アメリカのドナルド・トランプ大統領は24日、米政府の新型コロナウイルス対策を主導したアンソニー・ファウチ博士の警護を打ち切った。コロナ対策をめぐりトランプ氏と対立したファウチ氏は、殺害予告などの脅迫を受けている。
ファウチ氏は、38年間にわたり国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長を務め、第1次トランプ政権とバイデン前政権でコロナ対策を指揮した。
2022年にNIAIDの所長と、バイデン政権の主任医療顧問を辞任した。
トランプ氏は24日、「政府のために働いたからといって、一生、警備を受けることはできない」とし、今回の決定は「ごく普通のことだ」と記者団に述べた。
20日に大統領に就任したトランプ氏は、1期目に国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏やジョン・ボルトン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、ブライアン・フック元イラン担当特別代表の警護も打ち切っている。3人はいずれも、イランから脅迫を受けていた。
米メディアによると、ファウチ氏は現在、自費で民間の警備を雇っている。
「自分で自分の警備を雇えるはず」
元政府高官らの安全について責任を感じるかと問われると、トランプ氏は、「彼らは皆、大金を稼いでいる。自分で自分の警備を雇えるはずだ」と答えた。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、ファウチ氏は以前は、連邦保安官による警護を受けていたが、その後は公費で民間の警備を雇っていたという。
ファウチ氏を最も声高に批判している共和党議員の一人、ランド・ポール上院議員(ケンタッキー州)は、ファウチ氏の警護を打ち切るよう求めていた。
ポール上院議員は、「ファウチ氏のための1日24時間体制のリムジン使用と警護の打ち切りを支援する情報を送った」とソーシャルメディアに投稿した。
「彼に何事もなく、平穏であることを願っているが、彼は自分でリムジン代を払う必要がある」
トランプ氏はまた、ジョー・バイデン前大統領の次男ハンター・バイデン氏のラップトップ・パソコンから「ロシアの情報操作の典型的な特徴」が見つかったと主張した、51人の情報当局者の機密情報へのアクセス権限を剥奪(はくだつ)した。
アメリカでは、大統領経験者とその配偶者は生涯にわたり警護を受けることが、法律で認められている。一方で、元政府高官の警護については、情報当局の脅威評価に基づいて決定される。
ファウチ氏は新型コロナのパンデミックの最中と、その後に殺害予告を受けたほか、マスク着用義務やコロナ対策をめぐり、共和党からの批判にもさらされた。
トランプ氏は1期目に、新型コロナのワクチン計画「オペレーション・ワープ・スピード」を立ち上げた。このタスクフォースに貢献したファウチ氏を、トランプ氏が表彰したこともあった。
バイデン前大統領は20日、退任間際に、ファウチ氏らに、「不当な(中略)政治的動機に基づく訴追」を防ぐために恩赦を与えた。
ファウチ氏は、バイデン氏に「心から感謝している」と米メディアに話した。訴追の可能性が、家族に「計り知れない、耐え難い苦痛」を与えてきたとした。
「はっきり申し上げるが、私は何の犯罪も犯していないし、私に対する犯罪捜査や訴追の申し立てや脅迫には、何の根拠もない」と、ファウチ氏は述べた。
トランプ氏はカリフォルニア訪問
こうした中、トランプ氏は24日、今月上旬から相次いで発生している山火事の被害状況を視察するため、カリフォルニア州を訪れた。
トランプ氏は山火事をめぐり、カリフォルニア州のギャヴィン・ニューサム知事(民主党)の緊急対応に問題があると非難し続けている。ニューサム氏を侮蔑的なあだなで中傷することも続けている。対するニューサム知事は、トランプ氏に極めて批判的なことで知られる。
こうした政治的対立があるものの、ニューサム氏は、大統領専用機「エアフォースワン」でロサンゼルス国際空港に降り立ったトランプ氏を出迎えた。
(英語記事 Trump revokes security protection for Covid adviser Fauci/Trump tours LA fire destruction as new fires erupt)