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おしゃれな女性ファッション誌『sweet』で
連載中の「シンVOW」では、
毎回、すてきなゲストをお迎えし、
VOWについてあれこれ語りあっております。
このページでは、紙幅の都合で
『sweet』に載せきれなかった部分を含め、
たっぷりロングな別編集バージョンをお届け。
担当は、VOW三代目総本部長を務める
「ほぼ日」奥野です。どうぞ。
和田ラヂヲ(わだ・らぢを)
漫画家。日本ギャグ界の至宝。その活躍は漫画だけにとどまらず、大喜利大会・似顔絵・梅干のタネ飛ばし選手権・書籍の挿画・ラジオパーソナリティなど多岐にわたる。
- ──
- ぼくは大喜利大会に出場する選手たちを、
超絶リスペクトしているんです。 - ラヂヲ先生は当然ですけど、
お笑いマンガ道場の車だん吉さんとかも。
- ラヂヲ
- 鈴木義司先生とか、富永一朗先生とか。
- ──
- もちろんです。川島なお美さんもです。
- なぜなら、自分には絶対にできないから。
おもしろい答えが浮かばないんですよ。
- ラヂヲ
- それは、何ででしょうね?
- ──
- 何でって‥‥わかんないです(笑)。
根本的に向いてないんだと思っています。
- ラヂヲ
- 足が速い遅いとかの世界と近いのかなと、
ぼくは思ってますけど。
- ──
- ああ、そうなんでしょうか。
- でも「bokete」みたいなサイトでも、
めっちゃおもしろいのとかあって、
心から感心してしまうんです。
ああいう答えを、放送作家とかでもない、
ふつうの人たちが考えてるんですよね。
- ラヂヲ
- たしかに、ぼくのラジオでも
一般のリスナーの投稿を読んでますけど、
レベルの高い人、いますよね。
- ──
- かつての「ハガキ職人」的な人たちって、
まだまだいらっしゃるんですね。
- ラヂヲ
- いつの時代にも一定数はいるんでしょう。
- 雑誌に元気があって、
読者投稿コーナーもたくさんあった昔は、
母数的に多かったのかもしれないけど。
- ──
- ぼくですら投稿したことあるんですから。
『ファミ通』に、ガバスほしさに。
ただの1回も採用されませんでしたけど。 - 投稿の才能がないということは、
その時点でハッキリわかっていたんです。
- ラヂヲ
- でも、わかってよかったですよ。早めに。
- ──
- 本当です。わかってよかった(笑)。
わかってなければ、
いまだにやってる可能性もあるから。 - よくよく考えると自分は、
ほぼ日で、
小ネタ劇場という読者投稿コーナーを、
もう20年近く担当してるんです。
- ラヂヲ
- そうですよね。
- ──
- 毎日3ネタずつ、365日かける20年。
- つまり自分は、
おもしろい投稿を考えて出す側じゃなく、
読む側の人だったんだなあ、と。
- ラヂヲ
- プロデューサーの側なんでしょうね。
ぼくは1回も投稿したことないんですよ。
- ──
- あ、マジですか?
めっちゃガバス稼げそうな気がするけど。
- ラヂヲ
- いやあ、おもしろいことが、
ぜんぜんひらめかなかったんです、当時。 - 投稿コーナーに採用された作品を読むと、
レベルがちがうなあ、
こんなんじゃぜんぜんダメだって思って、
出す前から諦めてました。
- ──
- おもしろいのハードルが高いんですよね。
きっと、ラヂヲ先生の場合。 - だって、先生の実際の実力たるや、
大喜利の猛者どもの集う大喜利大会でも
王者に輝くレベルなわけですから。
- ラヂヲ
- いやあ、大喜利大会に出はじめたのって
漫画家になってしばらくしてからだから。 - たぶん、脳みそが
「4コマ脳」になったあとなんですよ。
- ──
- 4コマ脳って(笑)。
- ラヂヲ
- そう。怖いですよ。不治の病。
何を見てもギャグとして考えてしまう。
ヘンな看板があったら、撮ってしまう。 - そのあたりはVOW的なのかな。
- ──
- ちなみにですが、松山市内に
少し変わったテニスの絵の大きな看板が
あったような気が。
- ラヂヲ
- ああ、ありましたね。
- ──
- あれ、VOW的といえばVOW的ですよね。
- ラヂヲ
- あの看板のおかしさは、
いままさにサーブを打とうとしてる人が、
どう考えても打てなさそうだという、
その運動神経のなさっていうか‥‥
描いた人の画力のなさっていうか(笑)。
- ──
- 何だったんでしょう、あれは。
- ラヂヲ
- わかんない。何だったのかなあ。
スポーツ洋品店の看板とかだったのかな。
- ──
- 「絵画」である可能性はないんですか。
- ラヂヲ
- ないでしょう(笑)。
- ──
- イタリアの街中で見る壁画みたいな。
- ラヂヲ
- そう言われてみれば、
ちょっとホックニーっぽい気もしてきた。 - しないか。
- ──
- しないです(笑)。
- ラヂヲ
- でも、VOWのすごいところって、
そうやって
「よくわからないところ」なんですよ。
- ──
- はい、まさにそれは、ずっと思ってます。
どうして、われわれ人類は
こんな活動をはじめたんだろうってのが。
- ラヂヲ
- 説明も難しいもんね、VOWって。
- さらに、自分のどこに響いているのかも
よくわからない。
- ──
- わはは、われわれ人類の
どこに響いているかさえもわからない。
それがVOW。
まさかのミステリアス説! - ちなみに、VOWがはじまった前後に
四国のミニコミ誌の1コーナーで
『お笑い文化人講座』ってのがあって、
同じようなことをしてたそうです。
- ラヂヲ
- へえ、それは知らなかったです。
- ──
- 当時、いろんなところで
同じようなムーブメントのうまれる空気が
あったってことなのかな。
- ラヂヲ
- ああ、それはそうかもしれないですよ。
お笑いのトレンドって
同時多発的に出てきたりしますからね。
- ──
- VOWは、うまれるべくしてうまれた。
- ラヂヲ
- 時代が求めていたのかもしれませんね。
VOWという、
ひとつの笑いのスタイルを。
『VOW19』より
(終わります)
2025-02-16-SUN