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 物撮りを的確にセッティングして、
撮影できるようになりたいです。

まず、「おすすめできない」ものとして、
手軽に商品や料理が撮れますよとうたった、
通販で見かける簡易ライト写真台があります。
ちいさなドーム型になっていて、
半透明の乳白の布でできているから、
ライトがやわらかく全体にまわってきれいですよ、
という。あれはすすめません。
もちろん、変な写り込みもなく、
なんとなく、パッと見はきれいに撮れたりしますが、

考えてみてください、あの中にある光を。
自分がその中にいると思ったら、
まぶしいし、どこから光が来ているかわからない。
もしかしたら宇宙船の中はこんな感じ?
みたいな気分になるのではないでしょうか。
きっと、気持ちがよくないですよね。

物撮りをするとき、ぼくがすすめるのは、
窓辺の光です。
窓辺の光は、ふわっと入ってきて、
そこにいたら、人も気持ちがいい。
そこに置いた物も、きれいだなと感じますよね。

だから、物は、日中の窓辺で撮りましょう。
かんたんなのは、窓辺のテーブルですね。
ただし、物に直射日光を当ててしまうと、
コントラストがつきすぎますから、
そういう場合は、「できるだけ明るい日陰」で。
窓に、トレーシングペーパーを貼って、
光を拡散させるのもいいですよ。

窓越しに斜めに入ってくる光を物に当てて、
手前から撮る。
まっすぐ光と向き合えば、
ぼんやりとした影が手前につきますね。
それでもいいし、あるいはちょっと斜めにして、
45度くらいに影がつくようにしてもいいでしょう。
そのほうが、四角く切り取られるのが運命の写真において、
「長さ」が出ますよね。
四角形において、
天地よりも対角線のほうが長い線が引ける。
その長い線で光が入ってきたほうが、
写真に広がりが出ると思うんです。

日のささない窓辺でも、
あかるい日中であれば、十分きれいに撮れますよ。
できるだけ三脚を使って、ぶれないように。
手持ちだと、シャッタースピードが
1/60秒以下になると、
ぶれやすくなります。
絞りを開くと取り込む光が増えるので
シャッタースピードは速くなりますが、
ピントの合う奥行き(「被写界深度」)が浅くなります。
よく、1ヶ所だけにピントが合っていて、
手前も奥もぼんやりしている写真がありますよね。
ああいう感じになります。
その感じがいい場合もありますが、
まずはしっかりと写すことを前提にお話すると、
三脚を使うと、手ぶれは防止できますから、

また、その時にちょっと専門的な言い方になりますが、
「入射角と反射角」を考えて、
(射し込んでくる光の角度と、その光が反射する角度)
カメラの位置を決めたりする場合もありますが、
みなさんはまず、「ああ、きれいだな」と思う場所を
ファインダーで覗いて探して、それで撮ってみてください。

そうそう、武井さんに
料理の撮り方を訊かれたことがあるんだけれど、
そのときは、この光のアドバイスとともに、
「おいしそう、と思って撮るといいですよ」
と伝えました。
物も同じで、「いいな」「かわいいなあ」と
思いながら撮る。
そうすると、その物や、料理の「いいところ」を探して、
角度を変えてみたり、位置を変えてみたりと、
しぜんに努力したくなるものだと思いますよ。
武井さん、近ごろは、
そうやって撮っているんじゃないかな。

 そうですそうです。
料理は窓にトレーシングペーパーを貼ったり、
乳白のプラスチックの板で遮光して撮ってます。
別に、ぜんぶの料理を撮ってるわけじゃなくて、
「おお、おいしそうにできた」という朝食を撮ります。
夜は、おいしそうにできても、人工光の下だと、
しろうとにはやっぱり難しいので、あきらめます。
ぼくらのレベルではそれでいいんじゃないかなと思います。
ちなみにぼくは「真上から」撮るのも好きです。

▲なんとなく撮ってみたフルーツ。朝の光で、斜めからです。(武井)

▲書籍『調味料マニア。』用に撮ってみたもの。没写真ですが。(武井)

▲これは斜めの光です。菅原さんのアドバイスでやってみました。(武井)

 手ブレ補正を使ってもいいですか?

手ブレ補正は、
なくてもいいんじゃないですか、って思ってます。
手ブレ補正を使うと、
それこそ光の方向が変わってしまうから。
これは、写真にとって一番大切な部分を
補正してしまうことに。
「便利」ほど本当は実は不便なものないというか、
便利になることによって、
コントロールできなくなるのが、ぼくは苦手です。
専門的に言うと、手ブレ補正を使うと、
光軸が曲がっちゃったりするんですよ。
いいような悪いようなで。
便利なものは足下すくわれちゃう場合があるから
ぼくはまずは「とにかくふつうに」、と心がけています。

 空(風景、夜景)と人物が
どちらもきれいに撮れたらと憧れます。
夜景モードを使ってもいいでしょうか。

夜景モードも、ぼくはすすめません。
たぶん夜景モードって、
長時間露光で夜景を撮り、
その中で一瞬フラッシュをたいて、
手前の人物をとらえる、
ということだと思いますが、
そういう特別な写真は、本来、
その原理のようなものを理解して、
その加減を失敗しながらも、いろいろ試してみたりしながら
練習して覚えて欲しいことなんです。
もし、やりたければ、ですが。
なぜかっていうと、夜景モードが
どういう仕組みかわからないまま
(なにしろ機械が勝手にやったことです)、
「撮れた、撮れた」となったところで、
最終的にはうれしくないのでは?
カメラは、写真を写すための道具であって、
勝手に写真を作り出すための道具ではないのですから。

(つづきます)

2014-11-28-FRI