「チャットGPT」や「生成AI」が爆発的に普及し、デジタルでアイデアを収集するスピードは飛躍的に向上しました。一方で、「情報が多すぎて頭の中がごちゃごちゃ」「新しいアイデアに結びつかない」と感じることも増えていませんか?
本記事では、そんな状況を打破するために“あえて手書き”を活用するノート術——「スパイダーマップ」の魅力に迫ります。AIツールで瞬時に得られる情報を、紙とペンで整理することで、新しいアイデアがスイスイと湧いてくる。その理由と、具体的なやり方をご紹介します。
デジタルとアナログ、それぞれのメリット
デジタルには情報収集の「利便性」が、アナログにはアイデアを形にしやすい「創造性」があります。ふだん私たちはデジタルの恩恵を十分に享受していますが、実はアナログにも見逃せないメリットがあるのです。
習慣化コンサルティング代表の古川武士氏は、こう指摘します。
私たちが潜在能力や直感、気づき(洞察・着想)を引き出すための1つの鍵は、『大脳基底核』を刺激することだと言えるようです。(中略)頭の中だけで考えるより、手を動かしながら考えた方が『大脳基底核』を刺激できるということであり、インスピレーションも湧きやすいということです。
(大脳基底核:脳の「潜在学習と直感の両方の神経基盤」となる部位)*1
指を動かすだけならスマホやPC操作でも同じですが、紙にペンで書く行為はそれ以上の効果をもたらします。東京大学大学院などの共同研究でも「紙のメモは記憶力や創造性を高める」と明らかになりました。「電子機器にはない紙の特性が、五感を通して空間的な手がかりを与える」というのです。*2
だからこそ、デジタル全盛の今こそ「あえてアナログ」を取り入れる意義が増しているのです。
デジタルで情報を集め、アナログで深堀りする
デジタルの「効率の良さ」とアナログの「発想力」を掛け合わせる方法として、今回はデジタルで豊富な情報を収集し、それをアナログのスパイダーマップで整理・発展させる2ステップを実践してみました。
1. デジタルで情報を収集
- 生成AIやニュースサイト、Webメディア、ポッドキャストなどから幅広く情報を集める
- 得られた情報は、キーワードごとにカテゴライズしてメモし、検索しやすいように整理
2. アナログでスパイダーマップを作成
- 紙とペンを用いて、中心にテーマを書き、放射状に関連キーワードやアイデアをつないでいく
- 書き足しながら思考を深め、アイデアをさらに拡張する
スパイダーマップとは、主要なテーマを中央に置き、そこから関連するアイデアを枝のように伸ばして描く「コンセプトマップ」の一種。クモの巣状のレイアウトが情報のつながりを直感的に示してくれるため、思考がスムーズに広がっていきます。紙面いっぱいに書き足していくうちに、新たな視点やアイデアが見えてくるそうです。
スパイダーマップで発想力を鍛えてみた
実際にデジタルで情報を集め、アナログのスパイダーマップで発想力を鍛える実践を行ないました。
執筆のアイデアを得るために、「自己啓発やキャリアアップに関心があるビジネスパーソンが読みたい記事」についての情報を集めることにしました。
紙面のまんなかにテーマを書きます。紙面いっぱいに書き足したいので、普段よりも少し大きめのA4サイズのルーズリーフを使ってみました。
次に、生成AIを活用して関連するキーワードを探し、紙面まんなかに書いたテーマに書き足していきます。
このとき、生成AIには以下のプロンプトで案を出してもらいました。
【入力プロンプト】自己啓発やキャリアアップに関心があるビジネスパーソンが読みたい記事のテーマを10個提案してください。
生成AIから提案されたテーマのなかから、関連すると思われるキーワードを書き足していきます。
書き足したキーワードを自分なりに深堀りし、思いつくままに緑色のペンでさらに書き足しました。
電車移動や仕事の合間など、ちょっとしたすきま時間を使って情報を収集。収集した内容はスマートフォンのメモ機能に記録し、振り返りやすいようにキーワードごとにカテゴライズしています。
こうして収集した情報をスパイダーマップに書き足し、さらに新たに思いついたキーワードをつないでいく作業を繰り返します。書き足すタイミングは、すきま時間や一日の終わりなど、自分に合ったペースで続けられます。その様子がこちらです。
この実践で特に意識したポイントは、大きく2つあります。
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情報の検索性を高める
スマートフォンのメモ機能を使い、収集した情報をキーワードごとにカテゴライズして保存する。 -
キーワードを色分けする
スパイダーマップに書き込む際、情報収集で得たキーワードと、自分で思いついたキーワードを区別するために色を変える。
キーワードを色分けする目的は、思考パターンを可視化して「どの部分で新しい視点やアイデアが生まれているのか」を把握しやすくするためです。
たとえば、緑色を多く使ったトピックは、新たな発想を得やすいことがひと目でわかります。つまり、「執筆のアイデアを探す」という今回の目的を達成するには、緑色のキーワードを重点的に見直せばよいのです。
実践してわかったメリットとデメリット
デジタルとアナログを組み合わせてみた結果、以下のメリットとデメリットを感じました。
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1 思考の整理がしやすい
- 自分の考えを可視化することで、頭の中の情報が整理される。
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2 テーマ全体を把握しやすい
- 手で書くことで、「どこに何を書いたか」を覚えやすく、全体像をつかみやすい。
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3 新しいアイデアが浮かびやすい
- キーワードに色分けをしたり書き足す過程で、発想がどんどん広がる感覚がある。
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1 作業場所を選ぶ
- 紙とペンが必要なので、外出先で急にアイデアが浮かんでもメモしづらい。
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2 紙面に限りがある
- 思考が広がると、紙がすぐにいっぱいになってしまう可能性がある。
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3 デジタルとの連携が面倒
- 手書き内容をデジタルで検索したい場合、スキャンなどの手間がかかる。
これらの特性を踏まえて、使いやすい方法を工夫しましょう。たとえば、ルーズリーフや1枚の紙にスパイダーマップを作って折りたたんで持ち歩けば、外出先でもメモを追加できます。テーマごとに紙を分けておけば、広げすぎて紙が足りなくなる問題も防げるでしょう。
スパイダーマップやデジタルツールの使い方に、特に決まりはありません。実践しながら、自分に合った形を見つけてみてください。
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スパイダーマップは、シンプルでありながら深い思考を促進する方法です。アナログとデジタルを上手に組み合わせることで、より効率的にアイデアを整理し、発展させることができます。自分のペースで実践し、ぜひアイデアの広がりを楽しんでください。
※引用の太字は編集部が施した
*1 ダイヤモンド・オンライン|直感力と創造力を鍛える最もシンプルかつ簡単な方法とは?
*2 東京大学|紙の手帳の脳科学的効用について
*3 Asana|コンセプトマップとは?種類やメリットなどを紹介
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。