物語と脳内恋愛の一回性
シンジにとっての綾波の一回性(インプロヴィゼーション)
先月の22日に居酒屋で録音していたヱヴァ破トーク*1のMP3を聴き返していて、綾波とシンジの台詞について語っていたこと――「私には代わりがいるもの」「違う、綾波は一人しかいない!」のシーンの文脈が気になった。
あれは、客観的な事象として「代わりが居る」とかじゃなくて、「俺が知ってる綾波、俺がフラグを立てた綾波はこれしかないんだから代わりなんて居る(=要る)ものか」という主観的なエゴでシンジさんは言っているわけだけど、そういう「主観で相手の実存に関わること」ができず、ついつい客観的な相対性の方が正しいような「気がしてしまう」のが90年代的だったんだろうな、と今にして思う。*2
ところで、作り手側の人間が「どうせみんな同人誌で補完するでしょ」などと言って作品の責任を放り出すのがぼくは大嫌いだが、そうした「二次創作とは、補完である」という考え方を拡大させたのが旧エヴァだったと思う(つまり、補完が必要とされる作品を提供してしまったのが旧エヴァだった)。
しかし張本人である庵野さんは、「売れるアニメにするなら同人誌がバンバン作られるようでないといけない」という考え方もしていたそうで*3、そんなことを考えながら新劇場版を作る裏には、「いくら同人誌が山ほど作られようが、それらを包括して排斥できるのはオリジナルの作品だけだ」という強い意志があるんじゃないか、とぼくは期待する。
二次創作に、「これひとつしか無い」という一回性は無いのだから。
人間がコミットメントできる世界はひとつだけで、他は全て想像や空想や、可能性に留まるものでなければならない。
物語を提供する側は、そこでウソをついてはいけないのだろう。
脳内恋愛ゲームの一回性
ところでいつからの流れなのかはわからないが、「直前のセーブポイントに戻る」機能を封じたギャルゲーが増えているようだ。
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ドリクラやラブプラスがそうで、電源を切ったりしても「電源を切った」という選択が残ってしまうだけで時間は前に進み、以前のセーブポイントに戻ることはできない。
最初からデータを作り直すことは可能でも、一度作成したデータは、一回性が保護されている。イベントは全て「かけがえのない一期一会」であり、キャンセルが絶対利かないようになっているのだ。
それはあたかも、一度綾波を死なせることで現れる「三人目の綾波」は、もう元の綾波ではないのだ、という信念と重なってくるように思える。
今は、物語の形式も一回性を重視するように進んでいるわけだが、脳内恋愛とゲームの関係も、そっち方向を求める勢いがあるのかもしれないな。