岡山大学の法人文書部分開示決定通知書に対する異議申し立ての内容
「各調査委員会の議事」、「著者から提出された画像」、および「解析を委託した業者に支払った金額」について、開示を要求する異議申立書を提出しましたので公開します。
以下は部分開示された文書です。
・各調査委員会の議事(文書番号2, 3, 4, 5)
文書2−平成25年度 第1回予備調査委員会(医系)議事要旨
文書3−第2回予備調査委員会(医系)議事要旨
文書4−第3回予備調査委員会(医系)議事要旨
文書5−第1回研究活動調査委員会(医系)議事要旨
・解析を委託した業者に支払った金額(文書番号20, 21)
文書20−見積書・請求書・納品書・仕様書
文書21−購入依頼書 支出契約決議書 債務計上票
(参考)画像解析業者の選定について
文書18−画像調査及び報告書作成について(依頼)
異議申立書
岡山大学情報公開窓口から申立人の片瀬久美子に送付された法人文書部分開示決定通知書で通知された決定について、以下の通り異議申し立てをする。
[1]文書番号2, 3, 4, 5について
出席者と議事が不開示とされたが、出席者は不開示のまま、議事について非公開とした決定を取消し、公開するとの決定を求める。
[開示しない部分]
議事のうち、調査委員の特定に繋がる情報、調査・事案処理の方法・方針、委員の発言・意見に係る記載
[不開示の理由]
「公開されることにより将来予定される同種の審議, 検討に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある情報であるため(法5条3号)」
[不開示決定に対する異議]
非開示とされた各議事について、
1. 調査・事案処理の方法・方針、委員の発言内容に係る記載は、各調査委員会での審議が適切に行われたか知る上で必要な情報である。開示された各議事はほぼ全てが黒塗りされているが、予備調査委員会では3回、本調査委員会(研究活動調査委員会)はたった2回しか開催されていなかった。予備調査委員会の議事録は調査対象論文が31本もあるのに議事録が第1回2ページ、第2回4ページ、第3回5ページ分しかなく、1つ1つの論文について十分に審議されたか否かが、現状の開示資料では明らかではなく、適切な議論がなされたか否かが判断できない。また、特に不正の有無について細部にわたり丁寧に慎重な審議を要する本調査委員会(研究活動調査委員会)では論文5本が審査されたが、第1回の議事録しかなく、しかも3ページ分しかない。これでは審議内容が適切か否かを判断することができず、かえって疑念を抱かせる原因となっている。したがって、貴大学は、審議過程及び内容の適切さを担保するためにも、当該資料を開示して審査が適正に行われたことを示す必要がある。
2. 発言者の特定をしなければ、審議内容を情報開示することにより、特定の者に不当に利益を与え、または不利益を及ぼすとは到底考えられない。仮に、社会の公器としとしての貴大学が、原則として開示すべき資料を、例外的に非開示とするために、このような主張を行うのであれば、具体的な根拠を示して主張する必要がある。そうでなければ、この主張自体が極めて不合理であり、世間から疑惑の目で見られることを、自ら容認することになろう。
3. 既に審議が終わり結論は岡山大学のHPでも公開されており、議事録が公開される事で未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報を公にすることで混乱を生じさせるおそれはない。
4. 将来に行われる類似の審議・検討・協議に係る意思決定に不当に影響を与えるおそれについては、研究不正事案というものは、事案ごとにその内容や性質が異なるものであり、それぞれ別件として個別に審議されるものであり、その都度適切に審議されることで問題は生じない。
5.岡山大学は、発言者が特定されないとしても、将来予定される審議においても委員の意見等が公表されることを前提に、委員が部外の評価等を意識して素直な意見を述べることを控える等、意思決定の中立性(独立性)が不当に損なわれるおそれがあると主張するとも考えられる。
しかしながら、発言者が特定されないのであれば、委員の意見等が公表されたとしても素直な意見を述べることを控えることは到底考えられない。もし意思決定の中立性(独立性)が不当に損なわれるとする主張がされるのであれば、発言者が特定されないのにも関わらず、素直な意見を述べることができないような調査委員を選任することを前提としており、専門家としての各調査委員を愚弄するものであり、そもそも調査委員会の適正さに疑義を生じさせるものである。一連の議事録の開示を拒むことは、研究不正を真摯に取り扱おうとする姿勢に真っ向から反するものである。さらに審議が終わった研究不正調査に関する議事録の公開は、将来他の研究不正事案を審議する場合の参考となりうるものであり、貴大学の対応は、評価されるものであれ、非難されることはありえない。
6.岡山大学は、審議、検討の内容を公にすることにより、調査にあたっての考え方、主張等が明らかになり、今後の同種の調査にあたり、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は不当な行為を容易にするおそれがあると主張するとも考えられる。 しかしながら、国立大学法人として、研究不正行為に真摯に対応しようとする姿勢を世間に表明したいのであれば、調査委員会の審理の適正さを担保する必要がある。特に、本件のように、世間の注目が極めて大きく、また、公開された本調査の対象となった5つの論文だけでも全てに大学理事・副理事が共著者として含まれており、調査委員会の審理が適正になされたかどうか、審議・検討した内容を公開しなければ、調査委員会の審理に逆に不信感を抱かせるものである。
7.岡山大学は、研究不正事案は、本件事案ごとに個別に審議されるものであるが、本件事案と類似する事案が全くないとは言えないこと、また、調査方針・手法には、他の事案調査に共通する部分もあると主張するとも思える。
しかしながら、そもそも「全くないとは言えないこと」を理由として非開示を主張することは、研究不正事案を真摯に対応する姿勢を放棄するに等しく、国立大学法人としてあり得ない態度である。独立行政法人は、原則として保有する情報を公開しなければならず、非開示はあくまで例外規定である。仮にこのような主張を行い非開示とするのであれば、岡山大学は、かかる法の建前を全く理解していないといえ、世間に対し、情報公開をする気がない大学であることを表明するに等しい。また、調査方針・手法自体は、調査委員会の判断の公正さを担保するために開示が必須であると考えられるのみに関わらず、開示を拒むことは、逆に調査委員会の判断に対する疑義を生じさせるものであり、非開示によりあたかも不正があったかのように流布されるおそれがあり、岡山大学にとっても著しく不利益になる可能性がある。
調査手法の開示は、例えば東京大学の「分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における論文不正に関する調査報告書(第一次)」の資料「不正な図の例」においても行われている。
http://www.u-tokyo.ac.jp/content/400007773.pdf これにより調査が適正に行われていることが示されており、こうした開示によって他の不正調査に影響が出ている問題も生じていない。
以上、1から7で述べた通り、法5条3号に該当する率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれや、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるものには、いずれも該当しない。
各議事は不正行為か否かの判定が適切に行われたかどうかを知る上で必要な情報であり、議事を公開することで当該委員会が研究不正事案に真摯に取り組んだ事を示し、結論に対する信頼を得ることができる。
発言者の個人特定ができる氏名等は伏せて、議事内容は公開すべきである。
[2]文書番号17について
「著者から提出された画像」が不開示とされたが、不公開とした決定を取消し、公開するとの決定を求める。
[開示しない部分]
すべて
[不開示の理由]
「不正行為が行われたと認定されておらず、知的財産保護の観点から、当該個人の権利・競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報であるため(法5条1号)」
[不開示決定に対する異議]
1. 論文は既に専門誌に掲載されており、公知のものとなっている。
2. 特に、本調査された5つの論文は、公開された「専門委員会による調査結果」によって調査対象論文が明かされており、その論文に掲載された画像の元となった生データを、知的財産保護の観点から隠匿する必要性はない。
3. 岡山大学は、生データは、解像度が高く、汎用性のある情報であり、既に公表されている論文の画像と同じものとして公にすることに支障がないとは言えないこと、また、開示した文書の取扱いには、法的な制限はなく、仮にインターネット上で公開された場合、悪意のある第三者がそれに加工を施し、あたかも不正があったかのように流布するおそれがあると主張するとも考えられる。
しかしながら、まず、「解像度が高く、汎用性のある情報」であることが、既に公表されている論文の画像と別異に扱いうる理由が不明であり、著しく不合理な主張である。加えて、公表されている論文の画像においても、悪意のある第三者がそれに加工を施し、不正があったかのように流布するおそれがあり、生データの開示を拒む理由にはならない。
そのため、岡山大学がこのような理由に基づき生データの開示を拒むことは到底許されるものではない。
4. 岡山大学は、不正がなかったと認定されているのみ関わらず、画像データが公表されることで、再び、当該調査事案が注目され、公表された一部の情報だけをもって誹謗中傷が繰り広げられる可能性があるとの主張を行う可能性もある。
しかしながら、そもそも当該調査事案は、現在非常に注目されており、調査結果が公表された当時とは全く異なり、画像データが公表されたからといって、「再び」注目されるというものではない。加えて、誹謗中傷が繰り広げられるというのも、単なる憶測の域を出ず、研究不正を厳に取り締まる立場にある岡山大学が、法的に公表が原則となっている情報を非開示とする理由としては、著しく正義に反するものである。
5. 生データの開示を求める理由は、切り貼りの疑義のある画像に関して、論文掲載用にパネルに組んだ画像の解析だけではなく、生データである元の画像を示すことで切り貼りの疑いをより強く払拭できるからである。不正のない画像であれば、それを公開する事でその信頼性を広く確認してもらう事ができるので論文著者にとってもメリットがある。論文著者側が自主的に公開し、それにより信頼性が確保された事例があるのでその資料を添付する(資料A, B)。例えば、論文30のFigure6のパネルBとCについて、添付資料Bの様に論文掲載用にパネルに整形する前の画像(生データ)を示すことによって、別々の画像を合成した(切り貼り)の疑いを払拭することができる(解説図を添付)。岡山大学が委託した画像解析業者の解析データでは、バックグラウンドの不連続が鮮明に検出されているにも関わらず、なぜか「不自然な結果を導き出せない」と判定しており、審査が適正に行われなかった疑念が生じている。
http://d.hatena.ne.jp/warbler/20150901/1441033645
また、予備調査で不正なしと判定された論文3に関しても、コントロールのバンド画像の使い回しの疑いが拭えない。 http://d.hatena.ne.jp/warbler/20150926/1443240118 各実験において毎回コントロール実験を実施していたことを示す実験ノートの記録とその時の生データを提示して疑念を払拭しない限り、著者らへの嫌疑が晴れない。論文著者から提出された画像(生データ)の開示を頑なに拒むならば、岡山大学の不正調査委員会による調査が不適切であったこと暗に認めるようなものである。
以上、1〜5に述べた通り、不開示の決定は妥当性を欠く。したがって、不正調査が適正に行われたかどうかを示すためにも「著者から提出された画像」は公開すべきである。
[3]文書番号20, 21について
金額が不開示とされたが、金額について非公開とした決定を取消し、公開するとの決定を求める。
[開示しない部分]
金額
[不開示の理由]
「金額は、委託業者の営業秘密にあたり、公開することで、当該法人の競争上の地位その他の正当な利益を害するおそれがあるため(法5条2号)」
[不開示決定に対する異議]
1. 民間企業間の取引ではなく、国立大学法人から委託業者に支払われた料金は税金から出されており、適切な金額であったかどうかを確認するために情報公開が必要である。
2. 開示された文書18において、研究交流部交流企画課長により、委託する解析業者には「高度な専門技術」と「高い機密の保持」が要求されるから「多くの業者を対象とする通常の手続きは望ましくない」という理由をつけて最初から1社に候補を絞って通常の手続きを経ずに決定されている。しかしながら、この業者が「高度な専門技術」を有していると指摘する根拠は一切明示されておらず、明らかではない。特に、当該業者は、[2]の5.でも指摘した通り、バックグラウンドの不連続が鮮明に検出されているにも関わらず、「不自然な結果を導き出せない」との判断を示しており、高度な専門技術を有するとは到底判断できないと考えられる。そのため、当該業者との間で、合理的な委託契約が締結されていたかを検証するため、委託金額を開示することにより、委託契約の適正さを検証する必要がある。
以上、1〜2に述べた通り、不開示の決定は妥当性を欠く。したがって、税金の使用が適正に行われたかどうかを示すためにも解析業者に支払った「金額」は公開すべきである。