※本稿は、田中知子『口下手さんでも大丈夫 本音を引き出す聞き方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

「もし」であえて非現実的な質問を
あなたがお客様や相手に質問するとき「もし」をどのくらい使っていますか?
「いつまでに何をしたいですか」と問題を洗い出して、そのためのタスクを出してと現実的なことを聞くだけになったらもったいないです。
ビジネスのシーンで「もし」は効果的です。
「もし」を使うと現実から離れて何でもOKなので自由な発想が浮かびます。
「もしお客様が車を購入されるとしたら何色がお好みですか?」
「もし休みが1カ月あって海外旅行に行けるとしたらどこに行きたいですか?」
「もし声の悩みが何でも解決できるとしたら、一番に何を解決したいですか?」
お客様へのテストクロージングにもなります。「もし」という質問は「そうではない」選択肢もあるので、あくまでも逃げ場を用意して楽な状態で話してもらえます。また、「仮定の話」だからこそ、言いたい放題に言える。思わず「本音が見えてくる効果」があるのです。お客様の潜在的なニーズを察知できる可能性もあるので、あえて非現実的な質問をしてみてください。思いもよらない答えが返ってくるかも。
「もし明日1億円入るとしたら、何がしたいですか?」
「今、社員が10名いますが、もし100名になるとしたらどんなことしたいですか?」
「もし『マツコの知らない世界』に出演できるとしたら何の専門家で出たいですか?」
何だかワクワク度が上がりませんか? 特に3つめの質問は「こんなこと初めて聞かれた。私だったら何だろう。初めて考える」なんて言われます。
相手にいい想像させるって、すごく大事なのです。

気楽に本音が出る
妄想話は面白いですよね。何でもありですから。想像がモクモクと膨んで話も盛り上がる。「そうなったら楽しいね」って。研修やセミナーを運営する梅ちゃんという友人はセミナーの最後にこんなことをしています。参加者全員に目をつぶってもらい
「あなたは何でもできる人です。
もしあなたが偉大なチームをつくるとしたらどんなことを達成したいですか?
もしあなたの夢が叶ったとしたら? 日常がどんなふうに変わっているでしょう。
達成したそのとき、目の前には誰がいてどんな声をかけてくれていますか?
それを聞いてどんな気持ちになりますか?」
と聞いています。私は何度もこの想像体験をしていますが、本当に現実になったかのように顔がほころんでしまいます。「もし」の力は無限です。
私は2024年4月に起業し(株式会社ちゃんこえ)、いろんな方から
「今後は会社をどう大きくしていく予定ですか?」
「3年後、この会社をどうしたいと思っていますか?」
「将来の展望は?」
と聞かれます。何だか襟を正して真面目に答えようと思ってしまうのですが、
「もし、『ちゃんこえ』がどんな企業とでもコラボして何でもできるとしたら何をやりたい?」
と聞かれるとワクワク度がドーンと上がります。何の制限もないし何を考えてもいいのですから。「どんな企業とでもできるなんで……」と楽しくなっちゃいます。スッと「日本文化を広める会社とコラボして海外でも大相撲の魅力を伝える講演がしたい」と出てきました。楽しい質問をされると、答えもスルスル出てくるもの。
「もし」という話と「3年後どうしてるか?」は一緒の意味。ですが、受ける印象が全く違って気楽に答えやすくなります。あなたも「もし」をうまく使って相手の本音を聞いてみてくださいね。