東日本大震災の被害を受けた宮城県南三陸町で今月2日に開催された「春つげわかめまつり」の会場で、富山市大町の河西義一さん(72)、由美子さん(67)夫婦が能登の物産品を販売し、二つの被災地をつないだ。震災直後から30回以上も東北の被災地でボランティア活動を続ける2人は「体力が続く限り支援し続けたい」と決めている。

 2人は2011年3月11日の震災被害を報道で接し「いても立ってもいられない」と支援を決意。同4月には仲間とともにバスで宮城県石巻市を訪れ、生活物資の配布や炊き出しを行った。いざ被災地に立つと、あまりの惨状に「これは1回では終われない」と実感。以後、富山市のボランティア団体の活動に同行。仕事が休みの週末を利用し、片道約8時間をかけて石巻市や南三陸町に出掛けては、支援活動を続けてきた。

 徐々に顔見知りが増え、被災者が「友達のような関係」になると、今では「友達に会いに行くような気持ち」で毎年東北を訪ね、イベントの手伝いなどで交流を続ける。帰路に就くと、毎回「また来てね」「また来るね」と名残を惜しむという。

 今回訪れた南三陸町は、全国トップクラスの品質を誇るわかめの産地で、荒波にもまれた肉厚で食感の良さが有名。「ハマーレ歌津」商店街で開かれたまつりでは、わかめのしゃぶしゃぶの振る舞いや詰め放題などがあり、大勢の来場者でにぎわった。2人は、わかめの運搬など運営を手伝ったほか、能登半島地震の支援として、石川県珠洲市の店舗から仕入れた輪島塗の箸や菓子類など約10万円分を販売。来場者の多くは、同じ「海の町」の能登の被災地を気遣い、「能登はどうですか」と尋ねる人も多かったといい、午前中にはほぼ完売した。

 今月4日には珠洲市で炊き出しを実施し、南三陸のわかめを使ったスープなどを提供。遠く離れた被災者の心をつないだ。2人は「何もしないより、ボランティアしていた方が気が楽。たくさんの出会いに感謝し、これからも交流を続けたい」と、今後も東北の復興を見守ることにしている。