新連載!【知っておくと“人生安心”なお金の基本レッスン】
世帯年収1000万円家庭の「ちょうどいい」住宅価格とは?【分かれ目は5000万円】
中学生からお金の教育が始まり、NISA(ニーサ)制度の期限延長の動きもある昨今。国は私たちにお金の知識を持つことを求めています。そういわれても、30~40代の私たち世代は、「お金のことなんてこれまで誰も教えてくれなかった!」のが実状。
そこで、そんな私たちが知っておきたい、“知っておくと人生安心”なお金の知識をお伝えする連載をスタートします! 住宅購入費、教育費用、保険いろいろ、家計管理…… お金知識ゼロの人でもわかるように、詳しく丁寧に解説します。
第一回目のテーマは「ちょうどいい住宅価格とは?」。世帯年収1000円の家庭を例に考えます。
そもそも、世帯年収1000万円家庭の“実感”は「意外と多いよね」「全然足りない」「子ども一人ならギリギリラインかな」……? それぞれ思うところは違うかもしれませんが、住宅購入にあたっては、どのくらいが【ちょうどいい】価格なのでしょうか。
余裕をもってローンが返せて、暮らしに影響しないのはどのくらいが適正なのか、世帯年収1000万円という家庭を例に、大丈夫な人とダメな人の分かれ目を探ります。
指南役は7歳と4歳の子どもを持つ“ママFP”の伊達有希子さん

【実例から探る】7000万円の物件を購入したらどうなった?
36歳の夫と31歳の妻、4歳の子どもがいて、いずれもう一子をと思っている家庭を例として考えていきます。前提となる家庭のプロフィールと住宅ローンの返済条件について、まずはみていきましょう。
【世帯年収1000万円家庭のプロフィール】
夫(36歳・会社員)月収50万円・賞与100万円 →年収700万円
妻(31歳・会社員)月収25万円・賞与30万円 →年収330万円
子供(4歳)は一人/2025年にもう1子出産予定
*預貯金1000万円
【物件価格7000万円の返済イメージ】
住宅ローン:35年金利1%で試算(毎月負担は197,600円)
諸費用:420万円
管理費・修繕積立金 月3万円
7000万円の住宅購入にあたって、このご夫婦の場合、住宅ローンは夫のみで組みました。頭金は入れずに諸費用は現金で支払い、定年を迎える65歳時点で全額繰り上げ返済を予定しています。
■生活費:子供の成長に伴い夫65歳まで0.5%ずつ上昇
■夫の収入変動率:45歳まで1%、以後65歳まで0.5%/妻の収入:2025年と2026年は産休で育児休業給付金月13万円、2027年以降は時短で月収22万円・賞与0円と仮定
■5年ごとに火災保険と地震保険の支払い/収入保障保険 保険料4万円。65歳まで毎月10万円の保障に加入
■10年ごとにリフォーム315万円と仮定
■子供ふたりはそれぞれ中学校から私立/毎年帰省費用として20万円
■80歳から介護費用(一時金70万円、80歳~89歳で年間100万円と想定)
キャッシュフロー表をチェック!家計状況はすでに【破綻予備軍】の気配が濃厚
上記の条件で返済を続けていくとどうなるか。まずはこの先、将来にわたってのキャッシュフロー表(*)をみていきましょう。住宅ローンを抱えながら、日々の生活費や子供の教育費などを支払い続けるのがどんどん厳しくなっていくのがわかります。

(*)キャッシュフロー表とは:現在および将来の年間収支とそれに伴う貯蓄残高の推移を一覧表にしたものです。今後の家計の体力をある程度把握することができるので、これから起こるライフイベントが経済面からみて実現可能か、問題がある場合はその対策を検討するのに使います。
ここからわかるのは、子供の教育費がかかる9年後頃(世帯主45歳)から収支がマイナスになり、50代半ばまで10年ほど継続的に収支がマイナスな時期が続いています。住宅費も、教育費も固定費でタイミングも“待ったなし”のため、感覚的にはかなりきつい時期と言えます。そして退職金を住宅ローンの繰り上げ返済にあてるため、余裕のない状況は退職後も続いていくことがわかります。
次に、資産と負債の推移グラフをみていきましょう。

赤いラインは「純資産」、【現預金+住宅の価値−住宅ローン】を表します。青いラインは、【現預金+金融資産】を表します。
この図の赤いラインは「純資産」(上記)を表しますが、66歳から資産が多くなったように見えるのはローンを払い終わったためです。実際の生活に関係するのは青いラインと水色の棒グラフ。水色の棒グラフは「現預金」を表しますが、家計が厳しい時期に現預金がマイナスになっているのが注目すべきポイントです。このように毎年の収支のマイナスが続くと、現預金もマイナスになっていきます。定年退職後、こちらがプラスにならないということは厳しい家計状況が続くことを表しています。
これら2つの表からわかるのは、ふたりの子供の教育費がピークとなる世帯主が54歳になるあたりから貯蓄そのものが難しくなり、65歳時の退職金でローンを返しても挽回することはできないのです。
この世帯年収1000万円家庭にとって、7000万円の住宅物件は「身の丈以上」だったと言えます。ですが、どの世帯年収の家庭にとっても、ちょうどいい「身の丈」を知るのが難しい住宅価格。みなさんは大丈夫でしょうか?
家を買うときには想像もしなかったことが起こるのが人生……?!
共働き家計のやりくり術

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だてゆきこ/2013 年に独立系 FP 事務所を設立し現職。有料でのライフプラン作成や資産運用の提案等の FP 業務を中心に、執筆活動、セミナー講師としても活躍。わかりやすい生活設計の伝え方が、一般消費者より大変好評を得ている。