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とかち子育て応援ラボ

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 外国語教育の重視など、日本とは大きく異なる特徴があるヨーロッパの教育制度。帯広市生まれで高校卒業後にヨーロッパへ渡り、現在、2人の子育てに励むピアニスト加藤麻理さんに、現地の教育事情を聞いた。
(松田亜弓)
【2018年9月28日付十勝毎日新聞に掲載】


【写真説明】ピアニストとしての活動と2人の子育てを両立する加藤さん

/遊びから議論へ 英語は自然に/

 |ドイツ語を母語とするオーストリアはもちろん、ヨーロッパは幼い頃から外国語教育に力を入れていると聞きます。

 オーストリアでは、幼稚園で英語教育の土台がつくられます。英語で歌ったり、遊んだり、ゲームをしたりして自然に英語に触れるチャンスが与えられます。

/教科書使わず/

 小・中・高校共に4年ずつという制度ですが、小学校では毎週1時間英語の授業があり、単語を覚えたり、アニメを英語で見たりします。教科書はなく、単語も食べ物、動物、乗り物など遊びながら覚えるので、子どもたちはとても楽しみだったようです。

 中学になると教科書があり、授業は先生も生徒も全て英語のみ。DVDを見てディスカッションしたり、要約したりすることが多く、中でも年何回か行く英語の演劇鑑賞は楽しみの一つだそうです。

 娘の高校2年の修学旅行はイギリスでホームステイでした。予習としてイギリスの歴史を調べ発表したので、興味がより増したと言っています。英語は即戦力で使える、楽しい言語だと子どもたちが思っている印象を受けました。

 |家庭学習はいかがですか。

 数学を除き、ドイツ語やラテン語、英語は作文などを書く宿題が多いため、高校生の娘の自宅学習は一日1時間くらいでしょうか。毎日水泳のトレーニングに3時間半行っている中2の息子は自宅学習はほとんどせず、休み時間に終わらせて来ますから宿題は量より質という感じを受けます。塾に通っている子はほとんどおらず、留年ギリギリの子が慌てて通いだすケースが多いようです。飛び級もある代わりに留年になる生徒が毎年各クラス最低1、2人いるのでかなりシビアです。

 ただ、夏休みの宿題は一切ありません。オーストリアでは9週間夏休みですがバカンスに行ったり、アルバイトしたり、「とにかくよく遊べ!」と先生に言われます。

 |家での言語はどうしていますか。

 主人も日本人なので、家では「ドイツ語禁止、日本語オンリー」にしていました。また毎週土曜日片道2時間以上かけてドイツ・ミュンヘンの日本語補習校に通っています。最初のうちは宿題の多さと、現地校でのドイツ語の授業のレベルに苦労したようです。今は問題なく、自宅では逆に兄弟間でドイツ語で話してしまうことが多々あるようです。

 日本語とドイツ語の本をよく読み、娘は英語の文庫本も普通に読みますので、やはり母国語をしっかり親が教えるというシステムは、わが家では成功したのではないかと思います。

/学費負担なし/

 |学費についてはいかがでしょう。

 オーストリアやドイツでは小中高はもちろん大学も多くが国立ですから、学費はほとんど掛かりません。労働者が税金を払っている見返りとして、国が医療費と学費の自己負担ゼロになる社会保障制度は、ヨーロッパの素晴らしいシステムだと思います。

 |学校生活は。

 オーストリアの中・高校には部活動や課外活動はほとんどありません。個人で習い事を始め、学校が早く終わるので午後は各自サッカーなどの運動クラブに所属したり、音楽学校で楽器を習ったりします。

 中学校は午前7時50分から午後1時半まで休憩5分で6校時をこなし、給食なしで下校となります。午後の授業は週1回くらいでほとんどありません。息子の午後2時半からの水泳にも、お弁当を持って行って間に合います。一生懸命自分の好きなことに打ち込め、逆に何もすることがない子は遊びたいだけ遊べる自由なシステムです。

 |どのような子どもに育っていってほしいですか。

 日本の良さ、ヨーロッパの良さを知っているその経験を生かしながらも、他人への感謝、愛情を忘れず、世界に何か貢献していってほしいと思います。タフな身体と精神を養って、これからのグローバル時代の波にのまれず自分の考えを貫ける人になってほしいです。

<Profile>
 かとう・まり
 5歳から才養音楽教室(帯広)でピアノを始める。帯広柏葉高校を経て1988年に渡欧。ケルン音楽大学(ドイツ)を最優秀賞で卒業し、ハノーファー音楽大学院(同)で研さんを積んだ。2000年から、難関とされるザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学(オーストリア)の講師を務めている。夫と16歳の長女、13歳の長男の4人暮らし。

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