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イムデトラ(タルラタマブ)の作用機序【肺がん】

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2024年12月6日、厚労省の薬事審議会医薬品第二部会にて「がん化学療法後に増悪した小細胞肺がん」を対象疾患とするイムデトラ(タルラタマブ)の承認が了承されました!

アムジェン|申請のニュースリリース

原人では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名 イムデトラ点滴静注用1mg/10mg
一般名 タルラタマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来
製造販売 アムジェン(株)
効能・効果 がん化学療法後に増悪した小細胞肺がん
用法・用量 通常、成人にはタルラタマブ(遺伝子組換え)として、
1日目に1mg、8日目に10mgを1回、1時間かけて点滴静注する。
15日目以降は1回10mgを1時間かけて2週間間隔で点滴静注する。
収載時の薬価
発売日

 

イムデトラは国内初となるDLL3CD3の二重特異性抗体です。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
二重特異性抗体は最近続々と登場していますよね。小細胞肺がんにおける二重特異性抗体は初の登場です!

 

 

今回は小細胞肺がんとイムデトラ(タルラタマブ)の作用機序・エビデンスについて解説です!

 

肺がんの分類について

肺がんは性質や薬の効き方によって“非小細胞肺がん”と“小細胞肺がん”に分類されています。

早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
この分類によって使用できる治療薬が異なりますが、今回は小細胞肺がんを解説していきます。

 

非小細胞肺がんについては、以下の記事をご参照ください。

ライブリバント(アミバンタマブ)の作用機序【肺がん】

続きを見る

 

小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)

切除不能な小細胞肺がん(進展型小細胞肺がん)の場合、抗がん剤による化学療法が基本です。一次化学療法としては主に以下があります。1)

  • プラチナ製剤(カルボプラチンまたはシスプラチン)+エトポシド療法+免疫チェックポイント阻害薬
  • プラチナ製剤(カルボプラチンまたはシスプラチン)+エトポシドまたはイリノテカン療法
  • カルボプラチン+エトポシド療法

 

免疫チェックポイント阻害薬としては、イミフィンジ(デュルバルマブ)テセントリク(アテゾリズマブ)が使用可能です。

イミフィンジ(デュルバルマブ)の作用機序と副作用【肺/胆/肝/子宮体がん】

続きを見る

 

木元 貴祥
木元 貴祥
上記の治療に抵抗性を示した場合、その後の治療選択肢は限られていました。

 

イムデトラは、プラチナ製剤による治療歴を有する小細胞肺がんに対して、単剤で治療効果が期待されている薬剤です!

 

イムデトラ(タルラタマブ)の作用機序:DLL3/CD3二重特異性抗体

体内のがん細胞を除去する免疫細胞としてT細胞やNK細胞がありますが、T細胞は細胞膜表面に「CD3」と呼ばれるタンパク質を発現していることが知られています。

また、小細胞肺がん細胞の約85%~94%は細胞膜表面に「DLL3(Delta Like Ligand 3:デルタ様リガンド3)」と呼ばれるタンパク質を発現していて、正常細胞には存在しないことから、小細胞肺がん治療のターゲットとされていました。2)

DLL3(Delta Like Ligand 3:デルタ様リガンド3)は小細胞肺がんによく発現している

 

イムデトラは小細胞肺がん細胞のDLL3を認識する抗DLL3抗体と、T細胞のCD3を認識する抗CD3抗体を組み合わせた構造を有しています。

 

イムデトラ(タルラタマブ)の構造

 

T細胞は体内のがん細胞を発見して除去してくれる免疫細胞ですが、小細胞肺がん細胞はそれから逃れようとしています。

 

イムデトラは小細胞肺がん細胞のDLL3とT細胞のCD3を共に認識することで、小細胞肺がん細胞とT細胞に架け橋を形成します。小細胞肺がん細胞とT細胞が連結することで、小細胞肺がん細胞は逃げられなくなります。

 

イムデトラ(タルラタマブ)の作用機序:DLL3とCD3の二重特異性抗体

 

木元 貴祥
木元 貴祥
小細胞肺がん細胞とT細胞の橋渡しをするイメージですね。

 

その結果、小細胞肺がん細胞に対するT細胞の攻撃が促進され、さらにADCC(抗体依存性細胞障害)活性やDCD(補体依存性細胞障害)活性によって小細胞肺がん細胞の増殖を抑制できると考えられます。

 

エビデンス紹介:DeLLphi-301試験

根拠となった臨床試験を紹介します(DeLLphi-301試験試験)。2)

本試験は、プラチナ製剤を含む少なくとも2つ以上の治療を受けた小細胞肺がん患者さんを対象に、イムデトラ(10mgまたは100mg)を2週毎に投与した際の有効性と安全性を検討した第Ⅱ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「奏効率」とされ、結果は以下の通りでした。

  • 10mg群:40%
  • 100mg群: 32%

 

木元 貴祥
木元 貴祥
10mg群の方が高い結果ですね。無増悪生存期間も10mg群の方が長い傾向でした。

 

副作用

後日更新予定です。

臨床試験ではサイトカイン放出症候群(CRS)が認められていましたので、注意が必要だと思われます。

 

用法・用量

通常、成人にはタルラタマブ(遺伝子組換え)として、1日目に1mg、8日目に10mgを1回、1時間かけて点滴静注します。

15日目以降は1回10mgを1時間かけて2週間間隔で点滴静注します。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

イムデトラはこんな薬

  • 国内初のDLL3とCD3の二重特異性抗体
  • プラチナ製剤の治療歴のある小細胞肺がんに対して効果が期待されている
  • 2週毎に点滴静注する
  • サイトカイン放出症候群には注意が必要

 

他疾患では、いくつかの二重特異性抗体薬が登場していますが、小細胞肺がんでは初の登場となる見込みです。

また、イムデトラは小細胞肺がんで高発現しているDLL3をターゲットとしているため、期待できるのではないでしょうか。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
今後の適応拡大等も注目ですね!

 

以上、今回は非小細胞肺がんとイムデトラ(タルラタマブ)の作用機序・エビデンスについて解説しました♪

 

参考資料・論文等

  1.  日本肺癌学会|肺癌診療ガイドライン2024年版
  2. DeLLphi-301試験:N Engl J Med 2023;389:2063-2075

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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