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経済合理性だけでは片づかない日米関係の現実 米国の反日感情と対峙した元外交官に聞く

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日米貿易摩擦解消のため市場開放策を説明する中曽根康弘首相(1985年、首相官邸。写真/共同)

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バイデン前大統領によって買収停止命令が出た日本製鉄によるUSスチールの買収計画は、トランプ大統領と石破首相による日米首脳会談をへて、日鉄が「買収ではなく多額の投資」をすることで決着することになりそうだ。
取引成立の条件として、トランプ大統領は日鉄による「大規模な投資」が必要だとしている。詳細はまだ不明だが、企業同士の契約に両政府が乗り出す異例の展開となった。
デジタル特集「日鉄の試練」4回目は、1980年代、反日感情が高まったアメリカで対米交渉に臨んだ元外交官の田中均氏に話を聞く。
【「日鉄の試練」ラインナップ】
2月14日(金) 日鉄とUSスチールに迫りくる「3つのシナリオ」
2月19日(水) USスチール「買収阻止」に追い込んだ労組の正体
2月20日(木) USスチール競争力向上に寄与しなかった保護政策
Coming Soon! USスチールへの「投資」と日本製鉄の事業戦略

――トランプ大統領と石破首相が会談し、日本製鉄がUSスチールを買収ではなく「投資」することで決着しました。この決着を、田中さんはどう評価しますか。

買収でない状態で日鉄は目的をどの程度実現できるか、トランプ大統領の土俵で協議するには困難もあるだろう。これまでの合意内容を大幅に修正することになるとすれば時間がかかるプロセスかもしれない。

しかし、鉄鋼への関税賦課など輸出環境がさらに悪くなっていく中で投資合意を作る意味は大きいのではないかと思うし、日米にとりウイン・ウインの結果となるのを期待したい。

――日米貿易摩擦が激しかった1980年代、田中さんは外交官として対米交渉の前線に立っていました。

当時のアメリカは貿易赤字と財政赤字の「双子の赤字」に苦しんでいた。アメリカは消費が旺盛な国。海外からモノを輸入しようとする力が非常に強い。おのずと貿易収支は赤字に振れ、性能の良い自動車や電化製品を低価格で売り込む日本に対する反感が高まっていた。日本との赤字は全体の4割に達していた。

そうはいったって、アメリカの消費構造が変わらない限り貿易赤字は解消できないことは自明だった。そう説明すると、アメリカの行政府では理解する人も多かった。

議会に対日差別法案

――では、誰が反日感情を煽っていたのですか。

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