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ダーリンコラム

糸井重里がほぼ日の創刊時から
2011年まで連載していた、
ちょっと長めのコラムです。
「今日のダーリン」とは別に
毎週月曜日に掲載されていました。

ほんとに成功する法則。

お、ひさしぶりだな。
元気だったかい。
そうか、元気で本なんか読んでるのかい。
ビジネス本を中心に読んでるのか、ふーん。

ビジネス本っていうのは、
なんだか要するに「成功」について書いてあるみたいだね。
「成功」した人や会社の例を研究したり、
その「成功」にどういう新しい発見があったかとか、
「成功」するには、おれのようにしなさいとか、
だいたいは、そういうテーマだよ。

いろいろあるけど、「成功」がテーマなんだよな。
でさ、「成功」って、
これまた法則があるんだよな。
いわゆる「成功の法則」というものは、あります。
たしかにあるんだよ。

教えろ?
言われなくても教えるよ。
すぐ教えちゃう。
これさえ守っていれば、
かならず「成功」できるという
「成功の法則」ね。

すぐ行くよ。

まず、だ。
「成功」には「目的」が必要だ。
これがいちばん肝心なんだ。
だいたい、むやみに「成功」を祈っても願っても、
どこが行き先だかわからないんだから、
わけわかんなくなっちゃうに決まってるだろ。

「目的」というのは、いちばんつまらない言い方だ。
「目標」とか呼ぶ人もいるよな。
「願望」と言う人もいる。
さらに、ほとんどの人は、「夢」と呼んでいる。
夢を持ちなさい、夢がなくちゃ、夢はかなう‥‥。
その夢というのは、つまりは「目的」のことだ。

「夢」も、できるだけ具体的なほうがいいって。
数字とか、色とか、日程とか、状況とか、
できるかぎりくっきりとさせなさいと言われる。
それはそうだろう、「夢」とは「目的」なんだから、
「大きくなりたい」とかじゃダメだろう。

とにかく「目的」のないところに「成功」はない。
これはもう、法則の前提だね。

つぎに。
「主人公」がいなきゃいけないんだなぁ。
「目的」があって、「主人公」がなかったら、
あんた、それはもう、
幽霊の物語みたいなものじゃない?
誰が、他でもない誰が、「成功」をするんだ?
そういう基本的なことを忘れないようにね。

そして「主人公」は、「じぶん」でなきゃいけない。
他人が「主人公」になっても、
きみはどうすることもできないからね。
じぶんでなんとかできるのは、「じぶん」しかない。
「じぶん」が「主人公」になる決意がないと、
「成功」の法則は、はじまらない。

そして、「主人公」というのは、
つまりは「プレイヤー」だ。
「目的」に向かって進む、「駒(プレイヤー)」だ。
そうさ、「目的」と「主人公」が決まったところで、
「ゲーム」がスタートするんだよ。

そして、「ゲーム」がはじまったら、
「あなた」という「主人公」は、
「目的」に向かって進むことそのものを
「目的」にすることになるんだ。

「駒」というのは、そういうものだからね。
いままでの「目的」や「主人公」の設定は、
まず、すべての前提だよね。
そして、「主人公」が「じぶん」であると
しっかり了解することが決意というものだよ。

でも、「駒(プレイヤー)」になりきれるかどうか。
このことが、納得できるかどうかが、
「成功」と「不成功」の分かれ目なんだなぁ。

スゴロクとか、将棋だとかの「駒(プレイヤー)」は、
「目的」を実現するためのことしかしないだろ。
チェスの駒が、めし食いに行って休んでます、
なんてことはないんだよね。

「じぶん」であり「主人公」であり「駒」であるものは、
「目的」から目を離すことはないんだ。
「駒」とは、そういうものだからね。
一歩進もうが、二歩後退しようが、道を外れようが、
暗闇で立ち往生しようが、まったく大丈夫なんだ。
「目的」を忘れたりしさえしなければ、
後退も失敗も怖れるに足らない。
単に道が遠回りになったというだけのことだからね。

そして、「ゲーム」がはじまったら、
すべては「目的」のために利用していいことになる。
あらゆる状況は、「駒」の都合で見ることになる。
誰か別のプレイヤーにとっての追い風が、
こちらにとっての向かい風ならば、
それは「わるい状況」だということになる。
客観的だとか、上空から見たらだとか、
そういうことは言ってはいられない。
「駒」の視点から「有利・不利」「よい・わるい」が、
まず、決まる、自動的に決まる。
「駒」じゃない「じぶん」としての判断が、
参考意見として必要になる場合もあるけれど、
そういう場合も、「目的」から考えてジャッジすること。

最後に、「成功」は、
実現するまで追求していくこと。
「まだか‥‥」とか「だめかも‥‥」とか、
勝手に終わりにしないことだろう。
あらゆる「ゲーム」は、参加している間は、
「生きている」ってことなんだよな。
誰から見ても「おしまい」に見える「ゲーム」でも、
「主人公」が「目的」から目を離さずに、
プレイを続けているかぎりは、続いているんだ。
これがいわゆる「夢をあきらめないで」
というふうに歌われる世界だ。

「成功」の法則。
ものすごく簡単だと思うだろう。
ほとんどの本に書いてあるのは、
こういうことを肉付けしたり、
尾ひれをつけている内容だ。
肉や、尾ひれについては、詳しくなりすぎると危険だ。
「失敗」を意識する回数が増えるからね。
そうすると、「目的」が遠ざかるんだよな。

さてさて、どうだい?
「ゲーム」に「じぶん」をまるごと賭けて、
「成功」に向かってみるかい?
それとも、そんな非人間的なことはやめとくってかい?
いいよ、簡単に決められなくても。

実は、「成功の法則」は
こんなふうに簡単に言えるんだけど、
ほんとは、むつかしいことがあるんだ。
「目的」のところに、なにを入れるか、だ。
これは、実はけっこう難儀なことなんだよな。

夢ってのは、なかなか「はためいわく」なものが多くてさ。

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