自分は研究者に向いていない? 〜研究者に必要な資質とは〜
「自分って研究者になれるのかな?」
「研究者に向いていないのかも…」
こういう疑問を持っている理系学生は多いのではないでしょうか。
私も学位取得前、しょっちゅうこの考えても仕方がない問題を考えていました。
そして未だに考えてしまいます。学位をとってお給料をもらっているので研究者になったのは間違いないのですが、
「私これからちゃんと研究者として食べていけるのかな〜。」
「最悪、転職すれば何かしらの方法で食べてはいけるかなぁ」
とかたまーに考えます。
私自身、まだまだこの難問とは長いこと付き合っていかねばならないと思うので、
偉そうにブログに書けるような立場ではないのかもしれませんが、
僭越ながら私の考えを書かせてもらおうと思います。
誰も見たことのない世界が見たいか?未踏の地に立ちたいか?
私が研究者に必要だと考える資質はたったひとつです。それは、
「まだこの世界のだれも知らないことを、自分の手で明らかにしたい」
という欲求です。
これを備えた学生であれば、研究室に入りたての時に多少論文読むのが下手くそでも、当初与えられたテーマをぜんぜん自分のものにできていなくても、
指導者の力次第で、「研究によって新たな発見をし、それを発表する」ことを自力でできるレベルまで持っていけると考えています。
この世の中に、科学に関わる職業というのは実にたくさんあります。
TVディレクターは優れた科学番組を作りますし、サイエンスコミュニケーターは一般大衆と研究者の架け橋になります。エンジニアは研究者が発見した事実や理論などをもとに、新しい製品を作ります。
どれもとても魅力的で無くてはならない職業ですが、前人未到の地の景色を見れるのは、そこに最初にたどり着いた研究者だけです。
「今、この世界でたった一人、私だけが知っている事実がある。
自分がそれを、この手で明らかにした。」
私はこの状況にものすごくワクワクします。
この現場に自分が立ち会ったことはほんの数回しか無いのですが、
(そして後から勘違いだったとわかることも多くあるのですが)
私にとってあの興奮は、他の何にも代えがたいものです。
もう一度、あの瞬間に立ち会いたいという思いが、私に研究を続けさせているのかなー、と思います。
論文を読むのがうまいからと言って研究に向いているとは限らない
論文を早く正確に読む能力や、多くの論文を読む能力は、研究者を目指すならいつかは習得しなくてはならない能力です。(私は未だにこれらは苦手ですが)
しかし、この能力は訓練によって習得できます。
一方、「自分がこの手で新しいことを発見したい」と思えるかどうかは、本人の資質によるところが大きいように思います。この欲求がない人は、研究に対するモチベーションを維持するのが難しいので研究者にはならないほうが幸せかな?と思います。
たまに、研究をしている途中で
「自分は過去に誰かが明らかにした事実を知るのが好きなだけで、自分で新しいことを発見したいわけではなかったんだなぁ」
と気づいてしまう人がいます。
私はこれは不治の病だと思っています。
一度消えてしまった研究に対する心の灯を再びつけるのは容易なことではありませんし、それが本人のためになるのかどうかもわかりません。
ちなみに、こういった学生に向いている職業は結構たくさんあります。特許庁とか、研究を支援する機構などに就職するとこの手の人達は輝けると思います。
研究に向いているか向いていないかを本人以外は判断できない
私が研究者に必要な資質として考えているのは、上記に書いた通り一つだけなので、
そしてそれは、本人の気持ちの問題であって他人が判断できる事柄では無いので、
研究に向いているか向いていないかを他人が判断することはできないと思います。
研究を続けたいと言っている学生に対して、指導者が「君、研究向いていないね」というのは、自分の指導力不足を学生側の責任に転嫁しているように私には聞こえます。
以前のエントリーにもちょこっと書きましたが、学生に「研究向いていない」と言うのは、「指導しても意味が無い」と考えていることの現れだと思うので、指導放棄といっても差し支えないのではないかと思いますね…。
ただ、指導が難しい学生というのはたしかに居るような気はします。例えばすごく不器用な人とかは、実験が多い研究は学生も教える方も辛いだろうなぁ、と思います。でも、そんな不器用な人でもバイオインフォマティクスなどのコンピューター生物学で輝けるのが、生物系の良いところです。
最後に
「自分は研究者に向いているか?」誰もが通る悩みだと思います。
たくさん悩んでください。私もまだまだ悩みます。
でも、「他の誰でもない、自分の手で新しいことを見つけたいんだ」って思うのなら、
とりあえず後ろを見ずに先に進んでみるのはどうでしょう?
新しい発見が待っているかもしれません。
私も含めて研究者として生き残れるかはわかりませんが \(^q^)/
おわり
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