ドナルド・トランプ政権とイーロン・マスク氏に抗議する人々。プラカードには「マスクを今すぐ止めろ」「誰もイーロンに投票していない」などと書かれている
米ニューヨーク州の連邦地裁は8日、ドナルド・トランプ米大統領の側近で富豪のイーロン・マスク氏が率いる「政府効率化局（DOGE）」が、財務省の記録にあるアメリカ市民数百万人の個人財務データにアクセスすることを阻止した。
ニューヨーク州南部地区連邦地裁のポール・A・エンゲルマイヤー判事はさらに、マスク氏とそのチームに対し、記録のコピーを直ちに破棄するよう命じた。
DOGEは連邦政府の省ではなく、トランプ氏がホワイトハウス内に設置したチームで、連邦機関の効率化を担っている。
トランプ政権がDOGEに財務省の記録へのアクセスを許可した後、19州の司法長官が政府を提訴。DOGEは公式な連邦政府の省庁ではないため、マスク氏が「特別政府職員」としてアクセスすることは連邦法に違反すると主張している。
一方、イーロン・マスク氏は自分のソーシャルメディア「X」に、この判決を「全くもって狂っている」、「金の使われ方を見ないで、税金の無駄遣いや詐欺を防ぐ対策を、どうやってとるんだ？」と投稿した。
機密情報漏洩やハッキングへのリスクを指摘
民主党が州政府を担う州の司法長官らは7日、トランプ大統領と財務省、スコット・ベッセント財務長官を提訴した。
これを受けて、エンゲルマイヤー判事は8日早朝に仮差し止め命令を発行。すぐに救済がなければ、各州が「回復不能な」損害を被ると述べた。
命令では差し止めの理由として、「新しい政策が機密情報の漏洩リスクを高めるだけでなく、システムが以前よりもハッキングに対して脆弱になるリスクが高まるため」と記されている。
その上で、特別政府職員、政権による任命者、および財務省以外の職員が、同省が持つ、個人を特定できる情報や機密情報を含む記録にアクセスすることを禁じた。
また、財務省のこうした記録には、財務省財務サービス局での業務上必要があり、正規の身元調査を経ている国家公務員しか、財務省のこうした記録にアクセスすることはできないと命じた。
判事はさらに、アクセスを制限された者に対し、すでに入手した記録のコピーを直ちに破棄するよう命じた。
これらの条件は、次回審理がある2月14日まで有効となる。
訴訟を起こした司法長官の一人、ニューヨーク州のレティシア・ジェイムズ司法長官は、トランプ政権がマスク氏とDOGEに、個人データに対する「前例のないアクセス」を許可したと指摘した。
「過去一週間で、私の事務所には、マスク氏とDOGEの介入によってプライバシーを失い、コミュニティーが依存にしている重要な資金源を失うことを恐れる、1000人以上のニューヨーク市民からの声が寄せられた」と、ジェイムズ氏は述べた。
マスク氏は、第2次トランプ政権が始まってから続く大混乱に深く関与している。
DOGEは、アメリカの対外援助を担う米国際開発庁（USAID）での大規模な予算削減も主導しており、大統領令によってUSAIDの業務が停止すると、世界中の数百のプログラムが凍結され、国際援助システムが混乱に陥った。
首都ワシントンの連邦地裁は7日、USAIDの職員2200人を有給休暇にするトランプ氏の大統領令を、一時的に差し止めた。
（英語記事 Judge blocks Musk team access to Treasury Department records）
