということなので、イベントに出演したアーティストの楽曲が流れるのだろうか? 気になるところだ。
「三笠公園エリア」の入り口には物産展のように、横須賀近郊のグルメが置かれている。こちらにはドブ板通りのお店にあるようなギミックこそないが、精巧に作られた葉山の名店マーロウのプリンや、三崎名物のマグロ丼などを手にもって見ることができる。
なんと、今まで紹介したよこすか海軍カレーや、ヨコスカネイビーバーガーなどのアイテムはBoothで無償配布されている。利用規約によると使用権利もかなり自由に設定されており、ワールドに設置するほか制作したゲームに使用するなどクリエイティブ活用に役立てて欲しいとのことだ。これも横須賀市の魅力を知ってもらうための施策の一環だという。
●アセット
・よこすか海軍カレー
・ヨコスカネイビーバーガー
記念艦三笠へ行こう!
三笠公園エリアに入るとまず見えるのが、存在感抜群の記念艦三笠。三笠公園には第一次世界大戦時代の戦艦三笠が見学できるように保存されているが、実際の三笠同様にこちらも内部を見学できる。
三笠の内部に行くには、広場にあるテレポートのスフィアに触れることで移動できる。
地上からだと遠くて見えなかったが、内部に入るとしっかりと「Z旗」がはためいているのが見える。「皇国の興廃この一戦にあり」という名文とともに掲げられ、当時最強とうたわれたロシアのバルチック艦隊を破った、かっこよすぎる代物だ。
船内にもテレポートスフィアがあり、艦長室や船尾へ行くことも可能。VRChatならカメラをドローンのように動かして普段は絶対撮れない位置からも写真を撮れるのでおすすめだ。
なお、一度艦長室方面に行くと再び広場に戻ってからでないと船内に入れないので、友達と遊びに行く際ははぐれてしまわないように気を付けよう。
東郷平八郎が指揮をとっていたという艦橋に出ると、ワールドに入った時から上空を走っているのが見えていたモノレールが近くを通る。実はこのモノレールは未来の京急電鉄の車両をイメージしたものだという。
この未来の京急は、通称「ドレミファインバーター」の音を鳴らしながら走行しているのが特徴。このドレミファインバーターとは京急電鉄の車両独特のインバーターで、振動ノイズが音階になるように調整されており、その音がファンから「歌う列車」と愛されていたが、2021年に全ての車両が惜しまれつつ引退した。
つまり、世界で唯一歌う列車が走っているのはメタバースヨコスカだけということになる。夕暮れの風景も相まって、なんともエモい情景だ。走行中の音にもぜひ、注目してみよう!
最後は主砲の下で集まった全員で記念写真を撮影(一部の方が距離の設定で映っておらず申し訳ありません)。大人数で敬礼すると雰囲気が出てしまって面白い。
最初から最後まで、ずっと楽しいお披露目会だった。
作ったり食べたりできるギミックや内部を歩ける三笠など見どころたっぷりだが、さらにQuest対応までされているのが本当に驚きだ。
しかし、この記念艦三笠をよく見ると浮いているのがなんとも気になる。今後の展開が楽しみだ。
スカジャン絵師×アーティストコラボの「スカジャン」が無償配布
ここまで見どころたっぷりの「Dobuita & Mikasa World」を紹介したが、先ほどからスカジャンを着ているアバターが多く映っていたと思う。それはこのメタバースヨコスカではワールドを発表しただけでなく、横須賀発祥のアパレルアイテム「スカジャン」をバーチャルファッションアイテムとして展開しているからだ。対応アバターは桔梗、まめひなた、水瀬などの人気アバター15体に及び、こちらも横須賀グルメのモデル同様になんと無償提供!
今回のお披露目会では、スカジャンの着用モデルとしてメタバース上のモーションアクターチームとして活動する『カソウ』舞踏団よりyoikamiさん、kouaさん、えーすけさんが登場。かっこよく、そしてかわいくスカジャンを着こなしていた。
スカジャンといえばサテン生地に大胆に入った刺繍だが、スカジャン絵師の横地広海知さんとVRアパレルブランドEXTENSION CLOTHINGのアルティメットゆいさんによるコラボレーションによって素敵なデザインが実現。バリエーションも豊富なので自分好みのスカジャンを探せるのが楽しい。
また、アバター用の衣装やギミックの導入ツール「Modular Avatar」に対応しており、対応するアバターのものであればドラッグ&ドロップの操作だけで着せ替えられるのが嬉しい。女性アバター用、男性アバター用どちらもインナーやボトムスとセットになっているため、Unityの操作に慣れていなくても簡単にスカジャンファッションを着用できる。
もちろん、アバター改変に慣れている方ならスカジャンだけをアバターに着せる改変も可能。
今回、私が普段使っているアバターは対象外だったため、対応アバターの杏里君にスカジャンを着せてお披露目会に参加した。スカジャンを着せるだけで雰囲気が一変して楽しいので、改変に慣れている方はぜひ着せてみて欲しい。
なんと、改変のためのアバターを持っていない方向けに、オリジナルのVRoidアバターも無償提供。
こちらもスカジャン絵師の横地広海知さんによるデザインで、VRoidモデルの製作はLUCASさんが担当。LUCASさんによると「VRoid史上最高のスカジャンを目指した」とのこと。
●スカジャン
・DOBUITA STYLE 【for Woman】
・DOBUITA STYLE 【for men】
・メタスカオリジナルVRoidアバター
「Dobuita & Mikasa World」には、これらのスカジャンを見れるお店もあるので、お店に行ってからダウンロードするのもおすすめだ。
まめひなたが自然とつかむチェーンのきらきらとした金属の質感や、ボトムスのダボっと感のリアルさに思わず目が行くが、yoikamiさんのまめひなたがとにかくかわいかった。
また、店内にはスカジャンと合わせられるコラボアイテムも展示されているので要チェック。
スカジャンに合わせて辛めのコーディネートを楽しめるMelty Lilyのキャミソール+デニムや、スカジャンのコーディネートにぴったりのLemiel_atelierによる髪型のセットがある。
女性用の髪型として、ポニーテールが用意されているのがかわいい!
●コラボアイテム
・Lace up Camisole & Denim Full Pack:2500円、単体(森羅、萌、マヌカ、桔梗):1000円)
・Reve Hair(ポニーテール) Reve Hair+小物:800円、Reve Hair単体:640円
・Abel Hair(ショートマッシュ) Abel Hair+小物:800円、Abel Hair単体:640円
お店を出てすぐのところにあるグラフィティアートの前で撮影タイム。すると「ここで踊ったらめちゃくちゃ絵になってしまうのでは」との声にyoikamiさんがダンスを披露すると、一気にヨコスカ感が!
「これだけ動いても全然破綻しないです」というダンサーならではの感想とともにハイキックを繰り出すところを見ると、さっきまでまめひなたでひたすらかわいく振舞っていた人とは思えない…!
横須賀市が「メタバースヨコスカ」に託した想いとは
ここまで、「Dobuita & Mikasa World」のワールドの面白さやスカジャンのかっこよさについて紹介してきたが、ある自治体による公式ワールドと考えると、単に再現するだけでなくちょっと近未来調にしていたり、ファッションアイテムの無償配布をするなど、VRChatのカルチャーに深く寄り添っている印象を受けた。
メタバースヨコスカ プロデューサーの横須賀市観光課 小山田さんによると、「横須賀市は軍港やカレーの知名度はあるのですが、観光地として周知できていないのが課題」とのこと。メタバースヨコスカプロジェクトはそんな課題を解決するための施策のひとつとして、横須賀市の観光スポットとしての魅力を知ってもらうために「Dobuita & Mikasa World」公開、スカジャン無償配布、ライブイベントの実施という三つのポイントを軸で始動したという。
ライブの会場はいかにもなスピーカーが並んでいる、記念艦三笠の前のステージ。
JOHNNY HENRY、93poetryなど、VR音楽シーンの実力派がそろう約二時間のライブは、11月4日(土) 20:30開場。先着30名の早い者勝ちという狭き門だが、ぜひトライしてみよう。
また、今後もワールドのアップデートを予定しているほか、12月には横須賀市の観光スポットとして人気の「猿島」もオープンするという。これだけ見どころたっぷりだったのに、まだまだイベントが控えているというのは、ただごとではない情熱を感じる。
いくらVRChat上で観光スポットの魅力をPRすると言ってもここまでのものを「ただVRで観光PRしたいから」というところから作れないのでは? と思い小山田さんに伺ったところ、これまで横須賀市役所での仕事でサブカルやeスポーツとのコラボレーションを担当してきた中で、そのコンテンツの世界観を壊さないことや、既存のファンに認められる施策にすることを大切にしてきたという。
そんな中、2年前にQuestを購入して以来VRを楽しんでいた小山田さんが、横須賀市がメタバースに進出するにあたっても既存のコミュニティに受け入れられる施策にしたいと常に意識してきたとのこと。自身がもともとゲーマーだったこともあり、アバター改変にドハマりしてしまったというエピソードが出ると「やっぱりこちら側の方なんだ…!」という安心感を覚えた。
豪華クリエイター陣とのコラボレーション
街の中心あたりの広場ではスタッフクレジットを見ることができるが、今回、ドブ板通りのリアルなテクスチャや造形をワールドに落とし込んだりリアルな食べ物のモデルを制作したりBGMを制作したりと、ワールド制作だけでも写真に映っている8名のクリエイターが参加している。
しかしもちろん参加クリエイターはそれだけではなく、スカジャンのモデル制作や、動画の制作など、総勢70名を超えるクリエイターが参加しているという、ひとつのワールドでいえばかなりのビッグプロジェクトだ。
そんなプロジェクトのプロデューサーは横須賀市観光課の小山田さんであり、その根本には「横須賀市が観光地として周知できていない課題」という明確な課題があったところが、今回お披露目会で回ったワールドやプロジェクトに感じる情熱の正体だ。
つまり、なんとなくVRでアピールしたいといったところが全くなく、VRChatで普段遊んでいる方に楽しんでもらえる場所を作るという横須賀市の本気度の現れなのだろう。だからこそ伝わってくる街としての魅力や、ここ行ってみたいなと思わせるプロジェクトだと感じる。
(TEXT by ササニシキ)
●関連リンク
・メタバースヨコスカ 公式サイト
・メタバースヨコスカ 公式Booth