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BBC News

2025年1月24日

夫との性交渉を拒んだことは、離婚において妻が責められるべきことではない――。そんな判断を、欧州人権裁判所(ECHR)が23日に示した。

この裁判は、「H.W.」と表記される69歳のフランス人女性が2021年に起こした。

女性はこの日の判決を、「レイプ文化」を終わらせ、結婚における同意を促進する一歩だと祝った。

裁判記録などによると、パリ近郊のル・シェネーに住むこの女性は、1984年に結婚し、夫との間に4人の子どもをもった。娘1人は常に介護を必要とし、女性がそれを担った。

第1子の誕生後、夫婦関係は悪化。女性は1992年には健康問題を抱えるようになった。

2002年になると、女性は夫から肉体的、言語的な虐待を受け始めた。その2年後、女性は夫とセックスするのをやめ、2012年に離婚を申請した。

その後、裁判で離婚は認められたが、女性はその理由に対して異議を唱えた。裁判所は性交渉を拒否したことを、女性の落ち度とみなしていた。

ヴェルサイユの控訴裁は2019年、女性の訴えを退け、夫に有利な判決を出した。女性は上訴したが、最高裁は説明もなくこれを棄却。女性は2021年、ECHRに提訴した。

この裁判は、結婚生活での同意と女性の権利をめぐる議論を、フランスで巻き起こした。

結婚の同意と性交渉の同意は別

ECHRはこの日の判決で、欧州人権法によって認められている私生活と家庭生活を尊重する権利を、フランス政府が侵害したと、判事全員一致で認定した。

結婚に同意することは、将来のセックスに同意することではないと強調。そうでなければ、夫婦間のレイプが重大な犯罪であることを、事実上否定することになるとした。

また、性のような問題に政府が介入するのは、非常に深刻な理由がある場合に限られるべきだと説示。フランスの法律における「婚姻義務」の考えは、性的関係における同意の重要性については何も示していないとした。

フランスの現状への批判

女性の弁護人リリア・ムイセン氏は、今回の判決が「婚姻義務」という時代遅れの概念を解体したと指摘。フランスの裁判所に対し、同意と平等という点で、現代的な見解に合わせるよう求めた。

女性を支援してきた権利団体は、フランスの裁判官は全体として、有害な固定観念を永続させる「古びた結婚観」を押し付け続けていると主張した。

フェミニスト団体は、今回の判決によって、フランスの法律と文化的態度を更新する必要性が強まったとしている。

フランス国会議員による最近の報告書は、レイプの法的定義に不同意という概念を含めるよう提言。同意は自由な状況で与えられなければならず、いつでも撤回できるものだとしている。

フランスでは先月、妻に薬を飲ませ、多数の男性にレイプさせた夫と、この事件に関わった男性50人が有罪判決を受けた。この事件は大きな話題となり、同意に対する関心が高まるとともに、フランスの法律における同意の扱いについて懸念を呼んだ。

(英語記事 French divorcee wins appeal in case over refusing husband sex

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c93lkkv239no


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